Vol.1044 21年1月1日 週刊あんばい一本勝負 No.1036

明けましておめでとうございます

12月26日 正月に読む本を求めて駅前ジュンク堂へ。結局買ったのは夏目漱石の文庫本2冊だけ。事務所に帰ってネットでブック・サーフィン。奥田英朗の新刊『コロナと潜水服』、内澤旬子『島へんろ記』も即買い。今年の話題作『自転しながら公転する』から『大名格差』もクリック、評価の高い『パチンコ』上下はちょっと重そうな内容のでパス。ユーズドでは『長谷川利行展―放浪の天才画家』もゲット。箸休めに出口治明の文庫本も3冊ほど買う。

12月27日 週末は朝10時半起き。「ヒマ」とか「ほどほど」とか「休み」といった言葉に過剰に反応する。それらは死を意味する言葉でもある。ちょっと大げさだが、まあそんな感じで生きてきた。心のどこかで「70になったしグダグダしてもいいんじゃね」という気持ちもあるのは確か。でもいまだに朝寝をして時間を無駄にしたという罪悪感が残るのだから救いがない。

12月28日 朝の会議を終えて歯医者へ。昨夜はSシェフと長老Aが訪ねてきて3人でシャチョー室忘年会。Sシェフのカキフライ、エビのアヒージョ、私のローストビーフが肴だ。赤ワインも美味しくて2本開けてしまった。それにしてもかかりつけ医というのはいいもんですねえ。一時間ほどの治療で全部の歯のクリーニングまでやってもらいスッキリ。いい年を迎えられそうだ。

12月29日 今日が仕事納め。明日からの豪雪予報がちょっと心配ですが、ギリギリ秋田、山形はそれほどひどくはならないようなので少しホッとしています。休みの間、さぼっていた原稿書きを進めたいのですが、時間がたっぷりあると逆に集中できないというのが悩みです。切迫感と集中力が削がれてしまうんですね。まあいろんなことがありますが、大変な1年でした。来年もよろしくお願いします。

12月30日 この期に及んでもまだ今年の10大ニュースを手帳に記せずにいる。家に閉じこもっていることは特別異常なことではない。私的にはよくよくある日常的だ。といっても社会との接点が極端に薄くなりつつあるのは確か。新しいことにチェレンジする勇気が乏しくなったことも事実。いろんなことが縮小していき、大きな変化がない暮らしがだらだらと続いた1年としか言いようがない。人との出会いもおっくうに感じ、1歩前の新しい風景を観ることに興味が失せていく。これが年をとるということなのか。刺激は欲しいが怖さのほうが勝っている。ボンヤリとした閉塞感の中を漂っている。

12月31日 この1年の10大ニュースを考えていたら、けっこう地味ながらも、いろんな出来事があったことを思い出した。まず第一に「お酒を呑まなくなった」。なにがなんでも?みたいという欲望が消えかけつつある。それと何十年も惰性で服み続けていた胃薬と便秘薬もきっぱりやめた。毎朝のルーチンだった体重計に乗るのも同時期にやめた。数字を気にして神経質に日々を送るのに疲れた。体重を気にしなくなったら、なんだか小食になった。

1月1日 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。いろんな余計なことをそぎ落とし、シンプルで単純な、これまでと変わらない、普通の暮らし方ができればいいと思っています。
(あ)

No.1036

昭和45年11月25日
(幻冬舎新書)
中川右介

 ペンフレンドの関西の友人から手紙とともにこの本が同封されてきた。三島由紀夫没後50年で、いまよく売れているらしい。三島にほとんど興味がないので自分で買う本ではない。本好きの友人の強い勧めなので読んでみたのだが、これが面白かった。なるほどこんな構成の本の作り方があったか。過去の事件を忠実に再現するには、もしかするとこれに勝る方法はないのかも……という編集者的な視点からの驚きもあった。三島の死後に発表された文壇や政界、芸能界からマスコミまで百人以上の公表された記録を丹念に拾い集め、その証言を時系列に再構築、「事件」と「世相」と「時代」をあぶりだしたノンフィクションなのだ。この記述方法を考えついた時点でこの本は成功したといっても過言ではない。たまには、こうして他者が勧める本を読むのもいい。自分の偏狭な読書の幅や傾向の間口が確実に広がる。友人に感謝である。しかし冷静に読後感を振り返ると、やっぱりこの本は少し「弱いな」という印象を持ち始めた。深みがない。10年前に出た本なので現代性が薄い。書名が「1970年」でなく「昭和45年」であるのも疑問だ。たぶん、いま発売されたとすれば書名は「1970年」になったような気がする。まあこのへんは編集者としての印象批評に過ぎないのだが。

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