Vol.882 17年11月4日 週刊あんばい一本勝負 No.874


東京・鳥取・京都

10月28日 今日から東京、米子、京都と3泊4日の旅。メインは鳥取で行われる「ブックインとっとり」のシンポジウムに参加すること。この年になると「もう次はないかも」という不安がどこかに影を落とす。昔の浮ついた出張とは何かが違う心構えのようなものがある。出張1日目は東京・蒲田泊。神保町の常宿がこの頃混んでいてとれない。羽田に近いし、まあどこでもいいかと蒲田にしたのだが、ホテル周辺の飲食店はほとんどが肉系なのに驚いた。東京は雨、台風の影響なのだろうか。

10月29日 2日目は鳥取。羽田で地方小のK社長と合流、ぺちゃくちゃおしゃべりしながら鳥取着。タクシーで会場の県立図書館へ。会場には朝日新聞記者のY君が忙しそうに仕事していた。数年前まで国際教養大の学生で、モモヒキーズの山仲間で、うちのホームページに留学日記などを書いていた若者だ。「ブックインとっとり」は今年で30周年、それを記念したシンポジュームだったが、行政からの補助金などをもらわずに独自の努力で「本に関する地域おこし」を30年続けてきた。その情熱と努力には敬意を禁じえない。韓国からも20人を超す視察団が来ていた。これからもずっと続けてほしい。

10月30日 3日目は鳥取から京都に移動。夜は友人のHさんが経営する料亭に一杯。京都大学西部講堂横にある料亭で30代から通い慣れている店だ。カウンターで飲んでいると、ふらりと客が入ってきた。何の気なしに目をやると、あのノーベル賞の山中先生。奥の座敷で京大の先生たち3人が飲んでいたので、そこへ合流。不意打ちのような登場だったので思わず腰が浮き上がってしまった。自分の後ろから山中先生らの哄笑が聞こえてくるので、なんだか舞い上がって酒をがぶ飲み。

10月31日 4日目は京都から一気に新幹線を乗り継ぎ帰秋。昨夜の山中事件で深酒しすぎ二日酔い。新幹線ではひたすら眠っていた。盛岡まではあっという間だったが、盛岡からは各駅停車並のノロノロ運転で、いつものことながらイライラ。「こまち」は全新幹線の中でも車輌デザインはトップクラスだ。それに加えて「日本で一番ノロノロ走る新幹線」でもある。日本一が二つもある。
 
11月1日 旅の非日常から日常に戻るための儀式は夜の散歩。歩き終わるといつもの暮らしに静かに戻ってこられる。いつものコースを歩いているとガラス張りの居酒屋で奇抜なコスプレをした若者たちがパーティをしていた。そうか、今日はハロウィンか。その浮かれ具合を軽蔑したい気持ちもあったが、すぐに心を改めた。昔、クリスマスもこんな感じで、大人たちは若者たちをバカにしたのだろう。それがいつの間にかクリスマスは国民的大行事。ハロウィンだって日本的進化を遂げて一大イベントに変貌するかもしれない。でも自分が参加することはたぶん、ない。

11月2日 事務所のイチョウから葉っぱが飛散するのを防ぐため、朝から木をネットで覆う作業。予防策をとっても葉はそこいらじゅうに散る。毎日掃き掃除はするが夕方には道路に飛び散っている。朝から快晴で気持ちのいい秋の一日だ。今日も静かで穏やかな日であってほしい。県南地方のリンゴの収穫は例年より十日ほど遅れているそうだ。

11月3日 今日明日と新入社員は東京で行われる「神保町ブックフェア―」と「本の学校」イベントに参加、一人でいろんなことをやらなければならない。故障中の右ひざは寒ければまだジンワリと痛みを感じる。東成瀬村の原稿は思うように進まない。どこかにすき間を見つけて一点突破していくしかない。思いっきり体を動かせればストレスはずいぶんと軽減できるはずだが、それもかなわない。ひたすら仕事に没頭して、外からの明るい話題に期待するしかない。本が突然ガンガン売れ出し、仕事が飛躍的に増え、なんかの賞をもらったり、宝くじが当たったり……まあ、地道に仕事をしているのが一番かな、けっきょく。
(あ)

No.874

仕事消滅
(講談社α新書)
鈴木貴博

 今話題のAIの本。AIの中にはもちろんロボットも含まれていて、この労働代理としてのロボットの重要性が本書の要諦だ。サブタイトルは「AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること」。オビには著者の、ちょっとすっとぼけたような顔写真、その肩書は「経営戦略コンサルタント」とある。顔写真も肩書も違和感がある。なんとなく躊躇しながら読み始めたのは事実だ。でも読み始めると、真正面から「未来の日本の労働」を論じた本であるのがわかって一安心。意外なことも書かれている。AIとロボットが革新的に進歩する近い将来、多くの人が失業する。それは間違いないのだが、そのトップはドライバーで金融ファンドマネージャー(トレーダーのこと)、銀行員。裁判官や弁護士助手もアウトで、驚いたのは「医者もダメ」という。看護師は消えないが医者は消えるほうに分類されているのだ。逆にコンビニや量販店の店員のように細かな接客が必要な仕事はAIでは対処できないので残る。人類と同じ能力を持つAIが登場する日のことをシンギュラリティ(技術的特異点)というそうだ。それは2045年あたりではないか、という予測もなされている。

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