Vol.866 17年7月15日 週刊あんばい一本勝負 No.858


初心者コースで熱中症は情けない

7月8日 気温が30度を超える中、東成瀬の村内を歩き回ってきた。昔からこの地域に関心がある。父親の会社の支所があり、父はよく出張でこの村に泊まり込みで通っていた。子供心に父親が不在になると「また東成瀬か」と思っていた。コンビニもない場所柄もあるが、なぜかユニークな人がこの村には多い。帰りに十文字の町で地元の若い人が出している雑誌を買う。紙面のレイアウトも内容も洗練されていてセンスがいい。広告臭もない。販売だけでやっていけるのだろうか。編集者の意欲と情熱に感心するが、続けてほしいものだ。

7月9日 40日ぶりの山。秋田駒ヶ岳8合目から笹森山、湯森山、熊見平を経て笊森山をピストン。前日もゆっくり眠られたし散歩も一日も欠かさなかった。登りはじめるとすぐに異変に気がついた。身体が重い。両足に痙攣の予兆。暑くて水分補給が間に合わない。身体にいつものリズムが戻らない。笊森山途中で引き返すことに。もしかすると熱中症かも。救急箱に忍ばせていた「味噌」を舐めると痙攣は止まった。汗と一緒に塩分も流れてしまったのだろう。皆に迷惑をかけてしまった。夏山は少し自粛したほうがいいのかもしれない。5月の太平山奥岳登頂の自信が霧のように消えてしまった。

7月10日 昨日のリタイアを引きずっている。いつもは透明な小便も黄赤色で、筋肉痛まである。暑さに弱い体質なことは間違いない。夏山は3リットルもの水を携帯する。水分をとれば体内ミネラルは薄まる。明らかに塩分補給が足らなかった。それと40日間のブランク。山の筋肉はトレーニングよりも山でつくる。40日の空白が山用筋肉をすっかり衰えさせてしまったのかもしれない。とにかくショックで悔しい。

7月11日 今のところ必要ないが、いつかはと思って作っておいた遠近両用メガネを、それとは知らずにこの1週間着用していた。テレビの字はかすむし頭は痛い。鼻と額の間に痛みの伴う違和感がある。そこでようやく「これは遠近両用眼鏡だ」と気づいた。この鈍さには我ながら呆れる。その一方、いつもの眼鏡に戻したら世界は正常に動き出した。便秘薬を飲むようになってから朝の排便がスムースになり気分がいい。

7月12日 突然だが近所のスポーツクラブに再入会。30代後半から通い始めたクラブだが7年前、山登りが忙しくなり退会。それまで4半世紀ちかく通いつづけた。深く考えることもなく衝動での再入会だが、驚いたことに昔からなじみのエアロビ・インストラクターが2名、まだ現役でレッスンを持っていた。すごいなあ。また一緒にレッスンできるのが楽しみだ。来週からボチボチと動き始める予定。

7月13日 日々同じようなことを繰り返しているのだが、今週はちょっと違った。非日常の体験が目白押し。まずは手入れが悪くて大枚2万円で山用ストックを再購入。山の用具で一番お金がかかるのはこのストックだ。丁寧に扱わないとすぐにダメになる。抜歯のために麻酔を注射された。そのままラジオ局で1時間おしゃべり(オンエアーは来月)。あるご家庭にお呼ばれしたら、同年代の男性合唱団の歌の歓迎。自称「秋田のダークダックス」と言われる人たちで、そうか、こうしたおもてなしもありか。7年ぶりに近所のスポーツクラブに再入会。気分はもう汗だくだ。今日は仙台の大学で今年最後の出前授業。

7月14日 ここ数日、街に出かけるとやたら警官が四ツ辻に立っている。何かイベントでもあるのだろうか。新入社員に訊くと「献血運動推進全国大会」のため皇太子夫妻が来県中だそうだ。さて、仙台の今年最後の仕事も終え、昨夜終電で帰宅。いつも通りに起床、ひげをそり気分一新、机に向かっている。ボーっと朝寝をしても誰も困らないのだが夜眠られなくなるのが怖い。土曜は早朝から町内草むしり、日曜はSシェフと笙ケ岳なので、早起きしなければならない。朝寝などもってのほかだ。
(あ)

No.858

薄情くじら
(新潮文庫)
池内紀他編

 面白い書名だが、収録されているアンソロジーの中編小説、田辺聖子の作品の題名をとったものだ。もともと「日本文学100年の名作」という10巻シリーズのうちの1冊。10巻は10年1冊単位で編まれていて、本書は84年から93年までの10年間に書かれた名作を14篇集めたもの。そのなかには刊行当時に読んで大感動した高井有一『半日の放浪』や阿川弘之『鮨』も入っている。なかでも宮本輝「力道山の弟」が私には圧倒的に心に残った。〈力動粉末〉というインチキ精力剤を路上で売る大道香具師の物語だ。それを純粋無垢な子供の側から描いているところがミソ。力道山の弟という香具師が、兄の強さの秘密はこの薬にあると口上を述べる。すると即座に客から「嘘つけ。おれのところには力道山が来たことある。弟がいるなんて話は聞いたことがない」と因縁をつけられる。ここで香具師は土下座して、その男に「嘘」を詫びる。実はこのお詫びが詐欺師の手口で、インチキのインチキたる所以。ここで手口を明かすのはルール違反なので興味ある方は読んでもらうしかない。このシリーズは40年分、ということは4冊読んだ。秀作が多くて楽しめる。全10巻を全部読むにはまだ少し時間がかかりそうだ。

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