Vol.1111 22年4月16日 週刊あんばい一本勝負 No.1103

腹が立つなぁ

4月9日 Sシェフと2人の大学生を連れて明日は貝吹岳にいく予定だ。山はまだ雪がたっぷりあるので若い人のために今日は朝からずっとワカンやスノーシューの「履き方」の練習。先日の保呂羽山も子供連れだったので「履き方」を教えたのだが、今ひとつうまく教えられなかったので事前練習とあいなったわけだ。これでSシェフに怒られることなく着脱指導が出来そうだ。

4月10日 久しぶりの貝吹岳。ここを登るのは5年ぶりくらいかもしれない。雪もけっこうあったので用意万端スノーシューでスタートした。でも堅雪なのでツボ足でも大丈夫なことが分かり、途中からツボ足に。尾根にたどり着いたところでランチをとり、頂上までは行かずにそこから下山した。天気も良く雄大な駒ケ岳や岩手山もまじかに見え迫力満点。女子大生たちは初めてのスノーシューやカンジキでの雪上ハイキングに感動していた。ちなみに2人の女性の出身地は福井と大阪。大阪の彼女は8月にはクロアチアへの留学が決まっている。

4月11日 好天続きで気分がいい。今日からまた1週間、気持ちがダレないように気を引き締めていきたいものだ。目下の最大の悩みは「体重増」。暴飲暴食はしていないのに体重だけが増え続けている。逆流性食道炎のための薬をのみ続けているが、この薬が太る原因ではないか。なにしろ胃の調子が頗るいいのだ。スルスルと食べものが胃に収まっていく。太る原因をこの薬になすり付けると、すべてが腑に落ちるのだ。

4月12日 同年代の友人たちはおしなべて「忙しい」人たちが多い。友人たちの多くは70台で現役をリタイアした人たちだ。こちらはいまだ現役選手なのに、時間はいつでも余っている。忙しくないのだ。この彼我の差はなんなのだろうか。たまたま今日は午前中に大手病院に3か月分の逆流性食道炎の薬をもらいに行く。午後からは歯医者の予約が入っている。こうなると他の予定はすべてキャンセルだ。なるほど、みんなこの病院予約というのがけっこう大きな比重を占めているのかも。

4月13日 テレビの番組改編時期だからだろうが、NHKの中川安奈という若いアナウンサーの名前がやたらと耳に飛び込んでくる。この名前を耳にするたび、ちょっと過剰に反応してしまう。私にとって「中川安奈」といえば、14年に49歳で亡くなった女優の中川安奈のことだ。彼女はドイツ系日本人で亡くなった時、その出自を知って驚いた。まず夫が日本を代表する演出家・栗山民也だったこと。さらに彼女の父方の祖父が洋画家・中川一政で、母方の祖父が演出家・千田是也だ。これはちょいと尋常な人脈ではない。こんな絵にかいたようなサラブレットがいるのだ、と感銘した覚えがある。

4月14日 小雨模様の午後、いつもの散歩コースで下校途中の倒れている小学生(男)に遭遇。走って転んで強く左ひざを打ったようで立ち上がれないでいた。近くの学童保育まで行く途中だというので、その小2の男の子を負ぶって歩き出したが、手に力がないのでズルズルと背中からずり落ちる。やむなく行きつけの理髪店に運び込み、そこで湿布薬をもらい小休止した。そこからは学童まで手をつないでゆっくり歩き送り届けた。

4月15日 映画「M」は1920年代制作のドイツ映画。モノクロームのトーキーだ。少女連続殺人事件をめぐる民衆の狂気を描いた秀作といわれている。これがアマゾンプライムで観られるとわかり、さっそくダウンロード。デジタル画像処理された映像はシャープで美しい。なのだが日本語字幕がチンプンカンプン、まるで日本語になっていない。AIによる自動翻訳だったのだ。腹の立ったこともう一つ。免疫学者として高名な多田富雄の闘病記『寡黙なる巨人』(集英社文庫)をアマゾンユーズドで買い読み始めた。のっけから意味がまるで通じない。本文のいたるところ、ごっそり複数ページが切り取られていたのだ。いくら古本とはいえ、こんな本を売ろうとするクズ人間がいることに腹が立つ。すぐに新刊を買いなおしたのだが、生と死の壮絶な戦いを描いた感動的な名著だ。こんないい本を読む人間が、一方で切り刻んだ欠陥本を平気で人に売る。その心根の下品さが理解できない。 
(あ)

No.1103

国民の底意地の悪さが日本経済低迷の元凶
(幻冬舎新書)
加谷珪一

 幻冬舎らしいと言えばそれまでだが、何ともすさまじい露骨な書名だ。もちろん羊頭狗肉の内容はないのだが、著者は書名とは遠い、知的で穏やかな印象の評論家だ。過去30年間、日本はほぼゼロ成長が続き、賃金は下がる一方だ。成長できなくなったのは日本企業の多くがIT化やグローバル化という世界の潮流を見誤り、輸出競争力を大きく低下させたためだ。先進国は製造業がダメになっても国内の消費市場を原動力に成長を持続してきたが、日本だけは国内消費で成長できない状態が続く。その理由は日本社会の不寛容で抑圧的な風潮が個人消費を抑制しているため、と著者は言う。スパイト行動(悪意、いじわる)とは自分の利益が減っても相手を陥れようとする行為で、日本人に顕著だそうだ。長時間労働やサービス残業などはその典型で、他人に対する誹謗中傷やパッシングに表される日本特有の社会風潮も同じだ。こうした風潮がコロナをきっかけにさらに厳しくなった。自国の技術を常に過大評価し、逆に他国の新しい技術については過度に軽視し、貶める傾向が顕著になる。過去の成功体験から来る奢りや最新技術の軽視、科学やデータを無視した意思決定など、改善されることなく今に至るわけだが、これだけ明快な論理で日本経済を分析してくれると、実に説得力がある。

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