Vol.354 07年6月23日 週刊あんばい一本勝負 No.350


夏のDM・岩田さんの写真集・DVDレンタル

 平年よりは10日ほど遅くなりましたが無事、秋田も梅雨入りしました。裏日本といわれ、長い冬と日照時間の短い夏、といったイメージでとらえられやすいのですが、実は秋田県は6月から7月の梅雨期にかけての日照時間は日本でも1,2番の長さを誇っています。意外でしょう。
 さて、夏のDM通信(愛読者の方々に新刊案内や舎内便りを年4回送っています)の季節がやってきました。1万通をこえる数のDMなので準備時間も経済的負担もけっこう大きいのですが、地方の書店がほとんど機能しなくなりつつある現在、DMによる読者との結びつきは以前よりも数倍重要なものになっています。ネットで新刊情報は十分、とおっしゃる方もいますが、小舎の愛読者は高齢者が多いせいか、紙に刷られた活字がいいという声がまだまだ大きいようです。くわしくはホームページのトピックスでごらんいただけます。今季の目玉商品はなんといっても岩田幸助写真集『秋田――昭和30年前後』です。あの日本写真史に残る名作、木村伊兵衛『秋田』の撮影に同行し、木村を師と仰いだ岩田さんは96歳で今も健在です。木村の撮影に同行した際に撮った2万コマに及ぶフィルムから200枚余を写真家の英伸三氏がセレクト、構成したのが本書です。これまで岩田さんの写真が公開されなかったのは、木村に対して遠慮していたためのようです(テーマが同じため)。大胆な書名(木村の写真集と同じ)をつけたのも英さんです。とにかくすごい写真集ですよ。
 このごろ県外にはめったに出ません。事務所と近場のスポーツ用具店とジムに顔を出す程度で、月に数度の県内の山歩きが最高の楽しみです。あ、映画のレンタルビデオを借りるためツタヤにもよく行きますね。でもここは、一列待機(フォーク並びともいう)のカウンターではなく横からヒョイヒョイ人が割り込んでくるので気分を悪くして帰ってくる事が少なくありません。在庫のラインナップも悪いし、行くのがいやでしたが、映画は見たいし……とジレンマの日々だったのですが、ライブドアで「ぽすれん」という宅配のネット・ビデオレンタルをやっていることを知り利用し始めました。郵送の手間ひまや送料の内訳がシステム的によくわからなかったのですが、往復利用封筒に90円の切手が張ってあり本当にワンコイン(500円)でDVDがたやすく借りられるので、驚いています。これであの割り込みツタヤに行かなくてすむと思うと、ほっとします。
(あ)
最近よく行く石井スポーツ秋田店
DVDレンタルは宅配で
今回のDM は充実してるよ

No.350

森有正先生のこと(筑摩書房)
栃折久美子

 筑摩書房は時々こうした「すごい」本を出すから目が離せない。タイトルも、著者も、言っちゃ悪いがよくある、ほどほどに有名な文化人エッセイ、といった趣で、だまされそうだが読んでビックリ玉手箱。セックス描写がないだけの、激しい大人の恋愛小説である。ヘタな手錬の小説家が創意工夫をこらして作り上げた嘘っぱちの恋愛譚でないリアリティに圧倒される。99パーセント実話によるノンフィクションだ。知っている人物の名前、よく行ったホテルや買物をしたお店や場所が随所に出てくる。自分も彼女と同じ時代を生きている、という奇妙な連帯感と臨場感が起こってくる。森有正は有名な国際的哲学者だが、彼の本は一度も読んだことはない。彼の本を出している筑摩書房の編集者だった著者の一方的な思慕から物語ははじまるのだが、装丁家として後年名を成す著者の本ですら、実はほとんど読んだことがない。それにしても恋愛においては、いくら尊敬と思慕の対象であっても(森有正クラスの男であっても)、男はどことなく間抜けで身勝手、手前勝手で恥知らず、というイメージを読者に与えてしまうのはなぜなのだろうか。もちろん著者は、偉大な哲学者の名誉を気づつけないよう細心の注意を払いながら、この物語を書いてはいるのだが。

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