Vol.196 04年6月5日 週刊あんばい一本勝負 No.192


新連載2本はじまりました

 トピックスと「んだんだ劇場」に新連載がはじまりました。2本とも著者は千葉に住む加藤貞仁さん。小舎の『北前船』や『箱館戦争』などの幕末・明治ものを得意分野とするフリーライターです。劇場にはこれまで本を書くために全国津々浦々に取材で歩いた際のこぼれ話などを書き下ろす『幕末とうほく余話』、もう一本、トピックスのほうは日記です。歴史ものに強いだけでなく彼には野菜作りや食に関する深い知識や実践があり、その食や野菜作りの日常生活を書いてもらう『房総半島スローフード日記』です。

自宅の畑で愛犬モモと
 同時進行企画ですので、秋田と温暖な房総の比較も面白いと思います。最近出した『箱館戦争』が好評で、今年中には続けて『藩主の墓とうほく紀行』(無明舎出版)も上梓する予定の、のりにのっている加藤さんですが、この2本の連載には心にきすものがあるようです。ご期待ください。
(あ)

殿様の料理を堪能する

 先週の土曜日、秋田県の内陸部にある南外村で、佐竹の殿様料理を楽しむ会がありました。秋元酒店の秋元さんや丸彦酒店の栗谷さんなどが主催する「やまとの会」が催したもので、会場は「やまとしずく」や「刈穂」の蔵元・伊藤家のお屋敷でした。築100年以上というかやぶき屋根の家と、広大な庭は「殿様料理」を味わうには絶好のロケーション。抽選で選ばれた20人のお客様は江戸時代にタイムスリップした気分です。料理を任されたのは秋田市の料理研究家・岸和子先生。佐竹資料館の協力を得て秋田藩の記録『国典類抄』に記載されている料理記録を探し出し、独自の解釈で調理したそうです。この日出されたメニューのコンセプトは「殿様のおもてなし料理」。もし佐竹の殿様を伊藤家にお招きして料理を出すとしたら、という想定でつくられました。私もその席に座ることにしていましたが申し込みが多いため遠慮して、小阪カメラマンと一緒に撮影記録に回りました。それでも次々と作られる料理を裏でちゃっかりいただき、皆さんと同じように味わうことが出来ました。
 南外村にある野菜や山菜、米などの食材を中心に、男鹿のタイやサクラマス、アワビも登場。伊藤家の庭に咲いているツツジの花まで天ぷらの材料になり、お膳を華やかなものにしてくれました。もちろん蔵元提供の酒の仕込み水や酒粕もきちんと使われています。岸先生は料理教室を開くかたわら、料理研究家として秋田の郷土料理などの研究に力を注いでいる方です。もちろん料理の腕前は超一流で、「正しい食材」にこだわり秋田の食を見つめています。私は当日裏方でしたが、おかげで岸先生の仕事振りを心行くまで見ることが出来ました。おまけながら岸先生の教室で料理を教えてもらっている私の娘も手伝いスタッフとして参加、なかなかの奮闘していました。
(鐙)

これが提供された料理です。もう再現されることはないでしょう

No.192

骨董屋の非賣品(晶文社)
勝見充男

 骨董屋さんの自慢話というのは「聞きたい」「絶対イヤ」と意見が分かれるところ。趣味人プロの究極の嫌味趣味話みたいなもんだから、あくが強くなるのはしょうがない面がある。金と品位の話に収斂して、たかが古物なのに人間の美意識の高い低いレヴェルにまで発展して他者をこき下ろし自分の審美眼を誇る、という構造をさけがたいところがある。が、本書はそうした「恐れ」とは無縁。ヘンな屈折がまったく感じられないさわやかな「趣味話」に終始している。人品いやしからぬ、抑制の効いた、好感度エッセイといってもいい。「遊楽」という雑誌に連載されたものらしいが、晶文社の骨董本ブツ撮りカメラマン大屋孝雄の写真もすばらしい。「骨董屋さんの大切なもの、そっとお見せします」というコンセプトと造本や内容が見事に一致した本といってもいいかもしれない。読み終わっても、ずっと手元に置いておきたいような不思議な余韻の残る本なのである。「少年の日の夢」が初級編、「身辺の道具たち」が中級編、「ただ持ちたくて」が上級編といった具合に、3章に分類した本文がそのままガイダンスにもなっている。こういう本を数冊読めば、ほとんどの人は骨董にはまってしまうだろうな。そういう意味ではちょっと怖いエッセイ集だ。

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