Vol.803 16年4月23日 週刊あんばい一本勝負 No.795


ジンギスカン・熊本地震・観桜会

4月16日 ジンギスカンが食いたくなった。去年、札幌で食べたうまさが身体の隅っこに記憶として張り付いている。そこで友人たちとシャチョー室でジンギスカン宴会を敢行。楽しい宴席だったが家に帰るまで熊本地震のことはまったく知らなかった。昨日一日、穏やかならざる気持ちのままニュースを注視していたが、午後からは自分自身の体調が悪くなった。仕事を休み、家に帰って伏せていた。熱があったり寒気があったりするわけではない。なんとなく怠くてやる気が起きない。酒を呑む機会の多かった週なので、その疲れが出ているのかもしれない。

4月17日 日曜山行は「高岳山」。八郎潟町にある標高231メートルの小さな山で「たかおかやま」と読む。延喜式にも記載されている格式ある神社や、中世の浦城跡地としても由緒ある歴史の詰まった山だ。山頂展望台にある1本桜はまだ蕾だったが、ここから一望できる大潟村は迫力がある。山に登る前に五城目の朝市も冷やかしてきた。若い人たちの出店が予想以上に多くて驚いた。都会から若者のIT移住が活発な場所なので、その家族が出店しているのだそうだ。若者たちのこじゃれたアクセサリー店と、昔ながらにグロテスクな鯉や小魚や山菜を売る店のギャップがおもしろい。

4月18日 2本連続、同じ局(BS1)で面白いテレビ番組を観た。最初はユーコンの犬ぞりレースに参加した日本人女性を追うドキュメンタリー。彼女のことは数年前に本で読んで知っていたせいか感情移入がしやすかった。犬ぞりレースに出たくてカナダに移住してしまった女性の複雑な内面まで踏み込んだ、深みのある番組だった。主人公の寡黙さが嘘くさくなくていい。その感激も冷めやらぬうちに連続で、セルビアから分離独立したコソボの若い女性柔道家の物語が始まった。これまた涙が出てくるほど感動もの。コソボ初のリオ・オリンピック選手で52キロ級。日本の中村選手のライバルになる。コソボはヨーロッパのなかで岐阜県程度の面積しかない最貧国だ。その祖国の誇りをかけて戦うスーパースターとコーチの物語。期せずして2本の番組とも若い女性が主人公でその精神力の強靭さには驚くばかり。

4月19日 朝9時の新幹線で仙台出張。手ばやく用事を済まし、駅前で軽登山靴を買い、午後3時台の新幹線で帰ってきた。秋田市へ直帰するのではなく途中の角館で途中下車。夕6時からの宴席があったのだが、小山駅で人身事故があり仙台から40分遅れて出発。角館に着いたのは約束の6時を数分回っていた。気のおけない人たちとの飲み会だったからいいようなものの、公共交通機関も何があるかわからない。宴席のゲストは小川三夫さん。遅れた非礼を詫び、持って行った『棟梁』(文春文庫)にサインをしてもらった。小川さんは法隆寺最後の宮大工といわれた西岡常一の内弟子だった人。その後、「鵤公舎」を立ち上げ、数々の寺院建設を手掛けた日本を代表する「棟梁」だ。宴席はもっぱら「知識」と「知恵」の違いについてまじめに語り合った。出席メンバーには「天の戸」のM杜氏もいて、小川さんとは同じ職人同士、盛んに意見交換をしていた。最終電車で帰るので途中退席。もっと話が聞きたかった。

4月20日 朝からバタバタ。施設に入っていた94歳の義母がついにターミナルケア病院に入院。施設を引き払う必要があり、一挙にやることが山ほどできてしまった。大きな約束や出張、のっぴきならない仕事が入っていなかったのは不幸中の幸い。いろいろなアウトドア・イベントに誘ってくれるSシェフには朝一番で「迷惑をかけるかも」とメールで了解をもらった。明日はモモヒキーズの観桜会がある。これは夜なので出席できそうだ。明後日は仙台から著者が打ち合わせに見える。遠方からの客とのアポをドタキャンするのは忍びない。なんとかうまくやりくりするしかない。「予定」を入れない方向で、これからは仕事を調整していくことになりそうだ。

4月21日 もう5年ほどサイフはモンベルのビニール製折りたたみを使っている。安くて軽くて丈夫で使い勝手がいい。毎年ころ合いを見つけて買い替える。毎年サイフを買い替えるというと驚く人もいるが、このサイフの値段は千円。散歩のさいはさらに安くて小さくて軽いモンベル山用小銭入れ。これに千円札2枚を折りたたみ持ち歩く。大きいサイフには健康保険証やカード類、免許証が入っているので落とすのが怖いからだ。先日、大きなサイフのまま散歩に出た。歩くうち汗ばんできて上着を脱ぎ肩にかけた。途中コンビニで牛乳を買おうとしたらサイフがない。上着から滑り落ちたのだ。青くなって夜道を逆走したが見つからない。憔悴して家に帰ったら、机上にサイフは鎮座していた。「落としたッ」と思ったときの、あの精神的ショックはいまだ癒えていない。散歩には小さなサイフをもつこと。落としても2千円の被害で済む。

4月22日 モモヒキーズ観桜会。千秋公園前に集合、近くのコンビニでワンカップを買い、公園内を散策後、駅前居酒屋に腰を落ち着け本格宴会という段取りだ。桜の木の下で夜風に当たって体調を崩すのはいや、という至極まっとうな年寄りたちが考えた「理想的花見」だ。駅前居酒屋はどこも満杯だった。どうにか空きを見つけもぐりこんだ。チェーン居酒屋といえば若者というのが定番だが、ここは不思議にも高齢比率が高かった。飛び込みで入った店だが生ビールがおもいっきり「薄味」。普段ビールを飲まないので自信はないのだが、炭酸水にウーロン茶を混ぜた味。花見酒用に持参したポケット・ウイスキーがあったので、それをチビチビ。薄いビールはウイスキーのチェーサー代わりにちょうどよかった。
(あ)

No.795

面白くて眠られなくなる社会学
(PHP)
橋爪大三郎

社会学の入門書である。とにかく目から鱗の驚くような知識がいっぱいで、一時的に頭がよくなったような気分になってしまう。数日後、ほとんど忘れてしまうような雑学的知識なのだが、自慢気に他者に教えたくなるようなことばかりだ。書店「丸善」は明治2年に法人登録する際、信用を得るために「丸屋善八」という架空の人物を「法人名」にしたのが起こり、なんて知ってました。「法人」という概念を説明する章で描かれていたことだが、法人の意味がよくわからなかったために人間の名前をつけてしまったのだそうだ。さらに驚いたのはインドのカースト制度だ。差別偏見の塊のような悪名高いカーストは今も現代インド社会で続いている。誰が見ても異常としか思えない制度が何千年も続いているのはそれなりの理由がある。カーストは「奴隷制」を回避した優れた仕組みなのだ。カーストには私有財産があり仕事も自由も結婚だ。だが奴隷にはそれらの権利が一切ない。3千年前にインド人が考えだした奴隷回避のための優れた制度、と著者は言う。奴隷には一部結婚できる者たちもいた。それは子供も自動的に奴隷にするために許されたものだが、古代ローマでは結婚してできる奴隷のことを「プロレタリアート」といったのだそうだ。マルクスはこの言葉を拝借しただけだ。人類にとって「宗教というのはコンピュータのOS(基本ソフト)と同じ」というのも言いえて妙。

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