Vol.713 14年7月26日 週刊あんばい一本勝負 No.706


山と本とクロスバイク

7月19日 自分でも驚くのだが、昼はまだリンゴを食べている。2年近くリンゴと自家製カンテンだけのランチを、飽きもせず、倦みもせず、自棄にもならず、続けている。
ときどき、めん類や中華系、炭水化物あぶら系をモーレツに食べたくなるが、我慢できるようになった。逆に旅先では、無性にリンゴとカンテンが恋しくなる。この時期のリンゴはスーパーで「ふじ」を買う。小ぶり4個で500円弱だからかなり高いがシャキシャキして味は悪くない。冷凍なのだろうが、夏場の「ふじ」もそうなめたものではない。1回で2個だから1週間に14,5個消費する。週2回は買い出しに行かなければならない。これがちょっとしんどいが、仕事の気分転換にもなっている。私は死ぬまでリンゴを食べ続ける気なのだろうか。

7月20日 山に登るようになって、「爪をこまめに切る」ようになった。ちょっとでも伸びると気になってしょうがない。特に足は、下山時に山靴による圧迫が半はではない。爪ごとはがれてしまう危険がある。毎週、山に登る前日に爪を切る習慣ができた。習慣化すると爪のことが気になって、こまめに手入れをする。山登りの技術や体力は事前の準備がスムースに運ぶようになると、まちがいなく飛躍的に向上する。服装や装備が万全だと、登山の不安の半分は軽減できたも同じだ。これはどんなことにも言えるのだろうが、まずは準備をちゃんとすること。これは山で学んだこと。自分にとってものすごく大事な「教訓」だが、爪切りもその準備のひとつだ。

7月21日 3連休最後の休日は朝3時起き。夏とはいえ外はさすが真っ暗。4時ちょっと前から東の空が明るみはじめた。こんな早起きは人生のなかでも片手で数えられるくらいしかない。今日は鳥海山。鉾立口から新山までだが、なんと9合目付近で突然の雨。大物忌神社でランチをとり、滑りそうな岩場山頂は断念した。リーダーの正しい判断だと思う。今回の8時間近い山行で、神室山のトラウマ(痙攣)がようやく薄らいだ。けっきょく週一回十分に休養をとって山に行く、ということが大事なサイクルだ。神室山の時は、2日前に雨の田代岳に登っている。あれが筋肉に大きな負担をかけてしまった。過信は怖い。山に登っていると腕やふくらはぎに生傷が絶えない。この傷が昔に比べて治りづらくなっていることに最近になって気がついた。年をとるということはこういうことなのだ。

7月22日 山行翌日は気分がいい。身体にまとわりついた1週間のよどんだ空気が一掃され、生まれ変わった「新しい自分」になっている。よし、また1週間がんばるぞ、という気持になる。でも今日はヒマ。とりあえずスケジュールは真っ白。机上にシンプルな装丁の本が1冊。ずっと読まれるのを、身をよじって待っている。読むのは「いまでしょう」と言いたげだ。岸政彦『街の人生』(勁草書房)。外国人ゲイ、ニューハーフ、摂食障害、シングルマザー風俗嬢、ホームレスなどの「普通の人生」をインタビューしたものだ。こんな本を出版したい、自分でも書きたい、と思っているジャンルの本だ。今日は絶好のチャンス。ヘンな電話や不意の来客、落ち込むメールや気分を害するファックスがないことを祈り、よし、読むゾォ〜。

7月23日 期待しすぎだった。「街の人生」はまったくダメ。こんな本もある。ひとえに自分の「読み」が甘かったと深く反省。もう一つ、正式なタイトルは忘れたが「長生きふくらはぎ」の本もインチキの類かも、とTVCMを観て思った。利に聡い通販がマッサージ器CMでその医学的効用に全く触れていない。過大広告バッシングを恐れているからだろう。ふくらはぎをもむだけで長生きできるなら、健康機器通販にとっては「福音」以外の何物でもない。TVや新聞だと影響が大きいので問題になるが、活字ならまあ何を言っても大丈夫、というのも、ちょっと情けないが。現在の活字の世界の影響力というのはその程度なのかもしれない。オレオレ詐欺にひっかかるなんて他人事と思っていたが、いよいよこちらも危なくなってきた。

7月24日 アンケートと称してインチキ商品のDMが届くことがある。ここ数日、中小企業庁から別々の趣旨のアンケートDMが届いた。同じ省庁なのに返送先住所が違うのも微妙だし、もしかして同じ住所リストを使われたかもしれない。今日は社会保険庁から健診データの提供同意を求める郵便物。先日は経産省からもきた。インチキを疑うべき種類のものとは違うのだろうが、こうした官庁の安易なアンケート調査にはけっこう苛立つ。記述に時間がかかるし、なにより説明マニュアルの文章が小難しくて何を言っているのかよくわからない。さらに、この個人情報が悪用されるのでは、という恐怖感もぬぐい去れない。できればアンケートは即ゴミ箱入りにしたいのだが、それもまた心が痛む。でも、やっぱりこの公官庁アンケートの多さは同じリストを使い回している可能性がある。

7月25日 近所のサイクル・ショップに顔を出し、最新の自転車事情のレクチャーを受けてきた。いやはやすごい。専門ショップなので一般用は置いてない。店主のジュンちゃんはマウンテンバイクを担いで南米アコンカグア単独登頂を果たした(世界で2人目)冒険家だ。自転車は大きくロード系、MTB系、中間のクロスバイク系の3つに分けられる。年甲斐もなくクロスバイクが欲しいと思っているのだが、目移りするほどバリエーション豊富だ。値段も20万クラスが当たり前。15年近く前にジュンちゃんの店で買ったMTBが実はまだ健在で現役だ。当時10万円以上した代物なので外見はボロだが走りは悪くない。さてさて、どうしたものか。新しい自転車を買ってもいい時期ではあるのだが……。
(あ)

No.706

山伏と僕
(リトルモア)
坂本大三郎

 30歳で山形県羽黒の山伏になった若者の物語だ。書名を見ただけで買い、だが内容はイマイチだった。著者が悪いわけではない。もう少し深く踏み込んだ内容を期待したのだが、職業として山伏を選んだわけではない。経験が浅すぎる。このへんが限度なのかもしれない。そこにはちょっと不満が残るが、著者の本業はイラストレータだ。ほとんど思いつきで山伏修行を始めてしまったことも正直に告白している。もともと山伏の起源はよく分かっていない。古代からあったアニミズムの原始自然信仰に、後から伝わった仏教や儒教、神道が相乗りし独特の修験道が生まれた、といわれている。その昔、山伏は薬草を自在に使えた知識豊富な医師であり薬剤師。四季の移り変わりや自然に精通した聖者でもあり自然学者でもある。さらに宗教家でもあり祈祷師になり、芸能人の役割も兼ねていた。山に入って修行するのはそうしたことを習得すること訓練の場でもあったのだ。舞台となった羽黒山や月山には、私も何度も行ったことがある。山伏を見かけたこともあった。その修業の厳しさは噂に聞いていた。本書でその舞台裏が明らかになるのを期待していたのだが、高校のスポーツ合宿のような雰囲気の修行光景に、まずは驚いてしまった。期間も短く、お坊さんの地獄の千日行などとは比較にならない。

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