No4
南八幡平の自然休養林を歩く
[千沼ヶ原(岩手・雫石町)―2012年10月20日(土)]
 「山の学校」F校長の車で総勢5人の湿原ハイキング。珍しいケースだが、千沼ヶ原へ葛根田地熱発電所側から登るのは全員が初めてだ。見るもの聞くものすべてが「はつもの」登山というのは経験がない。山に行くときはほとんど経験者とでなければ「行かない」ことが慣習化しているからだ。
 とはいっても千沼ヶ原は、秋田県側からの乳頭登山ではおなじみの場所だ。多くの池塘のある美しい八幡岱自然公園の最大の湿原地帯だ。
 そこを目指して登りはじめた。分岐のある平ヶ倉沼まではほとんど平地のハイキング、この分岐から本格的な山登りになった。それも連続で急峻が続くハードな山だ。あれッ、これは予想外、乳頭登山よりずっとしんどい。
 そんなこんなで、なんと3時間以上登り続けても湿原にたどり着かなかった。キノコを探しながらのノンビリ・ハイキングだったが、いつの間にか本格的な山登りになってしまった。誰もが未経験の山なので、先行きの見通しが立たない。8時半から登りはじめ、すでに3時間半を経過したところで、ようやく湿原まで1・8キロの表示板。すでに時間は昼を過ぎていた。初めての山では冒険は危険だ。下山にも同じくらいの時間がかかると踏んで、この地点で下山を決めた。いやはや千沼ヶ原恐るべし。最近お昼はレトルト食品を食べている。昔買ったまま賞味期限が切れそうなものを「在庫バーゲン」気分で食べつくしてしまうためだ。今日は「五目飯」と「野菜カレースープ」。体力が登山で目いっぱいなので山頂ではいつも食欲がないのだが、今回は完食。これはきわめて珍しい。レトルトが思いのほかおいしかったのだが、カレーがいに刺激を与えてくれたのかも。いずれにしても、これはうれしい。

きれいなキノコしかとらない贅沢

真ん中の沼が平ヶ倉沼
 天気も心配だったが、どうにか最後まで持ってくれた。紅葉にはまだ早かったが、青空の中に岩手山や乳頭山(岩手の人は烏帽子岳と呼ぶ)がきれいだった。キノコもブナシメジがいっぱいで、まったく採れない(採る気のない)私にも過分なおすそわけをいただいた。
 下山すると岩手山の山頂に巨大な雨雲がかかっていた。途中で引き返して正解だったようだ。
 温泉は近くに秘湯の湯治場があるという話だったが、シャワーのない温泉は断固拒否。少し先の雫石の道の駅で入浴。ここの温泉は好きなのだが、すさまじい人手で湯は濁り、狭い脱衣場は身体をこすり合わせながらの戦場になっていた。広い無料休憩室はいらないから脱衣所を広くしろッ。この道の駅で夕食もすませ、真っ暗な秋の道をひた走り、帰宅したのは7時半を回っていた。              
 10年ほど前に買った登山靴を破棄することにした。靴底を張り替えると2万円近くかかると、登山ショップの店員さんに言われた。このモデルの靴はもうつくっていないので、何度も靴底を張り替えて使っている人がいるそうだ。そこで張り替えに心傾いたが、やっぱりやめよう。靴はもう2足ある。その2足のうち皮靴のほうはまだ買って年月も浅い。それも張り替えしてもらうことにした。張り替えに1カ月かかるそうだ。どうのこうのいっても、もう6年以上、毎週のように山に登り続けているわけで、支えてくれた登山靴には感謝カンシャ雨あられである。

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●No.1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No.2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No.3 白神のブナの森を彷徨う

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