Vol.1045 21年1月9日 週刊あんばい一本勝負 No.1037

風速36メートルを肌で体験!

1月2日 新年早々パソコンがフリーズ。10分おきに動作が止まってしまうので仕事にならない。買い替えるか、専門家に見てもらうか、いずれにしても早めに対応を考える必要がありそうだ。「今日の出来事」は昨日見た初夢のことを書こうと思ったのだがパソコンがうまく動いてくれないとうまく考えがまとまらない。この日誌はサブのモバイルPCで入力したものだがサブが使えたことを幸せに思うしかない。

1月3日 今年初映画はヴィスコンテ監督の『家族の肖像』。名作の誉れ高い作品だが70歳になった老人にはちっとも面白くなかった。本は正月用に買っていたものに食指が伸びず保険用にストックしておいた中島らも『ガダラの豚』(集英社文庫)。超能力ブームや新興宗教を描いた世紀末大団円スペクタクルで、まだ1巻目を読了したばかりだが面白い。3巻本なのでまだ2巻残っている。楽しみだ。

1月4日 仕事始め。年初め早々から4本の新刊があわただしく動き出す。印刷所、デザイナー、著者とうちの間をゲラが毎日のように行き来する。仕事をしているのが一番の「休息」というのもなんだかうら悲しい。

1月5日 今日は「初詣登山」。近所にある(ザブーンの後方)小さな妙見山。山頂の神社でお参りして、温泉に入り、昼前には帰ってくる予定だ。数年前のお正月、ここで銃を持ったハンターとバッタリ会ったことがあった。えっ登山道のある場所で銃を撃ってもいいんだ、とショックを受けた。年末、ある県で登山者がシカと間違われて発砲され救出された事件があったばかり。少し緊張する。それでは行ってまいります。

1月6日 山仲間で俳句がはやっている。最近の句題は時流にのってコロナをテーマにしたものが多い。ふっとと思ったのだが「コロナ」は冬の新しい季語に採用されないのだろうか。というのも俳句には「コレラ船」というのが夏の季語がある。昔、感染症の流行で船内隔離した時に生まれた季語だそうだ。空港で検疫所は世界中「quarantine」。イタリア・ヴェネチアの方言が語源で「40日間」という意味だ。ヴェネチアは14世紀の黒死病の蔓延で海外からの船を強制的に港に40日間停泊させる法律を作った。それに由来しているのだ。コロナが「季語」になる日も遠くはないのかもしれない。

1月7日 書斎用に日めくりカレンダーを常用している。今年は浮気心が出て月の満ち欠けを絵で示した日めくりを買った。これが大失敗。日付数字がまるで目に入ってこないのだ。昨日、駅ナカ・ロフトに行ったのだがシンプルな日めくりは売り切れ。日付が一番大きい「難読漢字カレンダー」を買った。半分は読めるはずだと思ったのだが「1月6日、論う」「7日、薺」「8日、為難い」と、まるで読めない漢字のオンパレード。一気に自信喪失してしまった。でもこれは案外役に立つ。読めなかった日付を保存、あとから復習ができるではないか。来年の今頃はもう立派な漢字博士を名乗ってるかも。

1月8日 経験したことのない暴風雪が吹くとのことで好奇心から夜の街を散歩。身体が浮き上がるほどの暴風で、顔に当たる吹雪が痛くて苦しい。これが毎秒36メートルの暴風雪なのか。安全のため腕に光源ライトをまき、分厚いネックウォーマーに耳あてという重装備だったが、それでも寒い。1時間で歩くコースを1時間半かけて歩き、家に帰ってきた。体を温めようと熱い風呂にはいったとたんバシッと音がして電気が止まった。急いで山用の緊急装備をかき集め、まずは防寒対策。一番怖いのは寒さだ。ストーブもテレビも役に立たないので手廻しラジオで必死に情報を集めるが緊急事態宣言のことばかり。暴風雪被害はローカル・ニュースのみのようだ。あきらめて布団に入り、ヘッドランプで本を読みながら寝入ってしまった。電気が復旧したのは今日のお昼。救いは昨日できてきた新刊を無事に著者のもとに届け終わったあとだったことだ。
(あ)

No.1037

モンローの皺
(現代写真研究所出版局)
英伸三写真集

 写真集のサブタイトルは「ある城下町の行方」。著者の英氏の奥様の実家がある大分県中津市が舞台だ。そこに行くたびに世話になる義妹夫婦のコンビニ店向かいに雑居ビルがある。その壁にはマリリン・モンローの写真が飾られている。まるで町内のきれいなお姉さんのように。数年後、そのモンローの顔に異変が起きた。雨風にさらされ、顔にしわが寄っていた。さらに時間が流れ、町の様子も変わりモンローの顔は白いペンキで塗りつぶされていた。何か底知れない力が街を空っぽにしていく……こんな地方都市に視点を定め、長い時間をかけて撮影したのが本書だ。英さんの写真は安心して見続けることができる。心穏やかで心根の優しさが画像を通じて伝わってくる。当たり前の風景を、誰かを驚かせるために撮らないプロの熟練と洗練を感じるのだ。何度見返しても飽きずに、観るたびに新しい発見がある。何気ない日常生活の断面にいつも印象的な「赤色」が写っている。本書にライターとして参加している妻の愛子さんの文章も地元の人ならではの味がある。出版元は日本リアリズム写真集団(JPR)付属の写真学校だそうだ。

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