濡れ鼠にハナグマの襲撃 |
「オトロー」。イグアスの滝の水しぶきを浴びて叫び声をあげているのは、ずぶ濡れになったスピードボートの乗客たち。「オトロ(otro)」とはスペイン語で「もうひとつ別の」という意味。つまり、「もう一回」とボートの操縦士に要求しているわけだ。すると、再びボートは滝の下を目がけて加速し始める。水しぶきが吹き荒れる激流近くに突入。目が開けていられない。遊園地にあるようなウォーターアトラクションとは比にならない。 アルゼンチン北部のサルタから約24時間の長距離バスに乗ってプエルト・イグアスに到着したのは2月9日の17時頃。アルゼンチン側のイグアスの滝を観光する拠点の町だ。アルゼンチンの誇る一大観光地だけあって物価は高い。それでも名物の川魚を食べておきたいと、夕食に巨大ナマズ「スルビ(surubi)」の揚げ物をいただく。「名物にうまい物なし」と言うが、レモン汁をかけた、ぷりっとした白身は日本人好みで美味しい。 翌日の10日はいよいよ、イグアスの滝を観光する。園内には無料の列車が走っている。カタラタス駅で乗車して、熱帯雨林の中を進みながら、ガルガンタ・デル・ディアブロ駅で下車する。ここから遊歩道を歩いて、イグアスの滝の最大の見所である「悪魔ののどぶえ」に向かう。水しぶきのあがる方向に進むと、轟音を響かせながら流れ落ちる大瀑布が姿をあらわした。向かい風が吹けば、大量の水しぶきが降りかかってくる。 その後、滝の下の遊歩道を通って、スピードボート乗り場へ。直接滝に触れられる大人気のアトラクションに参加する。防水袋に荷物を入れて、救命胴衣を装着する。海パン一丁になってボートに乗船。水着のない友人Aは服を着用したまま参加。 滝壺に近づいてくると、ほかの乗客たちは興奮して叫び声をあげる。次第に目も開けられないほどの水しぶきの中に突入。滝の真下近くにいながら、滝を見上げることができない。ゴーグルを持ってくるべきだった。ボートは計4回、滝に接近してショートツアーは終了。隣を見ると、友人Aは衣服丸ごとずぶ濡れだ。 その後、滝の上の遊歩道を1人で回る。濡れ鼠の友人Aはカフェテリアのテラスで休憩だ。見上げていた滝を今度は上から見下ろす。流れ落ちる大迫力の瀑布に綺麗な虹がかかっていた。 友人Aのいるテラスに戻ると、驚きの光景が目に飛び込んできた。呆然とする友人Aの目の前のテーブル上に、ずたずたに切り裂かれたリンゴジュースの紙パック。それをハナグマが美味しそうに吸っている。ハナグマはアライグマ科の哺乳類。友人Aいわく、目の前に置いていた紙パックを一瞬のうちに奪い取り、爪で切り裂いて飲み始めたという。見た目のかわいさとは裏腹に凶暴な一面も持っているようだ。衣服はずぶ濡れになるわ、ハナグマの襲撃に会うわと、踏んだり蹴ったりの友人Aなのだった。 明日はこの旅で5カ国目となるパラグアイに入国。ブラジルとの国境の町、シウダー・デル・エステを散策する。 |
イグアスの滝の最大の見所である「悪魔ののどぶえ」 滝に虹が架かる
人慣れしたハナグマ |
●No.1 リトアニアの3.11 |
●No.2 世界を知らない私と私を知ってくれている世界 |
●No.3 キョーゲン・イン・リトアニア |
●No.4 カウナスという街 |
●No.5 愛しのツェペリナイ |
●No.6 その人の名はスギハラ |
●No.7 エラスムスの日常 |
●No.8 検証:リトアニアの噂 前編 |
●No.9 検証:リトアニアの噂 後編 |
●No.10 プラハで出会った哲学男 |
●No.11 魔女の丘、そして悪魔の館へようこそ |
●No.12 お後がよろしくないようで |
●No.13 ブラジルへの切符を求めてやってきたボスニアのムスリムの話 前編 |
●No.14 ブラジルへの切符を求めてやってきたボスニアのムスリムの話 後編 |
●No.15 時は今?雨が滴しるカウナス動物園 |
●No.16 リトアニアの第二の宗教 |
●No.17 ベン・シャーンとチュルリョーニス |
●No.18 イグナリナ原発に行ってみたら 前編 |
●No.19 イグナリナ原発に行ってみたら 後編 |
●No.20 行きあたりばったりの旅 |
●No.21 牛肉の国 |
●No.22 ガイドは陽気なポルテーニョ |
●No.23 バルデス半島の動物たち |
●No.24 石油の町 |
●No.25 マテ茶との出会い |
●No.26 「世界最南端の都市」のタラバガニ |
●No.27 氷河の味わい |
●No.28 無煙のフィッツ・ロイ |
●No.29 「甘い」話 |
●No.30 ボデガでほろ酔い |
●No.31 激動のチリ近現代史 |
●No.32 インカコーラの罠 |
●No.33 パチャママの怒り |
●No.34 インカの安らぎ |
●No.35 ビール飛び散る聖母の祭り |
●No.36 ガイドの勘 |
●No.37 カファジャテのトロンテス |