Vol.868 17年7月29日 週刊あんばい一本勝負 No.860


毎日がエアロビクス

7月22日 9年ぶりにエアロビのレッスン。40分ほどの初心者コースだったがヘトヘトに。周りに迷惑をかけることなく最後までついていけたので一安心。何人かの生徒さん(女性)は昔からの顔なじみ。昔からちっとも進歩していないほどヘタなままだったことにも驚いた。リズム感は悪いし動作も遅れがち。そうか、下手だから続けていられるのか。うまくならないから飽きないのだ。ここは重要な持続力のポイントかもしれない。昔と変わっていたのはロッカーの雰囲気だ。60代の暇そうな男たちの寄り合い場と化し、おしゃべりの質も劣化している。病院とか図書館にたむろする老人たちと同じだが、もっと下世話な感じ。老朽化したスポーツクラブの一角に、行き場のない老人たちが巣くっている。まあ、小生もその一人だから偉そうなことは言えない。

7月23日 すごい雨だった。ずっとNHKTVで警報注意報を観ていたのだが、あいまいな地域名表記にイライラ。「秋田」という表記と「秋田市」の表記が混在しているからだ。平成の町村合併の影響なのだろう。150年前の事実まで遡る必要はないのかもしれないが、明治維新で官軍側についた秋田は、東北では県庁所在地名と県名が同じ、という特殊事情がある。奥羽列藩同盟の流れによる政治的な差別が、県名の決定には色濃く反映されている。とうぜん仙台県となるはずなのに宮城県だし盛岡県は岩手県。弘前県は青森県だし、酒田県は山形県、会津県は福島県で秋田県だけが秋田市だ。豪雨の警報が出ているのは「秋田」全体なのか「秋田市」という局部なのか、テロップではしばしば判断に苦しんだ。

7月24日 散歩コースに太平川が流れている。途中2カ所(桜と広面)に橋がかかっている。広面側は橋げたまで1メートルの余裕があった。もう一カ所の桜側の木橋はやばい状況で通行止め。水位もほぼ通路スレスレまできていて、周辺の住民は生きた心地がしなかっただろうな。30年ほど前、息子の保育園へ行く道路が冠水した。生まれて初めて腰近くまで水に浸かって保育園に送ったことを思い出した。自然災害のほとんどない地域に住んでいることに感謝していたが、いやいやそんなことはない。すぐ隣り合わせで生きていたのだ。

7月25日 ジム通い3回目にして中級エアロ50(分)挑戦。初級は何とかついていけたが、いくら何でも中級はまだ無理と思っていたのだが、とりあえずどの程度ついていけないかを知るためにチェレンジ。きつかったが、どうにか最後まで足は動いた。汗が止まらない。ひとつの山に登った後のような達成感とそう快感がある。わずか1時間のエクササイズで、6,7時間苦闘の果てに得られる登山の達成感と同じ感覚を得られた。前日から寝られなかったり、苦手な早起きをしなくてもいいし、面倒な準備はいらないうえに移動も必要ない。なるほどエアロビは心身とも便利で快適だ。

7月26日 連日調べもののために県立図書館のお世話になっている。地元新聞の記事データベースを検索、コピーするためだ。その専用サイトがあり、図書館員にログイン・パスワードを入力してもらうと1時間(だったかな)、時間限定で使えるサービスがある。コピー代は1枚30円。会員になると毎月かなりの金額が課金される。「平成の町村大合併」について検索、コピーをとった。100円玉10個くらいがあっという間になくなる。「宮城・岩手地震」でも同じくらいコピー代を使った。新聞社のデータベースを自由に使えるのは助かる。昔だったら、この資料を探索だけで大半の時間と労力を使った。そのことを考えると1枚30円は惜しくないし安い。

7月27日 お化けや妖怪に何の興味もない。ところが昨日読んだ本の内容は本当に身の毛がよだつような怪談だった。フランスのCPサイエンス教授にして哲学者のJ.G.ガブリエルの『そろそろ、人工知能の真実を話そう』(早川書房)というAI神話解体の書だ。前半部で語られるAIの現在進行形の現実に身の毛がよだつ。AIは確実に死を遅らせ、不死への道も開くが、同時にそれは人間の手で制御不能となることを意味する。CPがルールのあるチェスや将棋に勝つのは子供だましで、超越的知能は人間の意識さえアップロードする段階まで来ているというのだ。現にグーグルはその開発に死力を尽くしている。アマゾン、フェイスブック、アップルもAI開発にしのぎを削る。その一方、AIのこの「知能爆発」を恐れて、あのホーキング博士やビル・ゲイツは悲観的な批判を展開しているというから複雑だ。翻訳に関わらず実に読みやすい日本語訳なのは、さすが早川書房。熱帯夜に涼気がほしければ、ぜひ本書を。

7月28日 昨日4回目のエアロビ・レッスン。旧知のT先生で、昔からT先生のレッスンが好きだった。それにしてもエアロビの身体的効果は驚くほどだ。こんなに気分のいいものだったのか。通便が良くなり、腰痛がおさまり、寝付きがよくなり、体重まで減り続けている。心理的にも効果は少なくない。ストレスがなくなり、人の悪口を言わなくなり、不平不満が消えた。運動後は爽快感と達成感が満ち満ち、これ以上人生に何が必要なのか、と肯定的で前向きな気分になる。いつまでこの高揚感が続くかわからないが、当分は生活のメーンはエアロビで行こうと思っている。
(あ)

No.860

神馬
(新宿書房)
上野敏彦

 著者は現役の共同通信記者。記者というか編集委員兼論説委員で、私自身も何度か会ったことがある。一緒にお酒を呑んだこともある仲だ。著者が仙台の支局勤務時代に知り合ったのだが、彼の著者目録を見ると通信社記者というよりプロの記録作家、フリージャーナリストといったほうが当たっているのかもしれない。最初の著作は仙台時代に通った寿司屋さんの「塩釜すし哲物語」。これは今も文庫本になってロングセラー中だ。その後も韓国差別問題や焼き畑紀行、ワインや魚、酒といった食に関してのテーマが本を書く際の中核になっている。そのルポの手法は宮本常一の影響を強く受け、列島を広くひたすら歩くことに貫かれている。本書も食がテーマだ。「京都・西陣の酒場日乗」とサブタイトルにあり、西陣や太秦という地域が、朝鮮半島と濃密な関係を持った場所であることも最初に明かされる。このへんは著者の面目躍如たるところ。京都の片隅で三代にわたって営まれてきた居酒屋の物語を、京都の歴史や文化の深層に寄り道しながら、淡々と記録していく。ちなみに居酒屋通たちによると、この「神馬(しんめ)」という居酒屋、知る人ぞ知る世界遺産的な店だそうだ。

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