Vol.1038 20年11月21日 週刊あんばい一本勝負 No.1030

経験から学べない

11月14日 そろそろ「おでん」が食べたい。おでんと言えば西武にある魚屋・北辰のすり身種が一番だ。もう出ているころだろうと買いに行くと、去年まで棚に積んであったおでん種が姿を消していた。おまけに「北辰」という社名までがない。どうやら去年、社名を変更したらしい。本社は仙台だとばかり思っていたら千葉の柏だったこともネットで知った。仙台に行くたび駅ナカの「北辰」で寿司をつまむのが楽しみだったが、あの店は大丈夫なのだろうか。

11月15日 筋肉痛は2日で消えた。家も事務所も2階にのある小生にはかなり堪えた2日間。今日は山行がないのでのんびり週末。どこにも行かず、料理もせず、ボーっと事務所で呆けていた。やらなければならないことを1日1日延ばしていくことにも慣れ、やらなければ死ぬわけでもない、と居直れるようにもなった。こんなふうにダラダラと時は過ぎていく。

11月16日 コロナ禍でもマスクとかトレペとか消毒液とか、なくても別に困らなかった。ストックする習慣もない。しかし「ウエットテッシュ」が店頭から消えたのはちょっとうろたえた。普段からこの手のものを多量に使用はしないのだが重宝はしていた。テッシュを濡らして代用したがまるで違う。そのウエットテッシュがようやく普通に出回りはじめた。うれしい。

11月17日 思い立ったが吉日。近所のK医院でインフルエンザの予防注射。生まれて初めての経験。ショックだったのは注射前の血圧測定の数値が高かったこと。健診では130から140の間なのだが、なんと170近い数値がでた。体重が増えるのと血圧が高いのだけは勘弁してほしい。この二つさえ正常なら病院に行かずに済むからだ。いやあインフルどころじゃない。

11月18日 散歩の途中、下校中の小学生5,6人の女子グループが私の目の前を歩いていた。その輪の中に突然1羽のカラスが乱入。あっという間で何が起きたのか理解ができなかった。カラスは女の子の頭めがけて突撃し輪がばらけると、今度は一番小さな子をめがけて2度目の攻撃。女の子は転げまわり阿鼻叫喚だがカラスは攻撃を止めない。女の子は道路脇の大きな屋敷庭に逃げこんだが、カラスはその庭にまで追いかけていく。直接危害を加えるのではなく頭を狙って何度も低飛行アタックをかける。カラスは6度くらいアタックを繰り返すと何事もなかったように飛び去っていった。この間、3分くらい。私は何もできないまま佇んでいた。

11月19日 稲川町の雄長子内岳へ。天気のアンバイをみながらの山行なのでこの日(木曜)しかない。天気予報は曇りだが山中はピーカンの青空。下山してからは増田の佐々木農園で恒例のリンゴ狩り。雄長子内岳は結構きつい山だ。特に下りは登りと同じ時間を要するほどの急坂が続きヘロヘロだが、農園でたっぷりリンゴを買い(もらい)、家にたどり着いた。すぐに床屋さんに直行し、けっきょく夕食抜きですべてが終わったのが8時半。

11月20日 どうせヒマだろうととった昨日の休みだったが、逆目が出た。昨日を狙ったように仕事の数々が同時に動き出した。編集中の4本の本の制作・打合せが昨日今日に集中してしまった。おかげで今日はいつもより1時間早起き。打ち合わせやゲラの手配、原稿の入稿手順などの準備。午前中に2つの打ち合わせ、午後から印刷所に入稿する原稿が1点、新しく入った原稿読みにもたっぷり時間は取られた。何年やっても「経験」や「学ぶ」ことからほど遠い自分にガックリ。
(あ)

No.1030

野球の国
(光文社文庫)
奥田英朗

 プロ野球を観戦するため日本全国を旅する紀行だ。プロ野球といっても消化試合や二軍戦が主で、場所は地方球場や台湾だ。著者は中日ファンだが、試合でミスした選手にはあられもないヤジを飛ばす。時には家庭や女性問題、性癖まで口汚く容赦ない。さらにプロ野球選手に「さん」づけは必要ないという。原も長嶋も松坂も呼び捨てでいい。それは彼らの屋号だからだ。屋号に「さん」は変ではないか。ヤジを飛ばすのは、その根っこに選手たちに対する確たる畏敬の念があるからだという。プロの選手がどれほどすごい存在なのか、そのすごさを想像する物差しをちゃんと持っているからヤジってもいいのだ。その例として子供時代、身近にいた天才少年たちがプロの世界では補欠にもなれない現実を誰でも経験していることを挙げている。私たちは少年時代に見たあの「天才少年たち」のその後を媒体として、プロの世界のすさまじさを疑似体験しているのだ。こんな一説もある。「プロ野球がつまらないとはよく訊く言葉だが、それはテレビで巨人戦しか見ていない人の意見だ。OBの説教じみた解説と、アナウンサーの不必要な絶叫が、野球を安っぽく見せているのだ」。

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