Vol.900 18年3月17日 週刊あんばい一本勝負 No.892


指の脂っ気がすっかり抜けてしまった

3月10日 雨も上がった。雪も消え春のような週末。鶴岡で行われるイベントを取材。新入社員は夏油高原にスキーへ。大きな仕事の山は越えたが、やることは一向になくならない。リタイアするまで何かに「追われるような」感じはなくならないのだろうか。「何もしないと怖い病」といってもいい。

3月11日 酒田はよく行くのだが鶴岡は珍しい。羽黒町の松ケ岡開墾場に用事があったのだが、戊辰関連のイベント「西郷どんと菅はん」をやっていたので、さぞや混んでいるかと思いきや、ほとんど人はいなかった。鶴岡は酒田に比べてなぜか蕎麦屋が多い。国道沿いの蕎麦屋で「麦切り」。「麦」というのは「小麦」のことだ。「うどん」でいいじゃないか、といつも思うのだが、庄内では頑として「麦切り」だ。小麦でなく大麦で作るから「麦切り」と反発したくなるが、庄内では小麦と塩を練りこんだ麺を「麦切り」という。

3月12日 パソコン画面に「ロック」をかけると自動的にスライドショーが始まる。「ピクチャー」のフォルダーに入っている写真は主に山行や旅行で撮ったもの。これがまったくアトランダムに時間も空間も超えて目の前に飛び出してくる。予測のきかない自分史映画のようでもある。毎日ドキドキしながら1時間近くパソコンとにらめっこ。

3月13日 午前中はあっという間に過ぎる。8時30分ごろに事務所に入りFMラジオを聴きながらコーヒーを一杯。一袋19円の業務用だ。週初めは会議をやるが、会議をしないときは2つの新聞を切り抜き。読み終わると「今日の出来事」を書く。事前に何を書くかは決めない。書き終わるとメールのチェックと返事。メールはプライヴェートもあるし、仕事のやり取り、本の注文からクレーム、質問、依頼と雑多。それに一つ一つ返事を出していると11時を回っている。11時半が午前中の仕事の目安だ。ここで仕事をやめ、やおらリンゴとカンテンの昼食準備に入る。

3月14日 お昼はカンテンとリンゴで、ものの5分で終わり。甘くないお菓子を食べたりするが、最近はもっぱら堅焼きせんべいかあたりめ。1時間ほどTVを見てから午後の仕事。中長期的な仕事がメインになる。図書館で調べ物をしたり、書庫から資料を引っ張り出したり、HPや連載原稿の下調べや執筆など。地味な作業はすぐ飽きる。そんな時はそそくさと散歩にでる。駅前まで出てコーヒーを飲んで帰ってくるコースだ。雪がある期間はできるだけ人通りの多い街場を歩く。雪が消えると人通りのないノースアジア大コースだ。散歩を終えて帰るとメールや電話による新たな雑用が入っている。接客や事務全般は新入社員が処理するから小難しい折衝や応対が私の役目。5時半になると仕事は終了。

3月15日 夕食が5時半なのだ。ちょっと早いがカミさんも私も夕食後に仕事をする習慣があることから定着した時間。そのため晩酌も、「酔う」まで飲むことはない。晩御飯が終わると事務所に戻る。夏場は少し涼しくなったこの時間帯に散歩に出る。夜の仕事はのんびりダラダラだ。DVD映画を観て9時ころまでは仕事場でぬったり。映画の途中で眠りこけることも当たり前。9時になると家に帰る。自分で風呂の準備をして入浴。後は寝室に入って本を読む。就眠は12時を過ぎている。単調極まりない日々だが週末の山行は生活の大きなアクセントになっている。

3月16日 TVでN響アワーをよく見る(聴く)のだが、指揮者や演奏者が譜面をめくるシーンには思わず目をつむってしまう。指からすっかり脂っけが抜け、新聞はおろか単行本のページめくりにさえ四苦八苦している身としては、とても他人事ではない。ちゃんと譜面がめくれるたびに一安心。あの人たちは指の脂っけ問題をどのように解決しているのだろうか。というわけで、今年もハクチョウたちの北帰行の季節だ。で朝から夕方までガーガーと天空でうるさい鳴き声が響いている。しかし北帰行とは言うもののハクチョウはいつも南方面に飛び去って行く。はて、面妖な? どういうことなのだろうか。いつの間にか南帰行に進路を変えたのだろうか。オーケストラの指の脂っけ問題とハクチョウの南帰行、どなたかご教示お願いします。
(あ)

No.892

騙し絵の牙
(KADOKAWA)
塩田武士

 本書は微妙な書名だ。大手出版社の雑誌編集者の奮闘を描いた小説で「出版業界もの」としては出色の出来なのだが、旧来の小説本と違い、カバーから本文扉にいたるまで、タレント写真集さながらに「主人公に扮した」俳優・大泉洋が主人公モデルとして姿を見せる。主人公は大泉のような男ですと強要しているわけで、これは読者の想像力を著しくなえさせる。この本を売るための戦略が成功だったのか失敗だったのかは、よくわからないが、私にとってはちょっと迷惑、余計なお世話といった感じだ。頭脳明晰、健康的で明るく、物分かりのいいやり手の雑誌編集長が廃刊寸前の雑誌をめぐって社の上層部や作家、部下たちと攻防を繰り広げる。なのだが最後のエピローグまで、この何やら意味ありげなミステリアスな書名の意味は分からない。最後に大どんでん返しがあり、ようやく書名の意味が明かされる。でも物語の9割は書名とは無関係の内容だ。う〜ん、この手の書名は「あり」なのだろうか。内容の面白さをさておいて、この書名と主人公のモデル写真は、いろいろと考えさせられてしまう。

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