Vol.801 16年4月9日 週刊あんばい一本勝負 No.793


インフルエンザで家族全滅か

4月2日 このところずっとウイスキーに凝ってる。暖冬だったせいもあるのだろうが昔のように「冬は燗酒」とはならず冬もウイスキー。ビールを飲まないせいもある。暑くなると冷たい酒を呑むし、寒くなれば温かい酒がほしくなる。これは身体の生理だが、数日前、焼酎の水割りが無性に飲みたくなった。季節の変化に身体が反応している。酒はA酒店から取り寄せている。日本酒も焼酎もその時々でまったくのお任せ、銘柄をこちらで指定したりすることはない。で今回見慣れない焼酎が送られてきた。「栗黄金」といったかな。これを少量の水と氷で割って呑んだらべらぼうに旨かった。もう3日間、焼酎の水割り三昧だ。

4月3日 朝から曇り空だが太平山中岳登山。天気予報は午後から雨。気圧の谷の雨でそうひどい降りではないと判断。いつもは登山口まで入れないほど駐車場は満杯だが今日はガラガラ。数台の車しかいない。太平山金山滝コースは一年中登れる山として秋田市民に愛されている。日曜日でも雨の予報ともなるとピタリと「客足」は途絶える。天候不安定の中、2時間かけて前岳まで行きついた。ここで急に雨足が激しくなった。中岳まで行くのはやめ下山。登山口の四阿でランチ。冷えた体を温泉で温めて帰宅したが、まだ午後2時前。朝7時半に家を出て山に登って温泉に浸かり、午後からちゃんと仕事までできる(しなかったけど)。こうした環境は自慢してもいいのではないだろうか。

4月4日 世の中は新年度。なんとなくその空気感はこちらにも伝染する。電話やメールからも入れ替わった職場の雰囲気は伝わってくる。わが舎の4月はたまたまだが「営業月間」になりそうだ。新刊はあらかた3月までで出尽くした。この出た本を売る仕事が残っている。4月はこの慣れない仕事がメインになる。新年度になってはじめて観たDVDはウディ・アレンの『マジック・イン・ムーンライト』。有名マジシャンが美女霊媒師のインチキを暴くというストーリだ。「この世は神が創ったとしてもマジックがないと回らない」というセリフが決まっている。アレンは年をとるたびにさえてくる。

4月5日 昨日一部だが新刊『殺意の内景』という秋田大学の保健管理センター医師(精神科医)の本が出た。サブタイトルは「精神鑑定の現場から」。印刷の事情で残りは8日まで待たなければならないのだが、550ページという大著にも関わらず出足は好調。前作は『自殺の内景』というこれまた大著で、なんと増刷。サブタイトルは「若者の心と人生」。A5版でびっしり活字だけの、枕よりも重い本だ。こんな時代でも活字を読むのが苦痛でない人たちが一定数いることを証明してくれた。著者の苗村先生はこの新刊刊行と同時に秋田大学を退官、記念の本となった。550ページもの手がしびれる重い本が、「珍しい家具」のように新奇な目で見られる時代がそこまで来ている。

4月6日 晩酌のツマミは漬物や佃煮があれば十分。シンプルなツマミほど酒の味を引き立ててくれる。昨日は横手の有名な居酒屋『日本海』で打ち合わせがあった。この名物居酒屋のマンガ本を作っている。店主のマコちゃんは魚屋さんで片手間に居酒屋をやっている。魚がうまいのは当然だ。昨日のランチは「サヨリ焼き定食」。美味しかったが皮を残してしまった。魚の食べ方がヘタ、というか苦手だ。幼少期から豚肉派だった。魚をきれいに食べられないのが、いまだに劣等感だ。今日の夜は「和食みなみ」でSシェフと魚を食べる日。魚の食べ方は教えてもらう予定だ。

4月7日 どうやらカミさんはインフルエンザのようだ。アッシー役の新入社員も当然のようにダウンした。小生は今のところなんともない。朝夕、食事は一緒にとるのだが、それ以外はできるだけ接触を避けている。カミさんは1週間ほど前から咳がひどかった。旅先でうつされてきたな、とある程度の察しはついていたが、そう心配はしていなかった。新入社員はアッシーなので車中2人になる。そんなわけで今日は新入社員は休み。文字通り「開店休業」です。いまのところ小生は元気ですが体内に菌が潜伏中の恐れは十分にあります。来社はお控えてください。

4月8日 カミさんの咳に始まり1週間で家族全員がインフルエンザに。という最悪のシナリオを予想していたが、最後のひとりの小生はまだどうにか「無傷」のまま。忙しさの原因を作っている最後の本である『殺意の内景』の残りが今日できてくる。この本の配本さえ終えればしばらくは開店休業しても問題ない。熱で赤い顔の新入社員も今日だけは出社。昨日は休んで、今日も午後からは家に帰って休養。明日からは週末だし2日間安静にしていれれば快方に向かうだろう。私も体調は万全ではない。熱もないし、だるくもないのだが全身に活力がわいてこない。食欲もあるし栄養剤も飲んでいる。でも油断はできない。今日の午前中さえ乗り切れば……頑張ろう。
(あ)

No.793

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(文藝春秋)
村上春樹

この著者の本のいい読者ではない、と何度も書いてきた。エッセイなどは必ず読むのだが長編小説は「ノルウェイの森」だけ。これも内容が暗くて最後まで読むのが辛かった。ところがこの年(65歳を超えて)になると、不思議なことに徐々に素直に著者の小説のことばと向き合えるようになった。過剰なまでの比喩やその暗喩の難しさに閉口していたのだが、読書のスピードが落ちてくるに従い、その1行1行に込められた意味がゆっくりとながら理解できるようになってきたのである。とりわけ本書は物語に疑問や不明を感じることはまったくなかった。学生時代の5人の仲間から突然仲間外れにされた主人公が、その理由を探るべく旅に出る。いつも奇妙奇天烈という印象の強かった書名も、ちゃんと内容に即した実に的確な書名であることも再認識。すみません村上さん、勝手に誤解していました。ところで村上春樹の小説には「秋田」が何度か出てくる。秋田と何かつながりがあるのだろうか。『1Q84』でも秋田に現存する新興宗教が出てきたし、本書でも主人公の大学時代の友人として登場する人物は秋田出身という設定だ。まあ、こちらの単なる考えすぎなのだろうが、なんだか気になってしまう。そんなわけで、この小説の次は長編の『海辺のカフカ』に挑戦している今日この頃です。

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