Vol.774 15年9月26日 週刊あんばい一本勝負 No.766


またぞろ秋の山行シーズン到来!

9月19日 新刊『美酒王国秋田』完成、東京の製本所からパレットで届く。いつもより部数が多いので運送会社のチャーター便だ。市内の酒造組合や大学、県内取次といった大口先にも配送。こちらの手間は大幅に省けた。こちらは個人読者やマスコミへの発送に集中、ほぼ1日で面倒なことはあらかた仕上げてしまった。これで人並みにシルバーウイーク(と連休のことをいうらしい。知らなかった)を過ごせることとなった。カミさんはこのところ「被爆ピアノ・コンサート」のリハーサルで連日深夜帰り。夜は一人で「和食みなみ」で祝杯。これで大きな仕事の山は越えた。

9月20日 寝ているときに足をねじったのか足首が痛い。昨日は一日中静かにしていた。明後日、ひさしぶりに友人と山(真昼岳)に行く約束をしている。これはキャンセルかなと落ち込む。今日目覚めたらだいぶ足の痛みは消えていた。これなら大丈夫そうだ。寝ているうちにひねったと思っていたが、これは痛風の前触ではないのか。もう痛風とはずいぶんご無沙汰しているが数年前までは「持病」のようなものだった。体重を落として薬を定期的に服んだら兆候はすっかり消えた。もしかしてと不安になり痛み止めも服んだが、それが効いただけなのかも。痛風はもう嫌だ。このところ忙しかったから食事も不規則。ストレスも少なくなかった。思い当たることばかりが脳裏に去来し、不安は増すばかり。

9月21日 ふだんあまり相撲は観ない。フアンの力士もいなければ、特別興味惹かれることもない。でも今場所はちょっと違う。豪風の成績が気になるのだ。昨日の段階で2勝6敗。昨日は勝ってくれたのでホッとした。成績が気になるのは事情がある。来月初め豪風の「対談」に編集者として立ち会うのだ。今作っている能代市の農産物料理レシピ集のなかで市長と豪風の対談をセット。今場所の成績が良ければ、たぶん豪風関もいっぱいしゃべってくれる。成績が良くなければ当然口も重くなる。何とか気持ちよく対談を成功させたい。そんな下心だ。がんばれ、豪風!

9月22日 友人2人と真昼岳登山。痛風は大丈夫だった。絶好の天気のはずが山はずっと曇り空。6週間ぶりの山行は疲れたが、やっぱり山は気分がいい。登り3時間、下り2時間半の、再デビュー戦にしては手ごろな山。とにかくここのブナ林が好き。県内の山ではブナが一番きれいな場所だ。トリカブトの紫の花がきれいでミズの赤い実が採り放題、キノコもポツポツ出始めていた。下山後の温泉「柵の湯」もよかった。温泉に入るのも6週間ぶりだ。全身を徹底的に磨き倒した。家だとこうはいかない。

9月23日 山行前夜、内館牧子『終わった人』(講談社)を読み始めたらやめられなくなってしまった。新聞連載した長編小説。超エリートの定年後を描いた物語だ。小説家の想像力にはいつも驚かされるが、この主人公の心情は同年代にはよく理解できる。これを書いたのが女性作家であることを時々忘れそうになるほど、男性の切実なリアリティと豊かな意外性に驚く。久々に満足の読後感。実は本を読む前、DVDでフランス映画『画家と庭師とカンパニュー』も観ていた。これもいい作品で感動したのだが内館さんの本と偶然にも同工異曲の「似たようなテーマ」の作品だった。近い将来、この内館さんの本は映画化かテレビドラマ化されるだろう。

9月24日 左足親指の爪が赤黒く変色。山行の際、登山靴で爪先に圧がかかり内出血を起こしている。先日の山行で爪先が熱を帯びだした。夜、布団がかかっただけで爪先が火照って眠られない。猛烈に痛いわけではないが、気になってイライラ。皮膚科に行こうと思ったが、Sシェフから「そんなの自分もしょっちゅう」と言われてなんだか安心、医者に行くのをやめた。オレだけじゃなかったんだ。要は山行前に入念に爪を切るという準備を怠ったつけなのだ。原因がはっきりしているのだから病院に行く理由はない。というかできるなら病院にはいきたくない。自助努力で治すことにした。「自助努力」って便利な言葉だ。まずは今日の入浴後、きれいに爪を切る。山行時には爪に絆創膏を緩く巻いて負担を軽くする。それでもダメなら医者に行く。

9月25日 1年に1回行くか行かないかの市内アウトドアショップに珍しく出かけた。山道具屋さんに行かないのは、行くといろいろ買ってしまうから。店員さんも進め上手で手練手管で新しい道具類を宣伝する。そして危惧はまたしても当たった。壊れたストックを買うついでに値段を見ないで「クマ撃退スプレー」も買ってしまったのだ。1万円もした。いつか役に立って……ほしくない。発作的にスプレーを買ったのは数日前、クマの写真を撮っているKさんから、デジカメで録音したクマの赤ちゃんの泣き声を聞かされたのが影響している。ほとんど猫とうり二つ、何度聞いても猫だ。さらにKさんから、けがなどによく効くというクマの油もいただいた。これでクマがなんだか身近な存在に感じて急に怖くなった。なんとも単純な話だが、私たちのすぐそばにクマはいる。まちがいなくいる。
(あ)

No.766

百歳までの読書術
(本の雑誌社)
津野海太郎

 待望の新刊だ。蔵書の処分や図書館の使い方、有名作家たちの晩年の本との付き合い方を通して、老人と本の関係を綴った「読書エッセイ」だ。「老人読書」という聞きなれない単語までオビに出てくる。仕事は遅々として進まなくても、年を取るスピードだけは日々加速し、身体がそのスピードに追い付かない。自分の70代を想像する余裕もない日々だが、この70歳からの本との付き合い方を描いたガイドブックを読むと、そろそろ真剣に「老後」を考えなければならないという気持ちになる。私にとっては少なくともこれからの人生の指針になる本だ。「60代はほんの短い過渡期。50代(中年後期)と70代(まぎれもない老年)のあいだに頼りなくかかる橋。それ以上のものではない」と著者は書いている。「本と老い」の両方にバランスをとったエッセイというのは珍しい。これからはこうした本が陸続と出版されるのかもしれない。鼻先でせせら笑っていた年金制度が「異様な存在感を持ってのさばり始めた」と嘆いているあたりも著者の面目躍如。「私などというものはない。あっても20パーセント。残りの80パーセントは時代が作り上げたもの」というのもいい言葉だなあ。

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