ウルグアイの「最高」と「最貧」と「最長」

 「アルゼンチンのマテ茶は砂糖を入れるのよ。甘ったるっこくて、ひどい味。パラグアイのテレレは冷えたマテ茶。これもひどい味よ。やっぱりマテ茶は無糖で温かいウルグアイのものが最高」。ウルグアイの首都、モンテビデオのツアーガイドのMさん(24)は毒舌口調で熱弁した。ウルグアイ人のマテ茶好きは南米随一。マテ茶の容器を手に持ち、水筒を小脇に抱えたウルグアイ人をいたるところで目にする。Mさんは生まれも育ちもモンテビデオのウルグアイ人。マテ茶へのこだわりでは隣国に譲れないものがあるのだろう。
 プエルト・イグアスから約20時間の長距離バスに乗って、旅の起点であるブエノスアイレスに戻ってきたのは2月13日の朝8時頃。息つく暇もなく、ブエノスアイレスのフェリー乗り場に向かい、ウルグアイのコロニア・デル・サクラメント行きのフェリーに乗船した。約3時間かけてラ・プラタ川をのんびりと渡り、ウルグアイに入国した。コロニア・デル・サクラメントは歴史的建造物多く残る小さな町。世界遺産に登録されている。見所は多くないが、旅の疲れを癒してくれるのんびりとした町だった。
 翌14日、バスでモンテビデオに向かった。「フリーウォーキングツアー」に参加。ちなみに、「フリーウォーキングツアー」は参加者がツアー終了後に渡すチップで成り立っている英語のガイドツアーのこと。この旅ではこれまでブエノスアイレス、サンティアゴ、バルパライソ、クスコの4都市で利用させてもらった。世界各国からの参加者と英語で情報交換ができるのも魅力の1つだ。ツアーは約2時間。独立広場から憲法広場やサバラ広場を経て、港近くの市場で終了した。
 余談になるが、ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領は「世界一貧しい大統領」として知られている。BBCのウェブサイトの記事「Jose Mujica: The world's 'poorest' president」(2012年11月15日)は、給料の約90パーセントを慈善事業に寄付していると伝えている。Mさんによれば、大統領はボディーガードを嫌い、自分で車を運転して出勤。ウルグアイである旅人がヒッチハイクをしていたとき、拾ってくれたのが大統領だったというエピソードがあるそうだ。
 夜はウルグアイのカーニバル。2月の南米でカーニバルを見ない手はない。中でもウルグアイのカーニバルは「世界で最も長い期間開催されるカーニバル」として知られている。市場の隣にあるカーニバル博物館では「カンドンベ」や「ムルガ」など、ウルグアイのカーニバルで使われる衣装などが展示されている。
 カーニバル博物館の解説によると、モンビデオでは、南米の他の都市と異なり、「ステージ・カーニバル」が発達してきた。毎晩、「タブラドス(tablados)」と呼ばれる野外ステージでショーが開催される。私たちが観覧したのは、カーニバル博物館の中庭のステージで催されるショー。桟敷席が設けられている。ショーは歌や踊りだけでなく、演劇や漫談のような要素も強かった。
 「最高のマテ茶」、「最貧の大統領」、そして「最長のカーニバル」。「最も」づくしの国、ウルグアイを満喫した。明日は旅のフィナーレを迎えるブエノスアイレスへと戻る。



コロニア・デル・サクラメントの風景
















モンテビデオの独立広場
















カーニバル博物館内でのショー

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