Vol.961 19年5月18日 週刊あんばい一本勝負 No.953


海外渡航の準備に忙殺

5月11日 酒田出張で鶴岡大山公園の中にある八森山を歩いてきた。300メートル弱の小さな山だが見どころは多い。最上氏に支配される前まで武藤氏の居城だった場所だ。大山という地区は秋田に酒造りを教えてくれた「東北の灘」と言われたところ。最上氏改易後は徳川の天領地になり、そこで酒造りが栄えた。見慣れない巣箱のようなものがい森のたるところにあった。コテングコウモリの巣だ。コテングコウモリ……秋田ではまったく聞いたことがないが、ギフチョウもそうだが庄内の山ではこの小動物の保護に熱心のようだ。冬には越冬用の暖かそうな巣袋もよく見かける。登山道のいたるところに「立入禁止」の看板が目立つ。これはミスミソウの群落があるからだ。ミスミソウというのも聞きなれないが「雪割草」のこと。県が違うだけでいろんな視点に違いが出てくるのが実に面白い。

5月12日 今日は南郷岳。横手市三内(イブリガッコのふる里)にある681mの山だ。けっこう標高があるので山頂付近には雪が残っていた。朝は6時起き。出発は7時なので、この1時間で朝ごはん(卵かけご飯とお茶漬け)を取りコーヒーを飲んでから出発。10年前、体力はあったが山に登る前の準備がうまくできず、前日から眠られず、食欲もなく、便通も悪く、体力以前に問題が多くあった。登る前がけっこう苦痛の連続だったのだ。今はそれがない。年の功というのだろうか。

5月13日 昨日は軽いトレッキングだったのに今日は筋肉痛だ。9日、12日と連チャン山行のせいだろうか。6月中旬から2週間余ブラジルに行く日程が決まったからだ。長時間のフライト(片道約30時間)から考えて、これが最後のアマゾン行きだろう。体力的な問題だけでなく精神的にもかなりのストレスになる。今回は格安ビジネスを使うつもりだ。それでもやっぱり旅先では何があるかわからない(体力的に)。

5月14日 テレビをみていたら説明ナシに耳新しい横文字が使われていた。「ウーバーイーツ」というのはフード・デリバリー・サービスで、有名飲食店の食べ物を通販するところらしい。もう一つは「フレコンバック」。工事中の路上などにある「トン袋」のようなもので、軽量で折りたためる出荷や保管のためのフレキシブルな袋のこと。「ジンマート」というのは薬の名前だ。ストレスなどで身体にできる蕁麻疹のための薬で、私もストレスがたまると腹周りに湿疹ができる。だからこの薬はうれしい。こんな外来語たち、皆さんは知っているんですか。

5月15日 読み終わった文庫本(半分は読んでいないか)を友人たちに無料頒布しようと事務所のすみに展示。400冊ぐらいだろうか。本は再利用してもらうのがいい。ということで本を並べていると、もう一回読んでみたいなと思う本が、数冊出てきた。司馬遼太郎『十六の話』、早川義夫『生きがいは愛し合うこと』、吉本・糸井『悪人正機』などだ。もう新しい本に飛びつくより過去に読んだ感動本をもう一度、という世界に入ってしまった。

5月16日 肺炎球菌の予防接種を受けた。学校を出てから予防接種は初めて……ではなかった。10年前、ブラジル・サンパウロの検疫所で「黄熱病」の予防接種を受けていた。アマゾンに入るために必要だったからだ。今回またアマゾンに行くことになり、そのときの接種証明書を探したのだが見当たらない。黄熱病は一度接種すると生涯有効なのだ。もう一度受けるために接種場所を探したら近場では仙台空港内検疫所。薬が世界的に不足していて指定日以外は受付ないという。予防接種が必要な場所が地球上にはまだたくさんあるが、その対応が国内ではできていないのが不思議だ。

5月17日 煩雑な手続きのある海外渡航が予定に入ったためか毎日あわただしい。とはいいながらも地球の反対側のアマゾンに行くのにデスクトップの前でチャカチャカやるだけで航空チケットもホテルの手配も簡単にできてしまう。どうしようもないのはそのスケジュールのために前倒しになる「仕事」のこと。新聞原稿や留守中に出る予定の3点の新刊、広告出稿や定期通信の編集作業などが前倒しになる。そのへんの仕事管理について新入社員と話し合わなければならないのだが、なかなかその時間がとれない。週末にでもじっくり話し合いたいのだが、敵は月山にスキーだという。
(あ)

No.953

水壁
(PHP研究所)
高橋克彦

 お隣り岩手県在住の高橋克彦の東北をテーマにした大河小説も、実はちょっぴり苦手だ。あまりにスケールが大きく善悪のはっきりした物語が多いのがその理由だ。しかし本書は秋田を舞台にした物語だ。元慶の乱は878年(元慶2)に起きた蝦夷たちの秋田城への反乱である。もう少し詳しく言えば、朝廷によって帰順させられた俘囚たちが、諸国に広がる飢饉のとき、蝦夷であることにより明らかな差別を受けたことを不満として起こした戦争である。詳しい資料は残されていない。本書にも参考資料として無明舎出版の『元慶の乱・私記』が挙げられている。秋田県側の史料もこの本ぐらいしかないのが現状なのだ。となると作家の出番だ。随所に想像力を挟み込める余地が出る。書名である「水域」とは米代川のことだ。ここから北は蝦夷の王国であり、南は朝廷の支配する国、という分水嶺である。平鹿の森で、蝦夷たちの棟梁である物部日名は飢餓から山中に逃げてきた秋田の俘囚たちと出くわす。ここから物語は始まり反乱の目が紡がれていく。真昼岳や焼山、高丘山や二ツ井、八郎潟や十二所など、なじみの地名が随所に出てくるから、物語にすっと入っていける。

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