Vol.750 15年4月11日 週刊あんばい一本勝負 No.742


はやく基準値をクリアーしたい

4月4日 月に1,2回、Sシェフと2人、事務所で料理会をやる。さびしい男2人の食事会というのとはちょっと違う。毎日、夫婦の3回の食事をつくるSシェフが、旬のおもしろいレシピを考え付いた時、これはすごいと思った食材を発見した時にのみ開かれる「お披露目」料理会といったほうが正確だ。先日のメニューはこうだ。メインはチカとマグロのフライ。ソースをかけて食べる。しめサバ炙りとタラ肝の大根煮、サイドはウド炊き込みとレンコンきんぴら、漬物は大根ビール漬。この試食料理会の段階で2度と作らなくなるレシピもあるようだが、ほとんどは事前の仕込みに時間をかけ、丁寧に愛情を込めて作られているので、まずいはずがない。調味料や天ぷら油、鍋釜もコンパクトに収納してSシェフは持参するのだから何をかいわんや。私が用意するのは場所と酒だけ、情けない。

4月5日 雨の山も悪くない。今日は太平山中岳の予定だったが、あいにくの雨。直前のネット情報では思ったほど雨雲のかかりはひどくない。思い切って決行。雨は大丈夫だったが女人堂前から強風が吹きはじめ、中岳は中止。登山口まで降りてランチ。家に帰ってもまだ2時前だったので一人昼酒。ビールが美味い。なんとなく歩き足らず、飲みたらなかった、ほろ酔いのまま傘をさし川反までお散歩。古本屋で本を買う。自分のところで出した本だ。うちに在庫のないものを古本屋で買う。なんだか変な気持ちになるが、ま、これもありか。山王近くまで歩いてジ―パンの裾がビショ濡れ、疲れてもきたのでタクシーで帰宅。まだ夜の7時前だった。今日はもう寝よう。

4月6日 4月になってしまった。世間で言う新年度だが、こちらにとってお役所年度は関係ない。でもいやおうなく新年度の影響はいろんなところに出てくる。今月はやけに飲み会が多い。これも新年度のせいか。花見会にワイン会、鮎のテンプラ会に北海道出張、来客予定も少なくない。5月連休前の駆け込み用事というやつなのかなあ。仕事は全然忙しくないのに、それ以外の雑事が目白押しというのも困ったものだ。昨日もそうだったが、最近は一人で冷蔵庫の残り物を肴に酒を呑むのが楽しい。ビール1本(500ml)、焼酎1杯、ウイスキーのストレートとハイボールを各1杯ずつ。肴は漬物にピーナツにイワシの缶詰、これでヘロヘロに酔ってしまった。他人の目を気にして緊張しながら呑む酒は美味くない。

4月7日 「漫画を読んでいるとバカになる。本を読みなさい」と親や教師から言われて育った世代だ。書籍は中身を見ないで高額なものでも買えるが、漫画はどんなに安くても買うまでかなりの勇気が要る。最近の映画は漫画を原作にしたものが多い。だから極力観ないようにしている、というほどだから根はけっこう深いのかも。漫画の好きな政治家なんて想定外だ。で今週、『京都「トカイナカ」暮らし』、『野武士のグルメ2』の2冊の漫画本を読んだ。どちらも活字では描けない微妙な世界を描いていて面白かった。とくに最近の「コミック・エッセイ」は、作家でいえば阿部昭や黒井千次なみの私小説風何も起きない物語まである。侮れない。でも漫画で阿部昭の世界を描かれてもとまどうばかりだ。でも、つげ義春の「ねじ式」の例もあるか。

4月8日 夕方前に散歩をしていたら自転車に乗った若者3人と小路で出くわした。おだやかにマイクで自分の名前を連呼している県議選候補者だった。その控え目さに好感が持てた。以前に公用車をつかわず自転車で市役所に通うことを公約にした市長候補がいた。その人は当選すると知らんふりで公用車を使い回し平然としていたらしい。こんな程度だから、どこまで信用していいのか分からない。革新であれ保守であれ、とりあえずは選挙運動は静かなほうがいい。選挙掲示板をよく見ると「民主党」という政党名を明記した候補者が一人もいなかった。名前を出せばマイナスと考えているのだろうが、彼らの行動が今の好き放題政権を生み出した元凶だ。反省の意味を込めて真正面から政党名を名乗るのが筋だと思う。

4月9日 どちらかというと「安かろう悪かろう派」で安売りには抵抗があるのだが、友人のSシェフの生活の知恵を駆使した100円ショップ利用術をまじかにみて少し信条が変わった。自舎本をヤフーオークションで売るようになったのがそのいい例だ。毎日1冊平均、ヤフオクで本が売れる。ヤフオクを使いだしたきっかけは、自宅書斎用椅子をヤフオクで買ったこと。これがほぼ新品だったことに大感激、いい買い物をした。椅子はハーマンミラーで、仕事場もシャチョー室もすべてこの椅子だ。正価は一脚14万弱で、ヤフオクではなんと7万円(送料8千円とられたが)。次はシェーカー家具のロッキングチェアーが欲しいのだがヤフオクに出品はなしだった。出てくるまで待ってみるか。椅子が好きんなんです。

4月10日 連日好天で気分がいい。単純なもんだ。冷え込みもけっこう厳しいが、カーディガンにマフラーという春っぽいファッションで散歩できるのがうれしい。昨夜は夕食後に2回目の散歩に。夜の街を徘徊しているうち小腹がすき、お銚子2本にうどんを食べてしまった。今朝の体重計がキョーフだったが、そうたいして変化はなくホッとした。それも当然で昨日は2回の散歩で2万歩以上歩いている。1歩の歩幅を60センチとして12キロ余歩いた計算だ。これで太ったら問題だ。自分がデブかどうかの基準は、最新の体重(K)を身長(M)×身長(M)で割る計算法を利用して判断する。この値が「25」を超えるとデブだ。現在は26ぐらいだから誰がどう言おうとれっきとしたデブだ。早く基準値をクリアーしたい。その日を夢見ながら生きている今日この頃です。
(あ)

No.742

解放老人
(講談社)
野村進

 認知症の本が目白押しだ。新聞社系から出ている本が少なくないのは、地域社会との関わりから深いためかもしれない。その新聞社系出版物の多くは医療的な見地から論じているものが多く、いまひとつ興味が続かない。少し難しいのだ。私自身も義母が認知症で介護施設に入っている。その認知症の初期、「金を盗られた」「娘がいじめる」といった被害妄想の塊のようになり手がつけられなかった。施設に入ってからもいろいろ問題を起こし、逃亡騒ぎで夜中に呼び出されたこともあった。最近、おとなしくなったのは施設に慣れたというより、薬や環境順化がすすんだためかもしれない。本書は面白い。山形県にある重度認知症治療病棟に長期間密着取材したルポである。登場人物ひとりひとりが劇中人物のように生き生きと描かれている。と同時に認知症を「救い」という角度から見つめ直そうとする著者の目線がいい。よく知られていないのだが認知症の人は「がんの痛みを感じない。死の恐怖から無縁。末期癌にも苦しまず永眠できる」というアドヴァンテージ(?)がある。これらは認知症の研究家も認めていることだそうだ。どちらがいいかという問題ではない。認知症をこうした肯定的な視点から見たときに見えてくる「豊かな体験世界」こそ、本書で著者が伝えるたかったことなのだ。著者は高名なノンフィクションライターだが、ここ数年、精神病棟や脳に関する執筆が多い。一朝一夕に「認知症」をテーマにした本ではない。そのことが行間から伝わってくる。

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