Vol.1088 21年11月6日 週刊あんばい一本勝負 No.1080

ニッケイ新聞とわらび座の破綻

10月30日 何年振りかではじご酒。近所の4軒のお店を友人とはしごした。今日はちょっぴり二日酔いだ。友人Fさんも近所住まいで、もう長い付き合いだ。彼の奥さんが亡くなられて49日、「忌明け」の飲み会だ。最初の2軒は予定外の店だった。本命がまだ開店していなかったため緊急に飛び込んだもの。2軒ともガックリ来るレヴェルの低い店で、一杯呑んでですぐに出てきた。3軒目は前に行った時に良かったところで、ここでようやく人心地がつき腰を落ち着けた。この店でかなり出来上がったが、4軒目は最初に目を付け開店前だった焼き鳥屋さん、ここに舞い戻った。ここでもじっくり酒と焼き鳥の宴。最後に食べた焼きおにぎりがうまかった。

10月31日 来年の50周年に向けて出版予定の「50年史」の年表作成作業が、ラフだがほぼ出来上がった。自分の歩んできた道をドローンのように俯瞰で眺めると、まあそのでたらめな道筋がよく見える。なにせ3年から5年単位で経営方針がグラつき、喜怒哀楽と体調不安が激しく入れ替わる。夢中で県内外の小旅行にうつつを抜かしたり、2年間ずっと事務所にこもりっぱなし、とまるで筋が通らない。1年間に5回も痛風の症状にのたうち回ったりしている。調子に乗って3度も4度も外国に出かけている年もある。

11月1日 世界で最大の日系人社会を抱えるブラジルの、唯一の邦字紙である「ニッケイ新聞」が経営悪化で今年末に廃刊が決まった。実質的には後継紙として「ブラジル日報」が来年1月から創刊され、今のスタッフは引き続き雇用が維持されるようだ。現編集長の深沢正雪さんは、うちでこれまで3冊本を出していて、ジャーナリストとして優秀な人だ。後継紙も彼が指揮を執るのなら安心だ。この新聞のルーツは、第2次世界大戦後の、あの勝ち組負け組抗争のただなかで秋田県出身のジャーナリスト・蛭田徳弥が創刊した「パウリスタ新聞」だ。その志を受け継いだ深沢さんには、まだまだ頑張ってほしい。

11月2日 GoToEatの食事券を2万円分、近所のスーパーで買った。11月はけっこう外での会食などが増えそうだ、と友人のFさんにもらしたら、「それなら食事券が得だね」と教えてもらったのだ。この食事券が近所のスーパーで売っていることじたいも初耳だった。使用は11月いっぱい限定だが、飲食だけでなく土産屋で贈答用のお酒や缶詰類を買うのもOK、というのも初めて知った。今月は仲間や家族と宴席が4回もある。なんだかけっこう得した気分だ。

11月3日 わらび座が民事再生。大きな企業がつぶれてもさして関心はないが、これは地域の文化・芸術の事業に関する破綻というビッグイシューだ。今朝の朝日新聞全国版は数行のベタ記事扱いで意外だった。14億ぐらいの負債は、この程度の扱いなのだろうが、文化芸術の、ある意味、日本の地域文化の先進的なビジネスモデルの破綻という観点で見れば、またニュースヴァリューはまるで違ったものになる。事業や雇用は維持されるという。すべてがコロナ禍のせいにされているのもちょっと気になる。コロナ以前の無謀なM&Aの問題点はなかったのか。いまはただスムースに再生が進むことを祈りたい。

11月4日 調べ物があり県立図書館へ。タイミングよく3階で「県政ニュース」の上映会があった。映像アーカイブは「昭和39年(1064)」で、東京オリンピックの年のニュース5本だ。その多くが秋田の交通インフラに関するもので、新屋飛行場に発着する札幌―大阪間の新路線(秋田―大阪間は4時間)、国道46号線の開通で秋田―盛岡間が3時間で交通可能になったこと、最難関工事といわれた男鹿市門前と加茂間7キロの道路工事は危険なため自衛隊が工事を肩代わりした、というニュースだった。オリンピックの聖火点灯は女性ランナーが点火台まで走り、点火儀式はそこで待っていた背広姿の偉いさんが替わって火を灯す。神聖な儀式は女性には任せられない、という「男尊女卑」が生きている映像で、今なら完全にアウトでしょうね。

11月5日 モモヒキーズのしばらくぶりの飲み会。K女史のダンナさんが亡くなり、その忌明けの会でもある。いつもの「和食みなみ」が会場だ。ワイワイガヤガヤ6人の男女半々ずつの山仲間が調子に乗って騒いでいたら、お店の人に「大きな声は…」と厳重注意を受けてしまった。そうかコロナ過だった。みなみはいつもと変わらず満席だし、雰囲気はすっかりコロナ前に戻った感覚になってしまった。いつものコース料理だったが品数が少ない印象で、どうしたのかなと思ったら、最後にきりたんぽ鍋が出た。みなみには四半世紀通い続けている。料理や接客で裏切られたことはない。わがモモヒキーズの宴会ももうここが定番になった。
(あ)

No.1080

気晴らしの発見
(新潮文庫)
山村修

 突然始まった不眠や手足のしびれ、寒気や心拍の異常……強度のストレス症状に悩む著者は、そのストレスから抜け出そうと様々な方法を試みる。が、その行為そのものがまたストレスを産み、心の不調は深まっていく。健康と不健康の危うい境界に立ちながら、著者が堂々巡りのストレスの日々の中でたどり着いた場所とはどこだったのか。心の不調を様々な角度から内省し、日常の心の振幅を洒脱で重厚なエッセイに綴る手腕は名コラムニストの面目躍如である。解決策としての「気晴らし」の必要、その実践のための「演習」の試みなど、ストレス軽減のためのガイダンスにもなっている。博覧強記の著者のガイドブックであり快人列伝にもなっていて、心と体の不思議に満ちた話が連鎖的に展開されていくのはスリリングだ。ストレスの命名者であるハンス・セリエの逆転的発想による「ストレスの発見」は、特に興味深い。実はこの本は過去にも何度も読んでいる。何年かごとに無性に再読したくなる本だ。「健康に関するエッセイ集」ではピカイチの優れ本で、簡単には時代の波に呑み込まれそうにない「力」をもった保存本だ。

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