Vol.941 18年12月29日 週刊あんばい一本勝負 No.933


おでん・宗教・冬将軍

12月23日 3連休はちょっとユーウツだ。と思っていたが次から次へと用事ができて退屈しないで済みそうだ。一日目の土曜日は打ち合わせひとつ。駅前喫茶店で原稿を読み、夜は脳性麻痺の中学教師S君と忘年会。二日目は朝寝。午後からは買い物、個人的な原稿書きをして昼食用カンテンを作る。夕食の準備もある。三日目はシャチョー室宴会。恒例のSシェフの打ったソバを食べ、最近小生がはまっている「おでん」との競宴だ。アッ、おでんの大根買うの忘れてた。

12月24日 コンビニで売っている「おでん」をおいしいと思った時期もあったが、やっぱりコンビニの練り物は不味い。しだいに足は遠のいた。「和食みなみ」の小ぶりのおでん種とツユが好きだが、ここは期間限定で年に2回食べられれば儲けもの。最近、西武の食料品売り場の魚屋さん(宮城県)が作るおでん種を買った。高くてびっくりした。練り物だけで卵も大根も牛筋もはいっていない。これがうまかった。今日はシャチョー室宴会。朝からおでんの仕込み。

12月25日 この1年、ボンクラ頭なりに「宗教」について勉強してきた。きっかけは天正遣欧少年使節を描いた若桑みどり著『クワトロ・ラガッツィ』を読んだこと。ここから日本に渡ってきたキリシタンに興味を持ち、山に登るたび隠れキリシタンに思いをはせるようになった。やがて山岳信仰の本をむさぼり読むようになり、関心は「山伏」え。そして最終的には「なにもない宗教」である「神道」に行きついてしまった。これが実に不思議な宗教だ。いやこれは宗教なのだろうか。創造主もいなければ主義主張もなし。開祖がいないし偶像もない。「教え」なるものもまったくない。ひたすら仏教のいいとこどりをしながら、でも確実に日本人の心の中に一定の住処を確保してしまった。

12月26日 社会に出てから他人様から給料をもらうことなく生きてきた。筋金入りの万年シャチョーだ。時にはボーナスや有給休暇、海外赴任とか丸の内という言葉にあこがれに似た感情を抱くこともある。でも友人によれば、サラリーマンとは「上司が将棋好きなら将棋、ゴルフと言えばゴルフ、カラオケが嫌なんて言うわがままは一切許されない世界」だそうだ。それは無理だ。となれば少年時代にあこがれた教師が自分には向いていそうな気もしないではない。いや、これもあのモンスター・ペアレントなる輩が猛烈に嫌いだから無理か。けっきょく今の自分になるしかなかったのだ。高望みも羨望ももうやめよう。

12月27日 いろんな媒体で「10大ニュース」が発表される時期だ。地元新聞社のトップは「金足農 甲子園準V」、2位が地上イージス問題で、3位に秋田犬ブーム。8位に「学テ11回連続トップ級」が入っている。出版ニュースのベストテンは、1位が「トーハン、日版、物流協業検討へ」。2位が「出版物の軽減税率認められず」。ベストセラーは「漫画君たちはどう生きるか」。こちらが出版界の端っこにいて何の影響も受けない立ち位置にいるせいだろうか、出版クラブビルが神保町に移転しようが、著作権法が改正されようが、なんだかいまひとつピンとこない事柄ばかり。地方に住んでいるひがみなのかな。

12月28日 ここにきてようやく本格的な冬将軍の到来。スキー場はホッとしているだろうな。寒いと身が引き締まる。風邪をひかないように重ね着して寒さ対策をする。風呂はじっくり湯に浸かって身体を温める。でも結局は寝る前の本読みで身体を冷やし元の木阿弥、となるのだが、これからはできるだけ早めに寝床に入るようにしよう。年末は東京の忘年会に出ないのでウイルス電車に乗らなくて済むのは助かった。電車が大雪で動かなくなる心配もしなくていい。この体調を維持したまま新しい年を迎えたい。
(あ)

No.933

七時間半
(ちくま文庫)
獅子文六

 BS11で放映されている森繁の「駅前シリーズ」はそのほとんどがDVD化されていない。同じ森繁の「社長シリーズ」はほぼすべてDVD化されている。この差は、たぶん「社長」のほうが「駅前」より色濃く1960年代の時代性を反映しながら高度成長という明るい未来を描いているからだろう。逆に「駅前」のほうはまだ近代日本の暗い色を強く残している、という点がDVD化から遠い要因なのだろう。自分がまだ10代だった「60年代」の森繁映画が大好きだ。明るい時代の躍動感を感じることができるからだ。それが昂じて源氏鶏太や獅子文六といった当時の人気作家の小説を読むようになった。「社長」イリーズの原作は源氏鶏太だ。さらに今年あたりから世間では急に獅子文六リバイバルブームが起きている。ちくま文庫では6点の復刻文庫が発売されているほど。読むとその理由はよくわかる。 本書は東京・大阪間が特急で七時間半かかったころの列車内ドタバタ喜劇だ。なのに文体も舞台設定や人物描写もちっとも古くなっていない。本書は川島雄三監督の手で「特急にっぽん」とい団令子主演の映画になっている。残念ながらこれはDVD化されていない。

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