Vol.989 19年12月16日 週刊あんばい一本勝負 No.981


健診結果は可もなし不可もなし

12月7日 今でも毎週一回はテレビ局やメディア関係者から資料や画像転載の依頼がある。HPに明記しているのだが、この手の依頼には一定の金額を要求するようにしている。「それならけっこうです」と辞退する組織がほとんどだ。苦労して収集した資料や画像を、ただで再利用しようとする企業は本当に腹がたつ。企業とは言ってもほとんどが下請けの弱小プロダクションや編プロ。泣き言を言われることもあるが同情はしない。

12月8日 太平山前岳。今年最後の太平山だ。天気にも恵まれた。駐車場でいきなりこの「山の主」のようなO先生とバッタリ。O先生は毎日この山に登っているギネス級の人なので、かつうちの本の著者なので「今年もお世話になりました」とごあいさつ。山中では、先日雄長子内岳でなくした財布を拾ってくれたKさんとも遭遇。こちらも丁寧にお礼を述べる。登りは山頂まで2時間20分、下りは1時間30分。今日は夕方からモモヒキーズの納会が駅前の居酒屋である。

12月9日 本が売れなくなって久しい。何とかやりくりしながらサバイバルしている、というのが現状だ。年4回出しているDM通信はもう10年以上続いているのだが郵送料や印刷代の値上がりで費用対効果はマイナスだ。さらに直接購読の読者には「送料無料」で本を送っているのだが、これも昔の2倍近くの料金がかかるようになっているので見直しを進めている。来年はこの辺りにメスを入れ、改革を迫られる年になりそうだ。

12月10日 胃の中のピロリ菌を退治した時、医者から「胃酸が多く出るようになります」と注意された。その通り少し食べすぎると胃が痛むようになった。胃酸のせいだ。キャベジンよりワンランク強いガスター10の世話になっているが、よく効いてクセになってしまった。胃薬を服まなくて済むような日常を送りたいのだが。

12月11日 赤穂浪士の討ち入り事件に深い関心はないのだが、たまたま読んでいる本に、まったく別の視点から「赤穂事件」に触れている文章にであった。ひとつは、将軍・徳川5代綱吉の視点で、本来、「打首」が当然なのに「切腹」という「異常に軽い刑」になった経緯を、綱吉側の心情から描いているもの。「打首」が妥当と綱吉も考えていたようだ。もうひとつは「食」や「ビジネス」の観点から書かれたもの。吉良と浅野は「塩」の製法や販売をめぐってライバル関係にあった。これが松の廊下の刃傷沙汰につながったというものだ。塩を焼いて将軍用の歯磨き粉を作った大石内蔵助のアイデアが大ヒット、吉良はこれが面白くなかった、という。う〜ん、でも、やっぱり重要なのは吉良と浅野の「役職」関係だろう。2人は「高家」と呼ばれる天皇や公家の接待をする役職の上司と下っ端だ。2人間に強烈なパワハラがあったのはまちがいない。

12月12日 昨夜はジャーナリスト関係者の友人たちと忘年会。2次会まで大はしゃぎして帰宅は午前2時半。盛大な二日酔いで、起きたらお昼を回っていた。事務所に行くと先日の健康診断ドックのお知らせが届いていた。これを開くのは1年で一番緊張するが、大型封筒がペラペラだったので少しホッとする。要再診や病気の可能性ある場合は病院の紹介状や医師からの手紙が同封されているので、封筒は分厚くなるのだ。総合判定は「内臓脂肪型肥満」「節酒」「塩分制限」など定番の文字が並ぶ。大きな病気の可能性はないとわかって、ぐったり疲れた。別にほめられているわけではないから安心はできないのだが、来年の5キロぐらい瘠せて、早く健診を受けたい、というぐらいの気持ちになりたいものだ。
(あ)

No.981

土に贖う
(集英社)
河ア秋子

 7つの短編からなる小説集である。7つの作品に共通するのは舞台がすべて北海道であること。蚕農家、ミンク養殖、ハッカ栽培、海鳥殺し、蹄鉄屋、レンガ職人、そのレンガの土で器を焼く陶芸家……といった主人公たちの職種の多様さと意外性だけでも、広大な大地に躍動する未知のドラマへの期待が膨らんでしまう。作品の大半は北海道の農村や農家を題材にしたものだが、「南北海鳥異聞」だけは異質の光芒を放つ物語になっている。明治の中頃、南の島で「海鳥の羽を採取する賃金の高い仕事」についた男が主人公だ。仕事は無人島にやってくるアホウドリを毎日ただひたすら撲殺し、羽根をむしりとるだけ。1日250羽もの鳥を殺し、その単純な仕事に主人公は喜びすら感じている。しかしある時、何の手違いか迎えの船が来ず、島で孤立した男たちは殺し合いをはじめる。主人公だけはどうにか救出されるのだが、今度は南の島から一転、北海道へと渡り、白鳥殺しの職を得て……というどこか浮世離れした物語なのだが、感情を排した文体と柔らかな語り口のせいか、悲惨で無残な物語ですら奇妙に明るいおとぎ話のように思えてくるから不思議だ。

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