Vol.905 18年4月21日 週刊あんばい一本勝負 No.897


目の調子がよくないんです

4月14日 かなりストレスが溜まっている。体重も減らないばかりか増えつつある。休みをとってSシェフと伊豆山(神宮寺)へ。イワウチワが満開。これだけのイワウチワの群生が見られるのは県内ではここだけではないだろうか。もしかしてこのあたり(地元の人は西山と呼んでいる)の主であるMさんが毎年せっせと自分の手で植えているのではないか、というギワクもあるほど。下山して二人で「みなみ」で一杯。温かい焼酎をたっぷり飲む。

4月15日 東成瀬村取材。平良カブ、トマトジュース、赤べこ肉、熊カレーなどを買って試食しようと思ったのだが、どこで買えるのかわからない。村の人も分からないというのだから世話はない。平良カブは賞味期限が短いので無理としても熊カレーとトマトジュースは直売所で売っているが冬季は閉まっている。赤べこ肉に至っては村長までが「私の口にもなかなか入りません」という貴重品。全滅だ。

4月16日 今週いっぱいで東成瀬村の原稿を形あるものまでもっていきたい。と皮算用しているのだが……むずかしい。下書きはできているのだが、もっと取材して書きこみたい。目の調子がよくない。これが「焦り」の元凶かも。白内障に間違いないとおもうのだが、まだ怖くて目医者に行けない。早く原稿を仕上げて診察してもらおうとは思っている。

4月17日 近所のドラッグストアーで便秘薬を買う。いつものことだが、この日は中高年の店員が他の便秘薬を半ば強引に薦めてきた。「元の薬を徐々に減らし最終的には薬に頼らなくても便通がよくなる薬」といわれて飛びついた。冷静に考えればわかることだが、そんな奇跡的な薬があれば他の便秘薬は全滅だ。自分で薦めながら店員にはまるで熱が感じられないのもヘンだった。仕事がつまらなくて早く辞めたいオーラ全開のおばちゃんだ。もちろん服んでみても何も変わらなかった。薬は引き出しの肥やしに。

4月18日 4月も後半戦。GWまでいろんな日程が入っている。新入社員は特にハードだ。稲倉山荘への納入や遠野出張、東京の出版社研修があり、不在の日々が続く。私自身も東京や関西へ出張予定が入っているし、書きかけの東成瀬の原稿が一向に進まない。とにかく目の不調がネックだ。TVもPC画面もよく見えない。本の活字は読めるが長時間は無理。パソコンの反射光がよくないのかもしれない。

4月19日 昨日のクマの記事が気になった。16,17年の県内のクマの捕獲数に関しての「ツキノワグマ被害防止連絡会議」の発表記事だ。朝日新聞は捕獲数の半分が「生息域の9%に集中」し、その地点を「要注意メッシュ」として公表したとある。地図が添付されていないらし肝心の「生息域」がどこなのかわからない。メッシュという言葉も初めて聞いた。同じユースを地元の魁新報紙は「県土の6%に集中」と生息域という言葉を使わず、かつ地図入りでわかりやすい。もちろんメッシュという意味不明な言葉はどこにも使っていない。メッシュはコンピュータで計算するときのデータの最小単位、計算格子だ。同じ記事でも書き方や予備知識の有無でこんなにわかりやすさに差が出てしまう。

4月20日 冬の間、ずっとカモ(鴨)を食べたいと思っていたが、かなわなかった。のだが、昨日散歩の途中で入ったスーパーで岩手産カモを発見。普段は入らないスーパーなので寄り道するとたまにはこんなこともある。早速買って家でカモ鍋。ネギにたっぷりカモの脂を吸わせ、濃厚で上品な味のスープは絶品。汗をかきながらの季節外れの鍋だったが、あれ、カモの季語って冬でいいのかな、と考えてしまった。というのも「甘酒」の季語は冬だと思っていたら、なんと「夏」だったことを知ったばかりだから。
(あ)

No.897

極夜行
(文藝春秋)
角幡唯介

 もう書名を見ただけで、これはすごい本だな、と確信できた。書名がいいし、装丁もそれにこたえるようにシンプルながらも細部に気配りがきいている。著者のこれまでの本も駄作なしの実績ある物書きなので、心配はない。予想通り「巻を措く能わず」の当たり本だった。まだ4月だがいまのところ今年のベストワン。太陽の昇らない冬の北極を一頭の犬と命がけで旅をした四ヵ月の記録だ。傑作『空白の五マイル』を凌駕する作品のような気もするが、本書が彼の代表作の一つになるのは間違いないだろう。この高度情報通信社会では冒険や探検が成立すること事態が奇跡だ。探検のテーマを見つけることがすでに大冒険といっていい。読後ただただ「闇と氷の世界」の壮絶さに呆然。読み始めてかなりの違和感を覚えるのが「プロローグ」だ。大学病院分娩室の長女の出産シーンから始まるのには驚いた。最後のほうでその出産シーンの意味が明かされるのだが、冒険記に出産シーンという意外な組み合わせも、本に哲学的な厚みを与えている。行動と文章が幸福な結婚をした、本書はまれなケース。

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