Vol.360 07年8月4日 週刊あんばい一本勝負 No.356


7月はよく遊んだなあ

 一向に暑くならないけど雨も降らないなぁ……と思っていたら8月になったとたん梅雨明け「宣言」です(宣言にカギカッコしたのは、抗議が怖くて気象庁がこの言葉を使うのをやめたため)。
 それにしても7月はあっという間に過ぎてしまいました。新刊が3冊できてきて(「南部曲が家読本」「写真集 秋田」「食文化あきた考」)、山や森に6回入り(白神岳岱・薬師岳・早池峰山・笙ケ岳・物見山・鳥海・鶴間池)、エアロビには4回しかいけず、選挙があって、事務所の壁面工事をしているうち、月日は飛び去っていった1ヶ月間でした。
岩手山をめざす風の又三郎(種山ケ原)
事務所の2階から工事中の人が丸見え
 こういう風に具体的に列記するとよくわかるのですが、7月は遊んでばかりいたのが、よくわかりますね。外で遊ぶようになってよくわかったことがあります。無明舎をはじめて30数年、遊びや息抜きといえば、酒を飲むか、東京に行くぐらいがせいぜいでした。スポーツクラブや山の仲間とわいわい言いながらストレスを発散する「遊び」は、実は今はじめて体験していることです。
「よく遊んでばかりいられるなあ」と仕事仲間からは言われますが、30数年で初めてのことですから、まあ、大目に見てください。それに身体にいい事をやっているだけですから、趣味と実益を兼ねたもの、と本人は自分に納得させています。8月は世間的には夏休みですので、これはおおっぴらに遊んでも誰も何も言いませんよね。お盆に東京出張がはいっていますが、週末はたぶん、山にいます。
(あ)
やる気のなさが満ち溢れている近所のラジオ体操風景
幻想的な鳥海・鶴間池のブナの森

No.357

健全なる精神(双葉社)
呉智英

 この著者の本は新刊が出るとほとんど購入する。本書のタイトルは本多勝一の「貧困なる精神」のパロディなのだろう。本文にはその旨のことは一行も書いていないが、たぶんまちがいはないだろう。装丁はいつもの日下潤一、相変わらずキレも品もいいブックデザイナーだ。
 中身は帯にあるように「腐った常識・病んだ良識」に挑んだエッセイ集だが、後半はほとんどが朝日や産経に連載したコラムを収録したもの、彼の本にしては同じような内容が重複していて、少々ガッカリ。前半の団塊世代論や坂東眞砂子の「子猫殺し」論は呉節炸裂、いつものようにページをくくるのが惜しくなるほどの「濃さ」とスピード感がある。明治の思想家内村鑑三の「中国人(山口や広島の人たち)と名古屋人の類似性」を指摘した文章を読み、『中国人(これは外国の)と名古屋人』というトンデモ本を、その間違った前提のまま書き上げてしまった岩中祥史のことや、『日本語を叱る!』という言語学の加賀野井秀一の啓蒙的な本が、現代のカタカナ語や漢文風漢語を「言葉の厚化粧」と断じて「すべからくこうした厚化粧はごめんこうむりたいものだ」と書いていあるのを笑い、「すべからく」の用法がまったく逆、と指摘するあたりは、実は前著(「言葉の常備薬」)にも出ていた。それでも、こうして再読しても著者の面目躍如たるものがあり、楽しめる。

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