Vol.756 15年5月23日 週刊あんばい一本勝負 No.748


今週もまた外に出てばかり

5月16日 ウイスキーの肴が何もなかったので、ワラビと紀州梅とサンマ缶でチビチビ。酔いが回ってきたのか、いやはや面倒くさくなったのか、この3つの肴を一つの鉢に入れマゼマゼ。これが意外にもうまかった。ミズのサバ缶鍋の新バージョン、「ワラビの梅サンマ和え」の誕生である。ワラビは大好物。なくなればSシェフが山郷まで行って供給してくれる。カミさんは「ワラビには発がん物質がある」といいはりごく少量しか食べない。その辺の真偽のほどはわからないが、この時期、ワラビを前に「はし」を置くことは、私にはできない。

5月17日 今日は「山行」なし。町内の下水溝清掃があるからだ。側溝の重いコンクリートブロックを持ち上げるのは長年、小生の独占的役割。20年以上、1輪車を使ったリフト作業は町内「最若手」である私の仕事として定着している。もうずっとやっているから他の町内と比べても格段にスムースで効率がいい。それが自慢で、「山登りをしていて、よかった」と感謝したくなる。社会に有益なことなど何もしてこなかった。でもこの日だけは確実に社会のために貢献している。実は去年、新入社員の顔見世も兼ね彼に参加してもらった。でもそうそう即戦力として役には立たなかったようだ。ここはやはり真打登場、と満を持して参加。わずか一時間ほどの作業だが、まるで山頂を極めたような達成感がある。

5月18日 先週は雨続きで倉庫リフォームは進捗なし。好天に恵まれた今日から本格的に二階部分の撤去作業。明日も天気がよけでば、今週前半には作業のメドが立ちそうだ。と同時に今週から夏のDM通信の制作が始まった。これも今週いっぱいで目鼻をつけ来週には印刷所に入稿したい。新聞の取材や広告掲載、仙台出張に社内宴会、半日がかりの歯医者予約も入っている。ちょっとあわただしい。体調管理には気を遣っているが最近は目の衰えがとにかくひどい。老眼が進んで本やパソコンをみるのが辛くなっている。遠近両用メガネを買おうと思っているが、安くてバリエーション豊富なメガネ屋「JINS」は仙台にしかない。出張の時にでも行ってくるか。

5月19日 弁護士がノコノコTVに出て宣伝活動をするCMをたびたび目にするようになった。あのTVCMに出てくる弁護士なるもの、そのほとんどがマヌケ顔というかアホ顔に見えるのは小生だけ? とにかくまともな人相が一人もいない。敷居の低さや庶民性を訴える戦略なのだろうか。私たちってけっこうバカなんです、とアピールしているわけだ。これとは逆に「これぞ弁護士」という品性と威厳に満ちた弁護士の知り合いがいる。このKさんから著書が送られてきた。Kさんはいわゆる企業再生弁護士。彼らは倒産した会社を支援してくれる会社を「スポンサー」と呼ぶ。弁護士同士がゆずりあう「過失相殺」という言葉も初めて知った。この年になって法律の専門書を読むことになるとは思わなかったが、面白くて一気読み。知らない世界を知るのは楽しい。 

5月20日 今日の朝日新聞県版に私のコラムが載っている。実は昨夜遅くまで手を入れていたもの。よく間に合ったものだ。ある人物を「東京帝大卒」と書いたら朝日の校閲から「卒業していないのでは?」という指摘があった。急いで原典に当たってみると、確かに帝大で学んではいるが「卒業」とはどこにも書いていない。こちらの勇み足だ。訂正をお願いしてゲラに手を入れた。お恥ずかしい。さらにそのゴタゴタの間、ずっと読売県版の「戦後70年」という特集記事の取材を事務所で受けていた。記者はPCでメモを取り、約3時間、顔も上げずに根掘り葉掘り。もう疲れ果ててしまった。朝日も読売もどうにかクリアーし、ぐったりしていたら今度は日本農業新聞の連載書評のゲラがメールで送られてきた。なんだかもう嫌がらせの新聞責めを受けている気分だ。今日はもうとても頭を使う作業は無理、すみません、明日朝にちゃんとやりますから、と断って早々と床に入った次第。

5月21日 秋田市郊外で陶芸や和紙、絵画、彫刻などの若い作家たちが集って工房を開いている場所がある。先日、そこを訪ねた。その道で食べていくのは今も昔も大変なこと。そんな若者たちに少しでもエールを贈れたらとノコノコ出かけ、逆に刺激を受けてきた。道のりは長くデコボコ道だけど挫けずに頑張ってほしい。2日後、今度は美郷町でデザイン事務所をやるSさんのイベントに。事務所を会場にしたユニークな小物雑貨展示イベントだ。これもなかなか面白かった。阿仁町に移住した写真家とも知り合いになった。我々の時代と違い、いまの若い表現者たちは肩から不要な力が抜け、静かで、自然体で好感が持てる。肩怒らせて、相手に弱みを見せず、パンパンに虚勢を張っていた我が青春時代と重ね、彼らの伸びやかさ、軽やかさがうらやましい。

5月22日 仙台に来ている。一仕事終えて関係者と食事、2次会まで付き合ったらなんと夜中の1時を回っていた。ホテルでメールをチェックしてから就眠。今朝はまだちょっと酒が残っている。これからメガネ屋さんでメガネを作ってから秋田に帰る予定だ。夜はSシェフが新入社員やバイト君たちのために蕎麦を打ってくれる予定だ。シャチョー室宴会の若者版だ。その準備は若者たちに託してきたが、ちゃんとやれるだろうか。仙台は今日も暑い。来るときはモモヒキ着用だったが帰りは「なし」。最近、下半身が冷えると気力まで冷え切ってしまうことに気が付いた。これも老化の一種なのだろう。
(あ)

No.748

貧乏の神様
(双葉社)
柳美里

 月刊『創』との「原稿料未払い騒動」やり取りを完全収録、という宣伝惹句で購読してしまった。払わなかった雑誌編集者側の言い分は業界紙などで読んでいたが、被害者(著者)側からの言い分も聞きたいと思っていた。なるほど、こういうことだったのか。新聞記事などでは当たり障りのないように事実関係が報じられただけだったが、本書を読むと著者側の切迫感というか舞台裏で進行していたものの実態がよくわかった。ひとつ理解できないのは、何年も連載を続けているのに、なぜ著者は執筆をある時点で見切りをつけて拒否しなかったのか、という点だ。未払いの金額も両者の間では隔たりが大きすぎるのも気になる。著者側は損失額を1千万以上と見積もり、けっきょくは和解した金額がその10分の一。この大差は気になるところだ。本書は「芥川賞作家困窮生活記」というサブタイトルからもわかるように前半部は困窮生活エッセイになっている。こちらの「貧乏話」に切実感があるので、後半の未払い騒動記がハラハラドキドキで読めてしまう。著者には『命』や『8月の果て』といったベストセラー作品がある。よく話題になる作家だし、知名度もある人だ。貧乏とは縁がない人と思っていたのだが、亡くなった劇作家であり内縁の夫だった東由多加のがん治療や葬儀費用に、蓄財は消えてしまったのだそうだ。なんだか一生懸命な人だ。彼女の小説も読みたくなってしまった。

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