Vol.950 19年3月2日 週刊あんばい一本勝負 No.942


そして3月になってしまった

2月23日 4日間ほど間食せず「腹7分目」を守って過ごしたら体重が順調に落ちてきた。うれしい。ある著者からメール。小生と同じようにアイスバーンで転倒したという。前に倒れたので頭は打っていないのに「目の前が暗くなり、頭がしびれ、呼吸がきつくなり、すぐ起き上がれなかった」そうだ。医師からは「むち打ち症」の可能性を言われたそうだ。私もCTスキャンで脳に異常はないといわれたが、いまだ頭がボーっとしている。これは「むち打ち症」だった、と考えれば前後の納得はいく。そうか、「むち打ち症」というのがあったか。

2月24日 森吉山樹氷ハイキング。暖冬のせいか樹氷はやせ細ったものばかりらしい。今日はさらに新しいスノーシューの履き初めだ。先日、仙台のモンベルでスノーシューを物色中、「雪山はスパイク長靴で歩くのが定番」と若い女性スタッフに言うと怪訝な表情で無言になった。どうやら「スパイク長靴」の存在を知らないようだ。そのモンベルが美郷町に出店と地元紙が報じていた。町ではモンベルと包括連携協定を結び一般会計で1億円の補助を出す。お金を出すのでぜひわが町へ、というわけだ。アウトドア商品は手に取らないとわからないから、みんな店に行くんだろうな。

2月25日 森吉山樹氷ハイクは好天候に恵まれた。雪と空と人々の原色のウエアーが作り出す、美しいまるでヨーロッパ・アルプスのような風景を楽しんできた。ランチは誰もいない避難小屋(2階の窓からはいる)。このまま下山するのも惜しくてスキーリフト横の観光ハイキングコースもついでに周ってきた。樹氷はやはり例年に比べて雪の付きが細く、心もとない感じだったが、青空がその欠陥をカバーしてあまりあった。人生で何度も経験はできないような青空(蒼空といったほうがいいかな)だった。

2月26日 浅舞の「天の戸」で新酒を飲む会。中国からのお客さんが数名見えていた。観光客ではなくビジネスを兼ねた方々だ。驚いたのは小生の隣に座った日本人。彼は「ポケトーク」(自動翻訳機)を持参、初対面の中国の人と積極果敢に会話を試みていた。先日、仙台の家電量販店で店頭に山積みされているポケトークがあった。「売れてるんだ」とためつすがめつ見てきたばかり。その会話能力だが音声入力から翻訳が出てくるまで時間がかかりすぎだ。日本語能力がないと翻訳機はうまく使いこなせない、というのが正直な感想。

2月27日 毎日好天。あいかわらず頭のモヤモヤは晴れない。痛くもかゆくもないのだが、なんだかボーっとしてカスミがかかったような状態だ。CTスキャンで異常なしと言われて、急きょ「むち打ち」の可能性の高いことが分かった。今日は近所の整形外科に行く。先日、「天の戸」の新酒飲み会に出席した折、杜氏のMさんが毛糸の帽子をかぶっていた。訊くとアイスバーンで転倒し脳に出血、牛乳瓶1本分の血を手術で抜いたという。酒造りの真っ最中なのでM杜氏は手術後に入院もせず酒蔵にもどったというからすごい。

2月28日 人権派ジャーナリスト(写真家)として有名な広河隆一の性的スキャンダルは驚いたが、井上荒野著『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版)を読めば、広河の女漁りも小さな事件にしか思えなくなる。著者の父である井上光晴と瀬戸内寂聴の不倫を描いた情愛小説だ。寂聴の小説には井上光晴の細かなチェックが入っていることや、その井上の短編のいくつかは実はその妻が代筆した、と赤裸々なエピソードがさりげなく描かれている。井上光晴の性的異常さは目をおおいたくなる。「文学学校」なるものを主催し、その会員の女たちのことごとくに手を付けていた、というのだから恐れ入る。広河隆一などかわいいものだ。

3月1日 今日からピロリ菌を除去するための薬を飲むことになった。二種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬を七日間朝夕服みつづける。副作用というほどではないが「味覚障害」や「腹痛」「下痢」の症状が出る可能性もあるという。そして1か月後、無事にピロリが退治されたかを「尿素呼気試験」を受けてチェックする。ピロリ菌の除去については私の周りでは意見が分かれている。「やる必要がない」という人がいるのだ。ピロリ菌がいなくなると逆流性胃炎がひどくなるのだそうだ。「やる」派は何といっても胃がんのリスクが減る利点を挙げる。私は何となく除菌を選んだだけ。そんなこんなで3月の初めから波乱含みのスタートだ。 
(あ)

No.942

てやんでぇ!
(双葉文庫)
金子成人

 江戸の廻船問屋の若旦那が東海道五十三次をフラフラ旅する時代小説だ。著者は小生と同い年の脚本家。倉本聰に師事し「鬼平」や「水戸黄門」「太陽にほえろ!」などを手掛けているから、その世界では有名な人なのだろう。「若旦那道中双六」と副題のある本シリーズは4冊の文庫(書下ろし)が出ている。シリーズそれぞれの書名がいい。「てやんでぇ!」「すっとこどっこい!」「べらぼうめ!」「なんてこったい!」。この書名に魅かれて読み始めたのだが、主人公の若旦那のキャラクターがすばらしい。お調子者で愛嬌があって、強くもなければ思想信条もない。優柔不断で家業には目もくれず、遊興三昧でノーテンギ、というのだから、まあほとんど落語の与太郎の世界だ。これが実にほのぼのと読み手を油断させる。落語を聴くように読める本なのだ。既刊の4冊とも読んでしまった。早く新刊が出ないか待ち遠しいのだが、江戸の時代背景そのものよりも、当時の「旅の仕方」が実によく克明に描かれているのが勉強になる。特に毎日お世話になる旅籠の実際は実にリアルで、ヘンな歴史書を読むよりずっとためになる。

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