Vol.814 16年7月9日 週刊あんばい一本勝負 No.806


シロアリ騒動は大チョンボ

7月2日 いつのまにか7月だ。納得いかないが誰に怒りを向けていいかわからない。7月は新刊なしで編集準備中も1冊のみ。思いっきり暇だが、この機会に事務所内部の整理、改修に着手しようと思っている。外壁などの改修は8月から業者が入る予定だが、その前に内部の書類整理や机の配置転換、倉庫の本処分など、済ませてしまうつもりだ。山道具と仕事の書類が同じ棚に積まれているというのは、どう考えてもちょっとまずい。このへんをすっきりさせるつもり。

7月3日 昨夜ナイターの巨人―ヤクルト戦を観ていたら、6回あたりに球場で花火があがった。それから3秒くらい遅れて、その花火の実音が聞こえてきた。ああっ、そうか今日は秋田市内の「こまち球場」で試合をやっているんだ。それにしてもテレビ音声から3秒も遅れて音が聞こえることにショック。そういえば、例のオウム真理教の地下鉄サリン事件当日、私の家族は全員あの地下鉄の真上の六本木のホテルに宿泊していた。翌日息子がブラジルへサッカー短期留学するための見送りだった。朝、テレビで事件を見ていたらニュースのけたたましいサイレンがホテルの窓から聞こえるサイレンと同調していた。それが田舎者にはなんだか不思議な気分だった。ニュースと現実は距離やタイムラグのある世界が、私たちの現実なのだ。

7月4日 昨日の日曜山行は和賀岳だったが雨で中止。雨の中の山行も悪くないのだが、和賀岳はちょっと大きすぎるし走行距離も長すぎる。カッパを着て5時間近く歩くのは苦行だ。で、由利本荘の東光山に変更。ここならいくら降ってもカッパで1時間半ほど。雨のブナ林を歩くのも風情がある。雨の山を楽しんだ後、午後3時前には帰宅した。帰ってきたら事務所の裏壁面から白アリが噴出、大事件が起きていた。息子が駆除に奮闘中で、さらに家からはカミさんが「風呂のボイラーがヘンになった」と緊急連絡。どちらも応急措置をとったが、なんだか今週は不測の事態が起きそうで心配だ。

7月5日 シロアリ騒動にはビックリ仰天。そろそろ出るころだなという予測もあったので梅雨明けから外壁全面改装工事を準備していた。準備万端のつもりがシロアリ君に先を越されてしまったというわけだ。この時期、シロアリ君が一番好きな季節だそうだ。事務所に工事の人や関係者の出入りが多くなった。これを機に1階と2階の小生の机の入れ替えをやってしまった。バタバタしているときほど実は仕事ははかどる。2日前、加藤明美さんの写真集『私の好きな、秋田。』が市の文化選奨を受賞した。

7月6日 シロアリ騒動が尾を引いている。外壁改修工事に駆除費用がプラスになった。当初の予算が2倍強に膨らんでしまった。もはや手持ち資金でやりくりするレベルではない。何年かぶりに日本政策銀行(元の国民金融公庫のこと)に駆け込み短期融資を申し込んできた。印刷所にも銀行にも一切借金がないのが自慢だったのに情けない。銀行に頭を下げることほど屈辱的なことはない、というほど偏狭ではないが、「こんなことまでして仕事を続けなければならないのか」と昔はよく思っていた。いまは銀行も仕事だしな、ぐらいの感慨しかない。でも借金というのはやっぱり嫌だ。

7月7日 今週は「シロアリ事件・資金繰り騒動」のまま週末を迎えそうだ。昨夜の豪雨は傷口の塩のように浸み込んだ。この雨で事務所の白アリ軍団が狂喜乱舞しているかと思うと悔しい。自宅はセキスイハイムなので鉄筋プレハブ。もう40年経っているのにどこも悪いところはない。やはり木造が問題だったわけだ。なんだか仕事どころではなくなってしまったなあ。穏やかな老後はまだずっと先のことのようだ。

7月8日 シロアリ騒動で浮足立っていた。被害総額も未定なのに早々と金策に走ったり、いらぬ不安だけが増殖し先が見えなくなってしまった。冷静になれジブン、と声にだして反省。セカンド・オピニオンを聞くために1級建築士の友人に相談。それが正解だった。犯人の白アリ説そのものが勘違いだったようで、ただのウンカの類ではないか、といわれた。さらに工事業者の見積もりの不備や説明不足も指摘された。工事業者はアリを見てもシロアリなのか羽アリなのかウンカなのか、一言も明言しない。何のアリかによって工事内容は変わるはず。このへんの説明不足も納得がいかない。冷静に考え、ひとまずこの問題は白紙に戻すことに。セカンド・オピニオンって大事だよなあ。
(あ)

No.806

日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか
(矢部宏冶)
矢部宏冶

本書はベストセラーになった『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』の続編にあたる。今回は日米外交史に隠された「密約」の問題をアメリカ側公文書などから抉り出している。戦争の脅威が生じたとき日本の軍隊はアメリカの最高司令官の統一指揮権のもとに置かれる。その「指揮権密約」といわれる全貌を微に入り細に入り、わかりやすく解読している本だ。英文の条文を丁寧に読み込んで解読していくのだから専門家以外には難しい仕事だが、著者は編集者兼小さな出版社のオーナー。専門家でもないのによくこれだけの仕事をこなせるものだ。高名な政治評論家やノンフィクションライターでも、この手の本を書くためには何名ものアシスタントらや学者の助力が必要になる。 プロローグもインパクトがある。沖縄で偶然、鳩山友紀夫元首相に会う。彼は前作を手放しでほめてくれた。そこでちょっと話す機会があったので本書のテーマのことを話したのだが、密約などを生み出す政治構造にまったく無知なことを鳩山はかくそうともしなかった。首相まで務めた政治のトップエリートにしてこの程度だ。と驚くところから本書は始まる。この本も話題になりそうだ。矢部さんは昔からの友人だ。友人の本が話題になるのは自分のことのようにうれしい。

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