Vol.936 18年11月24日 週刊あんばい一本勝負 No.928


健診まで3キロ体重を落としたい

11月17日 酒田市の「土門拳記念館」へ。たぶん個人的には日本で最も長く通い続けている美術館だ。今ちょうど「秋田点描」という土門が秋田の街角を撮った特別展示をやっている。秋田県は数年前、観光ポスターに木村伊兵衛の有名な「秋田美人」の写真を使って大成功した。私的にいえば、あれは木村の写真集が出た当時の本のカバー写真で、すでに超有名であり、それの焼き直しえはないか……という残念感のほうが強かった。新鮮で衝撃的な点からいえば、同じ時期に秋田市で撮られた土門の「バス停前に立つモンペ姿の若い女性」のほうがずっと秋田美人としてインパクトがあった。今回の展覧会ではその街角の美女の写真も見ることが出来そうだ。

11月18日 湯沢市の雄長子内岳。ピラミッド型の面白い山だ。一時間もあれば登れる山だが、今日は知らない人たちとも一緒だ。ワイワイガヤガヤおしゃべりに花が咲いた。下山して今度は増田の真人公園に移動。ここで芋の子汁鍋。調理法は湯沢風で、鶏肉に醤油ベース、芋の子はまるごと切らずに入れ、なめこも傘の開いたものを使う。おいしかった。昼食後はそばの佐々木農園で恒例のリンゴ狩り。一袋1000円で袋に詰め放題の出血大サービスだ。農園の方々のご厚意に甘えっぱなしで、いつも申し訳ない。今日の料理関係のシェフは湯沢出身のOさん。彼女のつくる湯沢名物の「天ぷら饅頭」や「さんまの天ぷら」という湯沢の郷土料理を、同じ湯沢出身の私は食べたことがない。どうしてだろうと考えてハタと気が付いた。私の両親はどちらも湯沢出身者ではないからだ。なるほど。

11月19日 今日は盛岡。けっこう毎日ハードな日々が続いているが、疲れはあまり感じない。Sシェフから勧められて食べている「熟成黒ニンニク」が効いているのだろうか。こういう栄養食品の類はほとんど信じていないのだが、この黒ニンニクは効いているような気がする。でも食欲がやたらとあるのは問題だ。毎日体重計に乗るのが怖い。この1か月間、ジワジワと体重が増え続けている。体調はいいのに精神的にはガックリと落ち込んでいる。健康診断は来年1月だが体重が1キロ増えただけでてきめんに不具合悪が増えてしまう。

11月20日 久しぶりにじっくりデスクワークができると思ったら、今日は午前中歯医者の予約。昨夜は盛岡から帰ってきたのが真夜中。車中、藤沢周平著『春秋山伏記』を読む。庄内弁の会話のリズムをつかむまでは大変だが、それに慣れるとスイスイ。この難解な(?)庄内弁を全国の読者たちはちゃんと理解できるのだろうか。藤沢は難解な方言にも注釈や解説をつけない。物語の雰囲気や世界観を壊したくないためなのだろう。盛岡の街を歩いて、秋田の人間が、庄内弁の小説を読んでいる。西国の人から見れば「同じ東北じゃないか」ということになるだろうが、いやいや、それほど単純な話ではない。いろんな文化や言葉があり、その複雑さの織り成す「知らない世界」を私たちは泳いでいる。

11月21日 物忘れがひどい。雄長子内岳では手袋を失くしてしまった。盛岡では取材先で資料を置き忘れた。ニッケル電池を使う充電式ICレコーダーにアルカリ電池を入れてしまった。昨夜は散歩中、パトカーに止められた。「Tさんですか?」「違います」「徘徊中のTさんと年恰好が似ていたものですから…」「おれ、徘徊老人?」「いや、あの、年恰好が…」――背筋を伸ばして若者のように歩いているつもりだったが、他人からは徘徊老人に見える……ショックで散歩をやめて家に帰りたくなった。ボーっと歩いているだけだから、何かを忘れて探し求めている老人に見えなくもない。早くこんなことは忘れてしまいたい。

11月22日 いつもワインなどを買っているお店で「リエット」なるものを買った。秋田の老舗の「つくだ煮屋」さんが作った洋風つくだ煮だ。マグロを玉ねぎと一緒にペースト状にしてオリーブ油や黒コショウで味付けしたもの。フランスなどではこれをパンやトーストに塗って食べる。早速これで赤ワインを飲んでみた。ちょっと甘すぎる気もするがワインの酸味にはぴったり。これを作ったつくだ煮屋の若主人はフランス滞在経験もある人のようだ。こういうのがつくだ煮のニューウエーブとしてヒットしたら、けっこうかっこいいよなあ。

11月23日 この1週間の節制が功を奏して体重が1キロ減。今月中にはもう1キロ減らして、今年中には目標の3キロ減を達成したい。しかしボチボチ忘年会の悪魔の日取りが決まり始める時期。毎日の晩酌でも「燗酒」がうまい季節だ。できるだけ間食をやめ、晩酌の酒量を減らし、余計な食い物を冷蔵庫に買い置きするクセを戒める。あとは運動量を増やす。これらを遵守すれば減量街道を問題なく突き進むことができる……はず。来年1月に予定している健康診断の日まで、どんなことがあってもがんばるゾ。
(あ)

No.928

秋田切支丹研究
(翠楊社)
武藤鉄城

 若桑みどり著『クワトロ・ラガッツィ』の衝撃がいまだ尾を引いている。日本にやってきた宣教師たちは、いわば大航海時代の先兵植民者であり、九州を中心としたキリシタン大名の多くは信仰心よりもヨーロッパの「富」に魅かれ入信……といった歴史的事実には目を見開かされた。この本を入り口にして「秋田のキリシタン」の歴史を勉強してみようと手に取ったのが本書だ。著者は郷土史研究で有名な角館の人だが、キリシタン研究でも高い評価を得ていた。しかし生前(昭和31年、61歳で物故)、その論考が本になることはなかった。本書は昭和23年に自費出版として刊行された「秋田キリシタン史」(角館時報社)を底本にしているのだが、その他のキリシタンにかかわる論考を集めて1冊の本に編んだのは版元の編集者である。本書の刊行日は昭和55年だから、著者没後20年以上たってから出た「初版本」である。ほとんどの項がたぶん昭和20年以前に書かれたものであるが、秋田のキリシタン研究にはなくてはならない労作になった。著者には大いに敬意を表したいが、一冊の本に編んだのは編集者の力だ。この方々にも深い敬意を表したい。

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