Vol.935 18年11月17日 週刊あんばい一本勝負 No.927


今週はずっと外に出ています

11月10日 週休3日の時代かなあ、とボンヤリ感じている。もう自分が差配して物事を決める立場にはないが、そろそろ真剣に考えていい頃合いだとは思っている。A1が普及すれば生産性や創造性の高い仕事しか生き残れない。「好きなことでしか勝ち抜けない」社会が、すぐそこまで来ているのだ。日本で初めて週休2日制を導入したのは三菱電機で1963年(月2回)。公立学校の週5日制が始まったのが1992年(月1回)。さらにさかのぼれば、アメリカの自動車会社フォードが週休2日制を導入したのが1926年で、日本でようやく青少年の労働時間の制限を定めた法律が施行されたのは1911年。週休2日制前の日本は「日曜が休みで土曜は半ドン」が定番だった。あの休みの形が決まったのが1876年の太政官達だから明治9年のことだ。「土曜半ドン」は100年以上続いたわけだ。いまだに「土曜半ドン」を懐かしがる人がいるのも不思議ではない。

11月11日 森吉山に登るのは何年ぶりだろうか。花の2百名山でもあり、大きな山域としてはそのすべてが秋田県内に属しているという珍しい山でもある。昔はこめつが登山口側から2時間ちょっとで登ったような記憶があるが、今はゆっくりのんびり3時間半。まあこんなもんだろう。往復6時間の行程は結構な運動になった。心地よい疲労感が身体に残っている。

11月12日 毎週1回、歯医者通い。ひとつの虫歯に平均3回ほど治療回数がかかる。反省もあり毎日の歯磨き回数を増やしているのだが、これはもう付け焼刃だろう。治療が終わって、気持ちを落ち着かせるため駅ナカのスタバで休憩。目の前に旅行中の高齢者夫婦。男はパソコンを開き、入念にキャリーバックを整理整頓。女はすぐに外に出て、買い物をしては帰ってくるを繰り返す。この間小1時間、この男女は一度も飲み物を頼まずに出ていった。「スタバは待合室」なのだ。

11月13日 高崎山のサルが、エサの減少を理由にストライキに入ったそうだ。「朝三暮四」という言葉がある。中国の故事で、サルがエサが少ないとクレームを言うので、主人が朝四回、暮れ三回のエサを逆にして与えたらサルは大満足、何も言わなくなった。サルは単純なので、この程度で騙せるという意味だ。もしかして高崎山のサルたちはこの故事を知っていたのではないだろうか。そして故事へ反撃ののろしをあげたとすれば、なんだかおもしろい。

11月14日 先日、山できれいで大きなキノコを観た。「マスタケ」という魚の鱒に似た色のキノコだ。花家圭太郎の時代小説『暴れ影法師』(集英社文庫)にその「マスタケ」を食べるシーンがあった。秋田では藩政期から食べられていたキノコのようだ。それにしてもこの花家の秋田藩を舞台にした小説では、いろんなことを教えてもらった。もう何度も同じ小説を読んでいるのだが、読むたびに新しい発見がある。新刊が待ち遠しい作家だが、数年前、60代の若さで物故してしまった。存命であれば、誰も知らない「江戸時代の秋田」をいまも縦横無尽に描き続けていたにちがいない。本を読むたびに早逝が惜しまれる。

11月15日 このところ集中して読む必要のある本や、ある取材に向けての面倒な取材メモづくりがあり、午後から外出して喫茶店で仕事をしている。駅ナカの喫茶店で2、3時間ねばる。環境が変わると集中力は確実に増す。でも毎日だと慣れがでてダラダラと居眠りして元の木阿弥。この習慣が1週間続いて、そろそろ「飽き」てきた。思い切ってリフレッシュを兼ね、鹿角市まで出かけ戊辰戦争関連のイベントを観に行くことにした。これもまあ仕事のようなものだが。事前に資料館に電話を入れると「あまり期待しないで来てください」と言われた。

11月16日 今日も一日中、事務所を離れて外。午後からの雨が心配だが男鹿・真山登山。今週は都合5日間(昨日も入れて)、仕事を離れて羽根をのばすことになる。のびる羽根の余力がまだあるかどうか、不安ですが、まあ何とかなるでしょう。
(あ)

No.927

人生はどこでもドア
(東洋経済新報社)
稲垣えみ子

 著者はあのアフロヘアーの元朝日新聞記者で、サブタイトルは「リヨンの14日間」。プライヴェートのわずか2週間のフランス旅行が本になるのか、という個人的な興味から読み始めた。まえがきを読むと旅の目標(目的)は「外国で日本と寸分たがわぬ生活をすること」とある。もともとはリヨンで造られている日本酒の現場を友人たちと見に行く予定を立てていたのだが、その前2週間、リヨンに住んでみて東京と同じ暮らしをやってみたい、ということのようだ。朝起きてヨガをしてカフェで原稿を書きマルシェ(市場)で買い物し、食事はすべて自炊する。それを2週間続けた記録なのである。これがもう無類に面白い。カフェの常連になるための涙ぐましい努力や、マルシェで笑って買い物できるまでの試練は笑ってしまう。そして気が付いた。やっぱり本の命は「テーマ」だ。テーマさえ決まれば2泊3日の韓国旅行も立派なルポルタージュになる。そんなことを本書で改めて思い知らされた。観光地にもいかない、フランスなのに1軒のレストランの名前も登場しない。泊まるのは民泊で、言葉はできない。冷蔵庫も洗濯機も使わずにひたすら自炊。暮らすように旅をする50台の女性はイキイキ輝いている。

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