Vol.780 15年11月14日 週刊あんばい一本勝負 No.772


ずっと琵琶湖を見たかった

11月7日 家のドウダンが真っ赤。これぞ紅葉と見得を切っているみたいだ。通りすがりの人の表情がドウダンの前で変わる。事務所のイチョウも昨日あたりからようやく本格的に散り始めた。四方に散ると近所迷惑になる。そのため早くから飛散防止ネットをかけているのだが、そこからもれて葉っぱはかなり遠くまで飛び散る。山の紅葉はもう1か月も前に見ごろが終わっている。同じ地域でも山と里と街では時間差がある。自然とは「脳」のコントロールのきかない世界、といったのは養老孟司さん。もっとも「自然」なものは人間の身体だ、というのは確かだ。

11月8日 今日から関西経由で横浜、東京と3泊4日の出張。琵琶湖1周も予定している。朝廷(京都)を生み出した地勢的な要因である琵琶湖をちゃんと見てみたい。横浜は図書館の大きなイベントがありシンポジュームに出席する。進行中の仕事は全部中途半端なところでグルグル迂回を繰り返している。こっちのほうが心配なのだが機が熟すのをじっくり待つしかない。このへんはこれまでの経験から「拙速」が一番無謀であることがわかっている。ただもうひたすら待つしかない。昔に比べれば我慢強くなった。

11月9日 朝から新幹線で東京に出て、乗り継いで京都に着いたのは午後4時。ホテルに荷を解いて約束のレストランに駆け付け、そのまま夜中まで暴飲暴食。さすがに今日は二日酔い。昨夜は珍しいものを食べた。白トリュフだ。白トリュフのフルコースなるイタリアンを堪能。こんな機会は生きているうちはないかも。身体がびっくりしたのか今朝は身体からトリュフ臭が抜けず、身体が重い。上品なニンニク臭のようなものだが、けっこう強烈。今日は琵琶湖周辺を電車で回った。いろんなところで汗をかいたせいか、ちょっぴり風邪気味だ。少し動くと汗が出る。汗がトリュフ臭い。

11月10日 出張3日目は横浜。図書館総合展の分会のシンポジュームに参加。会場で「本の学校」のNさんと久しぶりにお会いする。四国の出版社のOさんにも初対面(名前は知っていたが)。そうか、こういう会に出るといろんな人と出会う機会が増えるんだ。昨日から熱っぽい身体はそのまま。風邪薬と栄養剤でごまかしているが、ひっきりなしに汗が出る。早く宿に帰ってやすみたい。

11月11日 昼の新幹線で東京を立ち夜6時には秋田に帰ってきた。朝、ホテルで目を覚ましたら身体から「熱」が抜けていた。食欲も出てきた。神保町から東京駅まで歩き駅ナカ食堂で大盛り定食。「大盛り」というのは久しぶり。今回の出張で特筆すべきことは「本を1冊も読まなかったこと」。身体が熱っぽく体調がわるかったせいだ。電車の中ではもっぱら目をつむって寝ていた。明日からはまた普通通りの仕事漬けの日々になる。

11月12日 体調が思わしくなかったのだが、水分は十分に補給しなければ、という意識はあった。出張中、水でなくポカリスエットを1日2,3本ずっと飲んでいた。山で飲むといつも甘すぎて問題のある飲料だが平場ではおいしく飲むことができた。熱があるからなおさらだ。これなら胃液が薄まることもないし身体が水っぽくもならない。もう普通の生活に戻っている。でもまだ完全復活とはいかない。身体の芯の部分に微妙に「だるさ」が残っている。だましだましやっていくしかない。

11月13日 ずっと琵琶湖を見たかった。一度は自分の目でその広さや眺望、存在感を確かめ、そこから歴史の光芒を透かしてみたかった。その願いがかない今回の関西行きで実現した。JR湖西線に乗り湖岸を走り近江舞子という素敵な駅名の町に降りた。この町にすむ「武田浪」というこれまた大好きな陶芸家と会い、彼に町を案内してもらい、彼の工房を訪ね、お昼を食べ、湖西線で再び琵琶湖のたたずまいを目に焼き付けて帰ってきた。この湖がもたらした数々の文化や歴史の遺産は東北にも数多く残っている。広大な湖をみながら、ずっと八郎潟のことを考えていた。干拓は20世紀最大の自然破壊というある外国人の言葉が脳裏をよぎった。
(あ)

No.772

女川ポスター展全集
(河北新報社)
今できることプロジェクト編

 東日本大震災で多大な被害を受けた宮城県女川町を支援しようと、河北新報社の復興支援プロジェクト『今できることプロジェクト』の一環として行われた実にユニークなイベントが「ポスターで町を埋め尽くすこと」だ。女川の42の店舗、企業、団体のポスター200種類を、主に仙台の広告クリエーターたちがボランティアで制作したもの。この商店街ポスター展の仕掛人は電通関西支社の日下慶人。仙台だけでなく東京や東北芸術工科大学の学生も参加している。河北新報が出した本とは思えないほどしゃれて遊び心満載の1冊だ。たまたま仙台の書店で見かけて買ってきたのだが大正解だった。こんな震災本なら大歓迎だ。数あまた出た震災本のなかでも特筆すべき優れた1冊だと思う。商店街のポスターを並べただけのものが、そのひとつひとつに味があり、吹き出すほどよくできている。焼鳥屋のオヤジが「ツイッター? やってないけど、つぶ焼くよ。」とつぶ焼きの串を持った写真や、中華料理屋のお兄さんの「味に自信。オレ独身。」といったダジャレコピーが延々と続く。コピーや写真、デザインのクオリティは高い。モデルはすべて女川の商店主自身。あまりの力作ぞろいに笑い疲れて脱力してしまった。

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