Vol.1060 21年4月24日 週刊あんばい一本勝負 No.1052

「山城」ウォーキングに夢中!

4月17日 ホテルで打ち合わせ。良いお天気なので1時間ほど早めに出て目的地へ。途中にある山(千秋公園)を越え、花見を楽しみながら、山の反対側にあるホテルに行く、という算段だ。桜はちょうど見ごろで人はほとんど出ていなかった。子供連れの家族や若いカップルたちが散在する、まるで天国のような空気感で満たされていて、桜たちを愛で、その後打ち合わせを済ませた。打ち合わせは最悪の事態で話がかみ合わず、昼酒でも飲みたい気分だった。帰路も同じルートで帰ってきた。公園の桜のなかを歩くうち不思議と心の荒波は収まった。「さ」は古語で神、「くら」は依り代、という意味であることを昔本で読んだことがある。桜とは古代「神の集まる場所」という意味だ。

4月18日 山行のない週末。準備していた『沙林ー偽りの王国』(新潮社)を読む。小説家であり精神科医でもある帚木蓬生の新作だから、面白くないはずはない。オウム事件を医師サイドから見たドキュメント・ノベルだ。医学や薬学の専門用語がバンバン出てきて、途中でボンクラ頭がついて行けなくなる。オウム事件の物語だから事件の顛末は知っている。あとは医師たちの思考プロセスを面白がるだけなのに、それができなかった。

4月19日 サイレンの音が耳につく。風が強かったからなのだろうか。近所に秋大病院があり救急車やヘリコプターの音には慣れっこだが、サイレンはまたそれとは違う緊張感を強いる。このところ塩分の摂りすぎか、体調が悪い。夜の本は篠田節子の新刊『田舎のポルシェ』。ロードムービーが昔から大好きだが、これは「ロードノベル」。強面ヤンキーと岐阜から東京を軽トラで往復する中年女性。廃車寸前のボルボで北海道を旅行する定年男2人組。ロケバスを借り切ってコロナ禍の日本をステージに立つためだけの理由で疾走する女とその孫。設定がとにかく面白い。

4月20日 自舎本のコレクションを始めて1カ月。毎日のようにネット通販「日本の古本屋」で昔の本をせっせと買い続けている。印刷所や税理士さん、友人や市内古書店を通して9割方は集めたのだが、残りの1割が難関。冊数にすれば100冊ほどなのだが、悪戦苦闘の末、現時点で未発見本がまだ50冊ある。朝起きてこの自舎本棚をじっくり眺め「あれッ、あの本がなかった」と気が付く日々だ。今日も2冊、そんな本があった。1000冊以上既刊本があると、目録と照合するのはほぼ不可能だ。その都度気が付いた「不足本」を補っていくしかない。

4月21日 ようやくの青空。前から行きたかった湯沢城址へ。ご当地の教育委員会に訊くとGWまではまだ雪が残っているというが、雪があっても歩けないことはない。市役所のある場所から山に入り、その山を越えて湯沢高校に出るコースだ。この高校も私が出た学校なのだが、当時は校舎の裏側に中世の歴史の道があるなんて知りもしなかった。佐竹氏以前の、中世の武将たちの山城を歩く「趣味」の一環だが、安東愛季の時代の戸沢や小野寺らの武将たちの山城跡を歩きながら、往時に思いを馳せてみる。

4月22日 湯沢城址はちょうど桜が満開で、時期的には最高の「山城ウォーキング」になった。本丸近くに若干雪が残っていたが、それもご愛敬。歩きやすい整備された山道だった。ひとり山の中を彷徨というは爽快な気分だ。あまり気分がよかったので、そのまま稲川町の稲庭城へ移動。ここも初めてなのだがロープウエイや売店のオープンは24日から、とのことで閉まっていた。いい機会なので急坂をエッチラオッチラ自分の足で登って標高350メートル付近にあるお城まへ。湯沢も稲庭も今が盛りとカタクリやスミレ、バッケやニリンソウが咲き乱れていた。もうこうなるとほとんど山歩きそのもので歩いた距離は1万5千キロ、けっこう汗もかいた。体力だけでなく「歴史的想像力」が要求されるので頭もけっこう疲れる。

4月23日 面白い本を読んだ。原裕美子『私が欲しかったもの』(双葉社)だ。原は北京オリンピックのマラソン候補選手でもあった。オビ文がすごい。「窃盗症、摂食障害、騙し取られた1300万円、婚約不履行、7度の逮捕…」。盗んでも盗んでも手に入らなかったものとは何だったのか。厳しいトレーニングの後の楽しみは腹いっぱいお菓子やレトルト食品を「爆食い」すること。体重が増えればコーチに叱責されるので、食べたものはすぐに吐いてしまう。食べて満腹感を得ると、その直後に簡単にすべて吐いてしまう「ワザ」を修得してしまったのだ。そして大量に食べるお菓子類のために万引きをする。これも快感だった。盗んで食べて吐いて競技にのめり込む。何ともすさまじい日常だが、本人は大食いも万引きも「病気だと思ったことはなかった」という。孤独で、自分の居場所を探し求め、食べることと盗むことに居場所を作ってしまった若い女性の壮絶な物語だが、さわやかな読後感もある。彼女は今も治療を続けながら回復の道を歩んでいる。

4月24日 歯医者の予約があったので駅まで歩いた。治療が終わってランチを食べようと思ったが、食べたいと思うものがない。西武の地下食品売り場まで出て、お寿司を買い、駅ナカで一人ランチ。同じ駅ナカにあるロフトで小さな付箋紙を買う。450円といわれてのけぞった。同じく隣のスタバで飲んだカフェラテも460円。これで千円札が消えた。普段、どれだけお金をつかわない日常を送っているか痛感。

4月25日 今日は姫神公園から神宮寺岳。登る前に同じ山域にある式内社・副川神社跡を見に行く。山に登り始めるとずっと雨、これまで何百回も山行しているが雨合羽(レインウエアー)やダウンウェアーを忘れたことはない。ところが今日は油断、車の中にレインウエアーを置いてきてしまった。幸いなことにSシェフから傘やウインドブレーカーを借り難を逃れたが、猛省だ。雨が激しくなったので山は途中で引き返した。帰りは協和町の唐松城を見学に寄った。正直なところ唐松城はまったく魅力のない場所でガッカリ。能舞台がなぜここにつくられたのかもわかって興ざめ。歴史を舐めると痛い目に合うゾ。
(あ)

No.1052

「空腹」こそ最強のクスリ
(アスコム)
青木厚

 2月の健診の結果で猛省、ダイエットを始めて2カ月が経過した。順調に体重は減り続けている(約4・5キロ減)。食べる量を少なくしているだけの減量法だが、週1回程度朝ご飯を抜く「16時間半日断食」も実践している。これが本書の要諦でもある。確かにここでガクンと体重は落ちる。さらに16時間空腹を保つことで、疲れた内臓が休まり、細胞が修復して、元気がみなぎって……と書けば薄手のベストセラー本のようで嘘くさい。でも体重が落ちれば要は何でもいい。この本の版元は「アスコム」という聞いたことのない出版社だ。たまたま同じ時期に読んだ高橋大輔『最高におもしろい人生の引き寄せ方』も同じ版元の本だ。いま「受け」に入っている版元なのだろう。勢いがあるのだ。でも両著ともセンセーショナルな書名の付け方に少し危うさとインチキ臭さも感じてしまう。過度に信頼するのは避けたほうがいいのかも。自分の身体のことは自分にしかわからない。ダイエットはもう数か月は続けるつもりだが、正直なことを言うと本書もちゃんとは読まず、活字の表層を斜め読みした程度だ。

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