Vol.893 18年1月27日 週刊あんばい一本勝負 No.885


今年もどうやら山に登れそうだ

1月20日 青空広がる気持のいい土曜日だ。昨日東京から帰ってきて、疲れがたまっているのか身体が怠い。夜八時には寝た。それがよかったようで目覚めると身体は生き返っていた。明日は久しぶりの山行。ちゃんと登れるだろうか不安だ。市内はまったく雪がない。山も雪は少なそうだ。

1月21日 今年の山始めは男鹿半島・真山。去年の11月28日の長者森以来だ。朝起きがつらかった。気持ちが高ぶって寝付けない悪い癖が出てしまった。小心者なのだ。天候はあれもせず晴れもせずだが、1時間半のハードな連続の登りをどうにかクリアー。雪が少なくスノーシューではなくスパイク長靴での登頂だ。最近は山の後の温泉の「冷え」や「湯冷め」が問題。体があったまった後にゾクゾク腰のあたりに冷えの塊が這い登ってくるのだ。これも老化の一種なのだろうか。

1月22日 思ったほど体力は落ちていないことに一安心だが、今日からまた東京。東京は雪というではないか。いつもと全く同じ格好で東京に行けるというのも、これはこれでなかなかない経験だ。雪用ブーツを履いてスキー帽をかぶって出張だ。

1月23日 東京は秋田より積雪が多かった。それも濡れ雪で一番歩きにくいやっかいなタイプだ。電車を降りたとたん傘の大群。雪国では雪が降っても傘は差さない。差す習慣がない(そのへんの文化的な理由についてはいずれ書く予定)。銀座で『平野甲賀と晶文社展』終了後、外にでると人通りが消えていた。夜9時前である。タクシーも走っていない。やむなく歩いて神保町の宿まで帰ってきた。人も車もネオンもスカスカで東京はまるで廃墟のよう。

1月24日 東京はとにかく外国人だらけ。四方八方から聞こえる会話はアジア系の言語ばかり。昼に入ったラーメン屋では自前の香辛料でメンが見えなくなるまで真っ赤にして食べるインドネシアの女性旅行者。ユニクロ店内ではスマホに向かって独り言の中国人女性。どうやら本国にいるボーイフレンドとテレビ電話で会話しながら二人(?)でショッピングしているのだった。人通りの途絶えた大雪の銀座で、大騒ぎしていた一団は雪が珍しい台湾の観光客たちで、空に向かってしきりにシャッターを切っていた。

1月25日 秋田に帰ると強烈な寒波が襲来。朝晩は零下5℃くらいか。人っ子ひとり歩いていない夜の街を散歩。ときおりものすごい強風が地面から這い登ってくる。厚着なので3キロも歩くと身体は汗ばんでくる。この汗が風邪の元。汗をかかないようにスピードを緩め、立ち止まっては寒風の中、身体を冷やしたりしているバカオヤジがわたしだ。

1月26日 この1か月間に三回東京を往復、仙台も1往復している。電車のなかが退屈だが、面白い本と出合えれば逆に極楽の時間帯になる。今回は選びにらんだつもりの選書だったが、その大半は疲労や体調からビミョーにずれが生じた。かろうじて読了できたのは馳星周『蒼き山嶺』(光文社)のみ。北アルプスを舞台に北朝鮮がらみの警察バイオレンスと山岳冒険小説がまじりあうスリリングな物語。真冬の山嶺を舞台に登攀技術を競いながら拳銃を打ち合う小説が成り立つとは想像もしなかったが、これがけっこう面白かった。
(あ)

No.885

騎士団長殺し
(新潮社)
村上春樹

 ベストセラーは読まないか、話題が沈静化してからネットで安くなった本を買う。これがベストセラー本を買う時の通常スタイルだったが、本書に関しては話題の真っただ中に、初版を買い求めた。これは珍しい。特別な理由はないのだが、買ったことに満足し結局は半年以上積読状態。少し余裕のできたお正月休みに読み始めたが、これは当たりだった。村上の長編小説で途中で放り出したものはない。みんなそれなりに読ませるし、読み慣れると面白い。書評では手厳しい意見が飛び交う作家で無視を決め込む読書家も少なくない。たしかに「回収されない伏線」問題は本書にもいたるところに散見されるし、無駄に長すぎる描写にイラつくこともある。でも全体として気持ちよく本を読む喜びに浸らせてくれるストーリーテラーなのは間違いない。本書の主人公は30代の肖像画を描く画家。絵描きの行動や心理、ものの見方を描いた小説というのは珍しい。主人公が移り住んだ小田原の山中の一軒家を舞台に、いつものように裏庭にあいた穴が物語の出入り口だ。

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