Vol.1034 20年10月24日 週刊あんばい一本勝負 No.1026

密と無人の二極化が進む

10月17日 健康診断が今年は来年の2月まで延びた。病院ではコロナ対応で例年の半分くらいの受診者しか受け入れられないため時間がかかっているのだ。今年はほとんどカレンダー通りということがない。中止になったものもあるが、何の通達や案内もないままスルーして、終わっていたというケースもいくつかあった。今年の忘年会は「なし」が増えそうだ。行きつけの居酒屋も定休日の日曜以外に次の日の月曜も定休日にしたという。もう例年通りはなしと思ったほうがいい。

10月18日 「1本勝負」という書評を毎週書いているて、もう1000回を越している。書く本に困るということないが、このところンチ。この1カ月あまり奥田英朗の本しか読んでいないからだ。奥田の本は小説もエッセイも無類に面白い。既刊本を文庫ですべてそろえた。その数約3〇冊。いまだにはずれがないのが怖い。

10月19日 昨夜は今年初の鍋。きりたんぽではなくイモノコ汁だ。アブラゲ、ゴボウ、鶏肉になめこ、しょうゆ味がスタンダードで、山形や仙台の芋煮会が有名で牛肉を使う地域もあるが、これはそっちが特殊だ。この時期イモノコを使った鍋は全国にある。というのもイモノコの鍋は稲刈りが滞りなく終わったことを祝う収穫祭のハレの料理だからだ。コメが採れ救荒作物のイモノコが不要になり、これを放出するため祝いの鍋というのが始まりなのだ。驚いたのはセリの値段。一束が200円近くする。セリがこんなに高価だったとは買い物をするまで知らなかった。

10月20日 最近使っているカメラはリコーのGR。ヤフオクで2万5千円だった。人気機種だが初期のもので操作がけっこう複雑だ。画質が良くて満足しているのだがシャッター音が難点だ。しないのだ。山では片手で瞬時にシャッターを押す。半押しでじっくりピントを合わせてシャッターを押す、というのは難しい。このカメラを使いだしてから失敗(ピンぼけ)写真が増えた。半押しなしで強引にシャッターを切ってしまうからだ。シャッター音が小気味いいカメラに買い替えるか、もう少しこのカメラに慣れてみるか、いま悩んでいるところだ。

10月21日 高速道を走るとき他の車のナンバープレートを観るくせがある。秋田県以外の車を見つけるとなんだかうれしくなる。ナンバープレートに興味あるのは住んでいる場所と関係がある。医学部のある場所なので近所のアパートの駐車場の車はほとんどが県外ナンバーだ。新潟や茨城、岩手や千葉などがよく目につく。不思議なのは東京ナンバーがほとんどないこと。普通車の小型のものが多いのも特徴だ。前に沖縄ナンバーの車があり興味津々だったが、すぐに引っ越したようでいなくなった。運転は好きではないがナンバープレート観戦があるから長距離も我慢できる。

10月22日 毎日、判で押したように仕事をするのが息苦しくなった。休日だが休みをもらい朝からフラリと電車に乗り山形酒田へ。なんの予定もない。美味しいランチを食べ、町を散策し、図書館で調べ物をして、夕方、静かに帰ってきた。電車は1車両1人のぜいたくな独占状態。駅ナカのスタバでコーヒーを頼んだら店員の言葉が早くて、よく聞き取れず、何度か聞き返した。社会のテンポからズレて、対応が鈍くなっている兆候がありガックリ。

10月23日 週日の地方都市の繁華街は例外なく人通りが途絶えて、人っ子一人見かけない。でも道の駅や人気レストラン、図書館やパチンコ店、激安スーパーには人があふれている。地方ではあきらかに密と無人の二極化が進行している。残酷なほどの都市一極集中を肌身で感じてしまうが、これが日本の現実だ。にぎやかで華やかな場所に身を浸したい、と思うときもあるが、そんな時は近場の道の駅や日帰り温泉に行く。そこには人があふれていて地方都市の寂しさを癒してくれる
(あ)

No.1026

カミーノ!
(幻冬舎文庫)
森知子

 NHKの番組で観た巡礼のドキュメントが面白くて本を探したら、本書がヒットした。カミーノとはスペイン北西部の大聖堂サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して歩く巡礼のことだ。ここはヴァチカン、エルサレムと並ぶキリスト教徒の3大聖地のひとつだ。巡礼の歴史は1000年以上で、サンティアゴまでのルートはヨーロッパ各地から伸びている。サブタイトルは「女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅」。9年連れ添った年下のイギリス人夫から、突然離婚を迫られ、傷心と勢いで意味もなく旅立った30代の女性のハチャメチャ紀行エッセイだ。著者は東京生まれで鹿児島育ち、編集プロダクションを経てフリーライターになったのだが、離婚と同時期にその仕事もほとんどがなくなってしまう。イギリス人夫とはパキスタンで出会ったのだが、その離婚の理由というのがよくわからない。わからないばかりか、著者のイギリス人夫への執着というのがすさまじい。よほどいい男だったに違いない。巡礼の旅は楽しくて「もっと続けばいい」という前向きな気持ちがあふれていて読むこちらも気分がいい。なによりもイギリス人夫のおかげで英語を話せるのが、彼女の最大のアドヴァンテージだ。

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