「世界最南端の都市」のタラバガニ

 ビーグル水道の観光を終えてお腹を空かせた私たちはウシュアイアの繁華街であるサン・マルティン通りを当て所もなく歩いていた。目星をつけていた丘の上のレストランは満席。ガイドブックに載っていたレストランは休業日。他のレストランも軒並み混み合っていた。途方に暮れていたその時、カニの生け簀が目の前にあらわれた。ウシュアイア名物の「セントージャ(centolla)」と呼ばれるタラバガニのレストランだった。
 小雨の降る1月13日朝。町の高台にある老夫婦の経営するB&Bを出て、ウシュアイアの港へ向かう。9時頃、白いクルーズ船に乗り込み、ビーグル水道へ出発する。ウシュアイア湾を出て、ウミウやオタリアのコロニーのある岩礁を観察。船は北にアルゼンチンのフエゴ島、南にチリのナバリノ島を見ながら進む。天候は徐々に好転しはじめた。11時40分頃、赤と白が特徴のエクレルール灯台のある岩礁の前へ到着。ビーグル水道で一番人気の写真撮影スポットだ。その後、マゼランペンギンの群れを観察して、船はビーグル水道に浮かぶゲーブル島の先へと向かって行く。
 13時頃、ハーバートン牧場に到着する。ウシュアイアから85kmほど離れた場所にある。現地で待っていたガイドがハーバートン牧場の歴史を説明してくれる。昔は多くの羊を育て、羊毛をブエノスアイレスへと運んでいたという。その後、昼食を挟んで、海洋生物のラボラトリーを併設する博物館を見学する。クジラやペンギンなどの本物の骨が展示されている。近くの「ボーン・ハウス」と呼ばれる屋舎では、海洋生物の骨の洗浄作業が行われていた。
 ウシュアイアへは陸路をバスで帰る。ビーグル水道ツアーを終えて、疲れ果てた私たちはホステルで休憩したあと、夕食を求めて夜のウシュアイアの町へ飛び出した。そして、最終的にカニ料理のレストランへ辿り着いたというわけだ。私は「カニと青ネギのクリーム煮込み」、友人Aは「カニとお米のトマト煮込み」を注文。たっぷりのカニをお腹に収めた。
 翌14日は早朝5時のバスの便でウシュアイアを出発。フエゴ島ともお別れをする。リオ・ガジェゴスでバスを乗り換え、内陸のエル・カラファテという町のバスターミナルへ到着した。時刻は15日の深夜1時を示していた。丸一日のバス移動を終えて、ロス・グラシアレス国立公園観光の拠点の町へやってきた。




クルーズ船から眺めるウシュアイアの町並み







ビーグル水道のエクレルール灯台







セントージャのレストラン「Villaggio」

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●No.1 リトアニアの3.11
●No.2 世界を知らない私と私を知ってくれている世界
●No.3 キョーゲン・イン・リトアニア
●No.4 カウナスという街
●No.5 愛しのツェペリナイ
●No.6 その人の名はスギハラ
●No.7 エラスムスの日常
●No.8 検証:リトアニアの噂 前編
●No.9 検証:リトアニアの噂 後編
●No.10 プラハで出会った哲学男
●No.11 魔女の丘、そして悪魔の館へようこそ
●No.12 お後がよろしくないようで
●No.13 ブラジルへの切符を求めてやってきたボスニアのムスリムの話 前編
●No.14 ブラジルへの切符を求めてやってきたボスニアのムスリムの話 後編
●No.15 時は今?雨が滴しるカウナス動物園
●No.16 リトアニアの第二の宗教
●No.17 ベン・シャーンとチュルリョーニス
●No.18 イグナリナ原発に行ってみたら 前編
●No.19 イグナリナ原発に行ってみたら 後編
●No.20 行きあたりばったりの旅
●No.21 牛肉の国
●No.22 ガイドは陽気なポルテーニョ
●No.23 バルデス半島の動物たち
●No.24 石油の町
●No.25 マテ茶との出会い

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