Vol.997 20年2月8日 週刊あんばい一本勝負 No.989


ようやく雪が降った

2月2日 1日1本、アマゾンプライムの日々。『黄金のアデーレ』はナチスに奪われたクリムトの名画を国と争って奪い取る実話。副題は「名画の帰還」。邦画では『百円の恋』が面白かった。自堕落な33歳のダメ女が一人前のボクサーになっていく話なのだが、安藤サクラの俳優としての身体能力の高さが見事。映画の選択に困ったときはロバート・デ・ニーロの作品を選んでしまう。当たりはずれが少ないからだろうか。

2月3日 日曜日は山行もなく(雪が降らないので)、整理整頓の続き。スクラップを容赦なく捨てた。時間がたって見直すと「なんだネットで確認できるじゃん」といったものが大半だ。こうして何度かの取捨選択に生き残った「タネ」が企画の柱になり、原稿書きの「ネタ」になる。そのために日々、切り抜く必要ないニュースまで切り抜いて、せっせとA4の用紙に貼り込んでいる。

2月4日 HPトップ写真は毎日散歩をしている城東十字路の地下道である。いつもはアウトドア系の写真がほとんどだが、たまにはこんな感じの写真も撮りたくなる。最近はこうした普通の日常を切り取る写真に強く興味を持っていて具体的には「廃屋」にひかれている。県内を車で走っていると、寂れて朽ち果て消えていく寸前の廃屋を目にすることが多い。廃屋は演劇に似ている。一度限りの出遭いのような緊張感がある。

2月5日 遠方から友人が訪ねてきて宴会。その後、ひとり2次会。なじみのバーで調子に乗って午前様、起きたのは午後様だ。モーレツな二日酔いで、「もう一生酒は飲まない」と神に誓った。それはともかく謎なのは体重。飲食後の体重が宴会前の体重より2キロ近く落ちていた。確かに昨日は2万歩近く歩いている。料理も普通のコース料理しか食べていない。でもちょっと減りすぎ。酒を呑むのにものすごいカロリーが必要なのだろうか。

2月6日 二日酔いでほとんど横になり本を読んで過ごした。今春、南木佳士の『山中静夫氏の尊厳死』が映画化されるという。平成5年に書かれた物語だが、この本は読んでいなかった。急いで取り寄せ読んだのだが、文庫には表題作のほか、もう一本『試みの堕落論』という中編も併録されている。カンボジアとタイ国境の難民医療キャンプに参加した時の休暇旅行のことを綴ったもの。この休暇旅行に通底して流れているのは「秋田」という土地をめぐる思い出だ。登場人物の売春宿を経営する女も、同僚の女好きの理学療法士も、著者自身が学んだ大学のある場所も、実はみんな秋田である。書名とは全く関係なく秋田物語として読める興味深い作品だった。

2月7日 ようやく降ってくれました、雪。1日に3度も4度も家の前の雪かきをしなければならない状態が、こっちの常態だ。昨日はまさにそんな普通の真冬日の一日。でも寒さには年々弱くなっている。これは実感。最近はいつも寝床で「寒くて目が覚める」恐怖心と闘っている。50代までは考えもしなかったことだ。20代は真冬も半そでTシャツで寝ていたし、40代までモモヒキとは無縁だった。今は重装備で布団に入る。それでも寒いのだから情けない。酒が弱くなり、寒さに弱くなる。順調に年をとっているのだろうか。
(あ)

No.989

俳句は入門できる
(朝日新書)
長嶋有

 「止まり木や〈夜は長い〉と言う男」――この句は今年の秋田県俳句大会で講師特選に輝いたもの。俳句を始めたばかりの高校生の句だ。いうまでもなくこの句はあの太宰治が銀座のバーで飲んでいる有名な写真から連想されたもの(本人は太宰の映画から着想したという)。しかし、作った高校生には申し訳ないが、この句のどこがいいのか、この半年、ずっと考えているのだがよくわからない。たとえば「秋田弁音声検索なもだめだ」は、サラリーマン川柳の秋田の去年の入選作。山仲間では「金足農スクールカラーはナスの色」という句を作った人もいた。もうこうなれば俳句も川柳も何でもあり、何がよくてダメなのか、よくわからない。そこで本書を読んだわけだが、書名の不思議さにもひかれた。俳句は「一人でできる」「他人とできる」「行使できる」「どこまでできるか」という章題が「できるか」で構成されていることから発想された書名なのだろう。著者は芥川作家で、ブルボン小林で評論活動もし、句集まで出す俳句好き。で期待をもって読んだのだが、やっぱり俳句とは何かよくわからない。言語センスのなさが自分の弱点をだとわかってはいる。でも「三つ食へば葉三片や桜餅」は高浜虚子作で評価され、「それ桜あれは桜かこれ桜」はド素人の句。混乱に拍車がかかるばかりだ。

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