Vol.805 16年5月7日 週刊あんばい一本勝負 No.797


山行と村上春樹と静かなゴールデンウィーク

4月30日 GWはカレンダー通り。昔からそうなのだが「休みなのでうれしい」という感覚はない。休みと仕事のくっきりした壁がないせいだ。GW期間中、外にでるのは3回。八塩山と鳥海山の2回の山行を予定している。あとは事務所のソファに寝転んで本を読む予定。「村上春樹」三昧だ。『1Q84』は文庫で1から6まで、ハラハラドキドキしながら先日読み終えた。いまは『羊をめぐる冒険』を読書中。GW中に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と『ねじまき鳥クロニクル』を読みたいのだが長編ばかりだと飽きる恐れも。手元には『1973年のピンボール』と『風の歌を聴け』の2冊を予備に準備中。最新作からどんどん若いころの作品に遡って読むのが吉と出るか凶と出るか。これまでの村上作品のベストワンは『1Q84』。

5月1日 Sシェフと八塩山登山。ずっと雨だったが雨の山中を歩くのは嫌いではない。713mの山だが、ものの1時間もあれば山頂に。イワウチワがいたるところに咲き乱れていた。この時期の山はカタクリやスミレ、シラネアオイなど「紫系の花」が全盛だがピンクに染まった白色の優雅なイワウチワには思わず見とれてしまう。山にはまだ残雪があり寒かった。黄桜温泉(この温泉はお気に入り)で身体を温め、峠を越えて羽後町まで遠征。西馬音内そば」を食べ、そこから高速で雄和町(国際教養大の裏手)へ。友人の陶芸家・安藤るり子さんの個展をみて、リンゴ灰を使った一輪挿しを購入。

5月2日 今日は仕事。月末をはさんだGWなので銀行関係や振り込みなど、今日中にやらなければならない仕事がいろいろ。5月はけっこうバタバタ。恒例の仙台の私立大学でお話をする時期だし、月末には関西の友人たちと台湾旅行がある。新刊も2,3本出る予定だ。とりあえず明後日は鳥海山直登登山。八塩山に登ったばかりで体力的に大丈夫か、ちょっぴり不安。

5月3日 雨が降っても毎日1万歩ぐらい歩く。歩かないと身体に溜まった毒素が抜けない。1万歩というのは6キロほど。1歩60センチに設定している。午後2時ころになると眠くなる。そのあたりを狙って眠気覚ましに散歩。ところが昨日は夕飯後にも散歩。1日で計2万歩歩いた計算だ。夜にも歩いたのはイッパイやりたかったから。そんな日もある。駅前繁華街をふらつくうち、どこの店にも入る気がなくなった。コンビニでマカロニサラダを買い家呑み。年々外呑みがおっくうに。家呑みの欠点は呑みすぎること。家にはいろんな種類の酒が蓄えている。ビールに始まり焼酎、日本酒も呑んで最後はウイスキー。

5月4日 今日は鳥海山(七高山)登山だったが雨模様で中止。急きょ雨でも登れる八塩山に(山菜をとりたいだけの声も)。八塩山には三日前に登ったばかり。10年前(2007年)、故・藤原優太郎さんに連れて行ってもらった矢島口(坂之下)から登る八塩山のすばらしさに魅了されて以来、この山のファンだ。でもこの10年は定番の東由利側の登山口からばかり。今日は事前偵察も兼ね矢島側登山口も探索に。10年前と同じように道に迷い悪戦苦闘したが登山口のある国際座禅堂まではたどり着いた。でも登山口は見つけられなかった。そんなこんなで登山開始のころにすっかり雨は上がっていた。天気予報は見事外れ。

5月5日 3日の真夏日には驚いた。ソファに寝転んで本を読んでいたら汗が噴き出してきた。半袖短パンに着替えたほど。一転4日は確実に雨予報。鳥海山登山が中止になったが変更した八塩山になぜか雨はなし。午後からは青空まで広がった。そして今日。最高気温は15度。シャツにベストでは肌寒いほど。なんだか目まぐるしく変わる天候に翻弄されている。夜はモクモクと村上春樹の世界にはまっている。初期青春3部作といわれる『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』を読了。この後に何を読むのかが大問題だが「ねじまき鳥」や「世界の終わり」はちょっと長すぎる。かといって初期の短編集は消化不良を起こしそう。村上春樹は難しい。

5月6日 今日は営業日。GW中のなんやかやが「今日」に集中して押し寄せている。それにしても「3日にあげず」注文がくるネット書店もGW中は「お休み」で、まったく音沙汰がなかった。これは意外だったが今日から活動再開のようで、まとめて注文が入った。進行中の3本のゲラも著者校がまとめて返ってきた。事情は違ってもそれぞれ考えることは同じ。銀行や郵便局にGW中の出入金チェック、税理士も来て、印刷所とは来週からの打ち合わせ。今月から始まるHP新連載(秋田藩に関するもの)原稿も入ってきた。なんだかてんやわや。熊本地震の影響で全国的に本の注文は冷え込んでいる。GW中にそれがどれだけ改善されるかを注視しているのだが、元に戻るには時間がかかりそうだ。
(あ)

No.797

海辺のカフカ
(新潮文庫)
村上春樹

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は予想以上に面白かった。物語がシンプルで筋をたどるのが容易だった。スリリングな構成で一気呵成に読了できた。村上春樹の小説は複雑で意味するところが重層的で、わかりにくい。これまでの村上作品への正直な印象だ。世界的に評価される日本の作家の現代小説を、同じ世代に属する日本人の私が「よく理解できない」。これはずっと引っかかっていた。コンプレックスといってもいい。だから、これを機にまとめて村上作品(ベストセラーになった長編小説の数々)を読んでみようと思い立った。その最初の作品が本書だ。以前にも『ノルウェイの森』がベストセラーになった時に読んだのだが、よく意味が分からなかった(後日、映画を観てストーリーを改めて把握した)し、『1Q84』は上巻でリタイアしてしまった。でも今回は覚悟が違う。しっかり集中して読もうという覚悟があった。その最初に本書を選んだのが正解かどうかはわからない。やっぱり結構難しかったが、どうにか読み通すことができた。15歳の家出をした少年と、戦争時に記憶を失った老人の、関係のなさそうな2つの物語が交錯する。そしてある共通の出口へと向かって物語は進行していく。

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