Vol.1059 21年4月17日 週刊あんばい一本勝負 No.1051

エプロン・コスプレの日々

4月10日 週末の「半日断食」はまだ続いている。今日も昨夜6時の夕食以来、何も食べず、さきほど18時間ぶりにリンゴ・カンテンのランチ。空腹もまんぷくも両方とも縁遠い生活だ。体調はすこぶるよくて、体重はこの2カ月で5キロ減。このあたりでピタリと止まったまま1か月が過ぎた。ここで投げやりにならず我慢強く今の食生活を続ければ半年間で10キロ減も夢ではない。

4月11日 快晴だ。もうこれだけで儲かったような気分になる青空だ。今日は五城目にある高岳山。小さな山だが、中世、戦国の世に大きな役割を果たした城塞のある場所。海が道の大動脈であった時代、海が近く、八郎潟のあるこの場所は、何かと便利な地勢だったのだろう。鎌倉から江戸の始まりまで秋田の歴史の中で、それなりの役割を果たした歴史の山をダラダラと散策する。
 
4月12日 ソーセージの塩分がきつすぎて、夜、何度か目を覚ましてしまった。通販で買ったブラジルのリングウイッサという腸詰だ。これがブラジルのサトウキビ焼酎ピンガと実に相性がいい。ついつい?みすぎてしまった。まだ胸のあたりがむかついている。昨日の高岳山は好天に恵まれ楽しかった。でも帰りの温泉が最悪だった。洗い場も脱衣場も極端に狭く、シャンプーは置いておらず、シャワーはきっかり5秒で湯が止まる。そのくせ入湯料が500円というのだからぼったくりだ。塩分過多とせこい温泉施設のおかげで気持ちいい1日が台無しだ。

4月13日 ある大手の会社が主催する秋田県のイベントに助言を求められ打ち合わせをズームでやりたい、と要請された。わざわざ東京から来るのは大変だし、こちらにも迷惑をかけるから、との配慮からだろう。ズームはやってみようかと思ったこともあったが、「相手がいない」と気が付いてやめた。新しいことをはじめれば、たぶん未知の新鮮な世界が待っているが、その逆のわずらわしさも引き受けなければならない。もうそのわずらわしさと向き合うエネルギーがない。

4月14日 複数の友人から邦画「すばらしき世界」(西川美和監督)の好評価の報告が相次ぎ、「早く観ろ」とせかされている。秋田市では夜限定で上映されているようだ。とりあえず原作となった佐木隆三『身分帳』(講談社文庫)を読んだ。読みだすと止まらなくなった。原作には「刑務所」に関する膨大な法律や規律、約束事の事務的なデータ資料として挿入されていて、読むのが一苦労。けっきょく昨夜はほとんど寝ずに460ページの文庫本を完読。この本の前はバブル期に「北浜の魔女」といわれた個人史上最高額の負債を抱えて逮捕された女性をミステリー仕立てで小説にした葉真中顕『そして、海の泡になる』(朝日新聞出版)を読んだ。これもかなり面白かった。いい本があれば過ぎていく時間も充実感が伴う。

4月15日 映画『すばらしい世界』を早速、観に出かけた。客は3,4名しかいなかったが、映画は予想通り面白かった。これはたぶん原作を読んだせいだ。小説では回りくどく、すっ飛ばしたくなる場面が多かったが、映画は緊張感に満ちたシーンの連続で、一瞬たりとも飽きさせないのはさすが。その代わり大切な物語のリアリティとなる小さな枝葉がすて刈り取られていた。映画は飛躍や省略を役者の表情でカバーしながら進行する。「なぜ、急に逃げ出すの?」といった不可解さを観る人に抱かせる危険とも隣り合わせだ。原作を読んでいなけれ、よく意味の分からない主人公の行動は監督の不見識として、批判してたかもしれない。

4月16日 布団カバーが破れた。もう20年も世話になったもの、買い替える時期だ。東京インテリアで5000円程度の布団カバーを買い、レジに向かう途中、眼に鮮やかなオレンジ色のエプロンが飛び込んできた。3000円ほどだったので衝動的に買い求めた。買ってから気が付いたのだがエプロンがずっと欲しかった。エプロンは汚れがひどく数回使うと洗濯するのだが油汚れなどはなかなか落ちないし、食事や台所(事務所)がパッと華やかになる派手な色のエプロンが欲しかった。オレンジ色のエプロンは食欲が増しそうだし、モノトーンの世界の仕事場にひときわ映える。まだダイエット中なので料理はご無沙汰だが、ひとりのランチの時間、意味もなくオレンジのエプロンを身につけコスプレを楽しんでいる。
(あ)

No.1051

カルト宗教」取材したらこうだった
(宝島社新書)
藤倉善郎

 出版の世界の片隅で禄を食んでいるのだが、中央で起きている業界の出来事にはとんと疎い。アウトドア関係の本や雑誌を出していた「エイ出版」が最近倒産したことも知らなかった。毎月、新聞に大きな広告を売っている「親鸞」関係の本の出版社が実はカルト宗教系というのも本書で知った。いい本を出すなあと感心していた「デスカヴァ・21」というお洒落な名前の出版社も、その出発点は自己啓発セミナー大手なのだそうだ。本書はもう8年も前に出た本だが、知らないことばかりで、まるでテレビのワイドショーを見ているような気分になった。宗教は信じるのは自由だ。でも水や壺や得体のしれないオフダを売ったりするカルトには無性に腹が立つ。医学に頼らず病気を治すという類のカルトはあきらかに犯罪だと思うのだが、政治や法律の力でそれを罰する方策はない。信仰の自由の壁は厚い。本書とともに中島らもの「ガダラの豚」を読むと「カルトの正体」はよくわかる。広い意味でとらえると現代に蔓延しているオレオレ詐欺の類もカルトの系列に位置しているし、BSテレビ放送のテレビ・ショッピングもカルトの世界と紙一重だ。

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