Vol.1093 21年12月11日 週刊あんばい一本勝負 No.1085

シャチョー室のリフォーム

12月4日 仕事はめっきりヒマ。机の前に垂れこめてネットサーフィンし、鼻くそをほじくって散歩に出る。ああ定年後の高齢者の日常ってこんな感じか……いやいや周りの同年代の仲間たちは、みんなリタイアした人たちだが、実に忙しそうだ。けっきょく、いまだ現役を標榜する私が一番ヒマそうなのは、どうしたことか。自分の老後を「リタイア」と決めた人たちは、そこに沿って人生の楽しみ方をアグレッシブに創出している。こちらはいつまでたっても中途半端にダラダラ仕事をしてるだけ。時間のメリハリがないのだ。ここが彼我に歴然とした差が生まれる原因のようだ。

12月5日 最後の晩餐は「卵かけご飯」と日ごろから公言している。米は新米でなくとも古米で充分。できればジャガイモのみそ汁も最後の晩餐にはぜひ加えて欲しい。根っからのジャガイモ好きだ。「何か食べたいな」と思ったら前日から昆布とかつぶしで出汁を作っておく。ジャガイモをチンして、出汁にみそを溶いて、みそ汁にする。昨日もジャガイモのみそ汁を作って、すべて平らげてしまった。塩分の摂りすぎが問題だ。

12月6日 バタバタした1週間になりそうだ。明日からこの2階のシャチョー室の全面改装(リフォーム)工事がはじまる。工事期間は3日間。床の張替えや壁クロス、換気扇や窓のブラインドも全部新しくする。この事務所が建って40年になる。シャチョー室だけは私一人の城だから汚れも痛みも半端なかったが、我慢すれば済む話なので傷み放題。老後のもうひと仕事するつもりなのでリフォームを決心した。将来の隠居部屋になる予定だ。

12月7日 リフォームが始まった。朝一番に5,6人の職人さんたちが資材を運びこむと、あとは床を張る大工さんが一人で午前中に黙々と作業を終了。午後からは水道管の業者が入り、明日は壁クロスの業者の業者へバトンタッチ、3日目は窓のブラインド……と工事日程が組まれている。仕事ができないので1階のデスクで作業をしているが、慣れないパソコンでフラストレーションがたまる。、仕事そのものがヒマなので、どうにかやりくり。仕事場に立ち入れないとなると、そこへの半端ない依存度が痛感させられる。早く通常に戻りたい。

12月8日 四六時中居続けるこの事務所も、いずれ解体しなければならない日が来る。築40年だから当たり前の話だが一応4,5年前に耐震補強のための大改造はしている。それでも私の目の黒いうちに解体問題作業は考えなければならないだろう。リフォーム作業の現場監督のA長老に、「解体費用ってどのくらいですか」と訊くと、「坪3万から4万の間」と答えが返ってきた。思っていたより高くはない。事務所は15坪2階建てだから100万円ほどだ。この費用だけは自分の責任で準備する必要がある。

12月9日 リフォームも最終日。それにしても職人さんの段取り仕事は実に合理的で美しい。無駄がないし、人員も最小限で済むよう工夫されている。昨日は駅まで出かけて、どこかへ電車に乗って出かけようと思ったが、肝心の「大人の休日カード」を忘れてしまった。そこで駅前のコーヒー屋さんをはしごし、本を読んで半日過ごした。事務所に帰るとすっかり新しい壁紙に貼り替わって部屋は一新していた。早く日常に戻りたい。

12月10日 夜10時ころまでかかって、かたずけを8割がた終了。あとの2割は細かな「仕分け」が残った。大雑把に予定通りの場所にものが収まったわけで、まずはめでたし、めでたし。でも今週いっぱいはかたずけ優先だ。机の位置が変わったのでパソコンに向かっていても、その先の景色が変わった。なんだか新居に引越ししたような感覚だ。いみじくも友人に「仕事部屋というより隠居部屋だな」といわれた。ここが終の棲家という気分だが、あと何年仕事できるのか、自分のやっていることが何か意味はあるのか、そんなことを考えながら、机の前にしばし垂れこめている。
(あ)

No.1085

誕生日大全
(主婦と生活社)
サッフォー・クロフォード他著

 近所の蕎麦屋さんに置いていた唯一の本(他に本はなかった)だ。興味の持てないジャンルの本だが、活字中毒者としてはこんなものでも何もないよりはましだ。著者はロンドン在住の占星術の専門家で、外国でベストセラーになったものの翻訳のようだ。一年365日のすべての誕生日について、その人の特徴や運命を解説したもので、一日2ページ、全体では830ページの大冊で定価は2800円。本書は2005年版で、その1年間だけで10刷りというベストセラーだが、アマゾン・ユーズドでは数百円で買える。新版が何年か置きに出ているからだろう。占いや占星には不快感しかないのだが、誕生日の人の特徴や人格を表す表現語彙が驚くほど多様なことに驚いた。「これは人間の特徴を表現するときのテキストに使えるな」と気が付いて、読むためではなく文章の参考資料として購読を決めた。アトランダムに9月20日を開くと「抜け目なく実際を重んじる。機を見るに敏で学習意欲旺盛、楽天的で正直ものだが、多少忍耐力に欠ける」とか、6月11日は「適切な判断力と推理力を備え、主体性があり多芸多才。すぐに怒りっぽくなり、一風変わった所がある」。1月18日は「鋭い知性とビジネスセンスを持った野心家で、抜け目なく魅力的な人柄」といったアンバイだ。これはいろんな場面で使える。なんだか安い買い物をしたお得感がある。

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