No37
雷に追われ、山小屋泊まり、ガスっても岩手山は美しい
[岩手山(岩手県滝沢村・2038m――2013年7月14日)]
 いつものモモヒキーズではなく、藤原優太郎校長の率いる「山の学校」の山小屋泊まり岩手山だ。3連休を利用しての山行だが、休日初日は洪水警報が出るほどの雨。一日延期して二日目から登ることになった。3連休で助かった。校長の車に総勢5人が秋田市役所前を朝6時出発。まだ小雨模様だが、激しい雷雨は去ったようだ。
 岩手県滝沢村に着き、その馬返し登山口を出発したのは午前9時。以前きたときは網張温泉からスキー場リフトに乗って網張りコースだった。鬼ケ城経由で八合目の不動平避難小屋に泊った。
 今回は柳沢コースを登る。もちろん初めてのコースだ。出発地点が標高633m、一度下って、そこからすぐ本格的な登りに。1合目から表記があり10合目が頂上だ。
 2合5勺目なる合目もある。ここでコースは新旧に分かれる。数字がなんだか変で、ここで山小屋まで半分地点まで来たらしい。よく意味がわからない。新道を選びひたすら登る。といっても息切らすような急登があるわけではない。七合目のあたりがちょっときついが、ここで新旧コースが合流し小屋まではすぐだ。
 とはいいながらも八合目まで5時間かかった。小屋に着いたのは午後2時を回っていた。ここで昼ごはん。そのまま小屋に入り、すぐに夜の食事の準備だ。小屋は3段ベッドで毛布付き。天井が低いので立ちあがることはできない。座ったままですべての作業をこなさなければならない。頭を天井にぶつける人が続出。これはストレスだ。隣との距離は30センチほど。ヘッドランプをつけ、まだ外が明るいうちから夕食。
 小さなペットボトルにスコッチを入れてもちこんだので早速飲みはじめ、一人勝手に酔っぱらってしまった。他の人は下戸だ。日常生活では酒に酔うことなどめったにないが、山は特別。なんだか饒舌になり、2000m峰に登った高揚感に、酔っているのかもしれない。
 6時就眠。グループの端っこに寝たのだが、お隣が中高年夫婦で、そのオヤジのいびきがまだ明るいうちからすごかった。小屋には100人近い宿泊客がいたが、このオヤジのいびきが他を圧していた。眠られないまま、外の雨の音を聞く。世界文化遺産になった富士山の山小屋もこんな感じなのだろうか。山はいいが、山小屋は好きになれない。早く家に帰りたい。
 翌朝4時半起き。外は薄暗くもやっている。「隣のいびきがひどくて寝られなかった」と愚痴ると「あんばいさんと2重奏で、ひどかった」と仲間にいわれた。えっ、おれもいびき仲間なの。眠れないとばかり思っていたが、けっこう熟睡していたらしい。

八合目小屋で

山頂は青空
 朝5時半、山小屋を出発。九合目不動平小屋にザックをデポし山頂へ。登り初めて1時間ほどしたらガスが晴れ、山頂は青空だった。それもただの青空ではない。深く澄んだ、まるで八千m峰の群青色のような(行ったことないけど)青空だ。お鉢めぐりをして九合目小屋に戻り、で朝ごはん。前に来たときはこの小屋に寝袋持参で泊ったことを思い出した。
 下山はコースを変え、お花畑のある網張りコース。頂上とは打って変わって天気は荒れ模様だ。途中で雷が鳴り出した。そのたびにザックを放り投げ、藪の中に隠れるのだが、なかなか雨も雷も遠くに行ってくれない。
 4時間ほど歩いたところでようやくスキー場のリフト着。ほっと一息というところだが、なんとリフトは雷の危険があるため運航中止。やむなくスキー場横を黙々と歩き始める。第2リフト地点からから第1リフトまで歩くと、運よく第1は動いていた。それに乗って網張り温泉着。
 けっきょく下りも5時間かかってしまった。
                       *
 温泉は雫石町にある「ぬくもりの里NUC(ヌック)」。前にも来たことがあるというが、こちらにはとんと記憶がない。シンプルだが清潔で品のあるいい温泉だった。
 雫石にあるなじみの「道の駅あねっこ」に寄り夕食。岩手県まで来て稲庭うどんを食べる羽目に。秋田市に帰ったのは7時を回っていた。
 それにしても、最近は大きな山行の後でも筋肉痛はおろか、疲労もたいして感じなくなった。体力がついたといえばそれまでだが、山に対する事前の準備が手際よくなったのが原因かもしれない。山道具の使い方に慣れ、自分の飲む水の量や食事の種類など、ようやく自己流ながら迷わなくなったのも大きい。山頂での手足の急速な冷えやケイレンもなくなった。汗をかく量がめっきり減った。いい傾向には違いないが、これが油断につながらないよう、今一度、気持ちを引き締める必要がありそうだった。

小屋は3段ベット

夕食はこんなもの

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●No. 1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No. 2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No. 3 白神のブナの森を彷徨う
●No. 4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No .5 巨木の森で、雨に追われて
●No. 6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No. 7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No. 8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No .9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし
●No.12 雪と風とツェルトとストック
●No.13 「靴納め」はダブル山行、かててくわえて忘年会
●No.14 これが今年最後の山行です、信じてください!
●No.15 桜のつぼみが大きいから、春は早い……
●No.16 彷徨っても漂っても、頂上は遠い
●No.17 動物の足跡がないのは、「なまはげ」がいるからだ
●No.18 どんな山でも、なにか新しいことを学べるもんだ
●No.19 「山があるんで、お先に」って言ってしまった夜
●No.20 大滝を見にスノーハイク、帰りは古民家見学
●No.21 冬は近場にこそ遊び場がある+ついにシュールストロミング開缶!
●No.22 山頂で野点、そうか今日は「桃の節句」か
●No.23 青空、中岳、ひとりぽっち
●No.24 石仏に村人はどんな思いを託したのだろうか
●No.25 冬限定、地図に名前のない山に登る
●No.26 登山道のないやぶ山で、昆虫になる
●No.27 ダブル登山で、県北の春山に酔う
●No.28 GWは雪の回廊を抜け、強風の山頂に立つのが夢
●No.29 街から7キロ先に、千メートル級の山があるの?
●No.30 下水掃除と宮沢賢治とアイゼン登山
●No.31 青空・無風・トラブルなし。雑魚10匹より大物1匹
●No.32 みんな嫌がるけど、オレは好きだヨ、東山
●No.33 週末連続登山で、体力は大丈夫か、ジブン
●No.34 地元のプロと一緒だと、山歩きは百倍楽しい
●No.35 ブナと滝のシャワーを浴びて、少し元気になってきたゾ
●No.36 あれッ、なんだか人並みに体力がついてきたかな

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