Vol.706 14年6月7日 週刊あんばい一本勝負 No.699


泡盛がうまい季節ですね

5月31日 モモヒキーズの予定が入っていないので、友人と2人で鳥海山に登ってきた。七高山直登ルートで、パートナーは年下のSさん。快晴、無風とまでは行かなかったが絶好の登山日和。山スキーヤーたちがいっぱいいたが、不思議なことに登山者はほとんどいなかった。どうしてだろう。坪足で七ツ釜避難小屋まで1時間10分。そこからアイゼンを装着し大雪渓、舎利坂を経て山頂まで2時間10分。合計3時間20分、最後の舎利坂はきつかった。下山は1時間30分ほど。尻スキーで降りればものの1時間弱で降りられる。尻ではなく自分の足で降りてきたが、鳥海山に限って言えば、尻スキーは積極的にとりいれるべきなような気がする。それにしても鳥海山に登るといっても、以前のような精神的なプレッシャーや筋肉痛も、いまはほとんどない。

6月1日 昨晩は鳥海山登頂を祝って「ひとり宴会」で二日酔い。起きたのが昼過ぎで、頭がガンガンする。深酒は久しぶりで明日の体重計が怖い。で、酒を呑んでいて無性に蕎麦が食べたくなった。秋田には蕎麦屋さんがほとんどない。コンビニ(セブン&イレブン)に「冷やしぶっかけとろろ蕎麦」を買いに走った。このコンビニの蕎麦は侮れない。そのへんのまずい蕎麦屋よりはずっと美味い。すぐに食べたかったので、コンビニ近くのスーパーの休憩所に寄り、そこでズルズル。ちょっぴり酔っていたとはいえ、わが人生で、こんなお行儀の悪いことをしたのは初め。でも420円もするコンビニの蕎麦、美味でした。

6月2日 いつのまにか6月に。そういえば、身辺が大きな地殻変動に見舞われ始めたのも、去年の今頃からだったなあ。そうかあれからもう一年も経ったのか。さてさて、今週は忙しい。明日から夏DMの発送がはじまるし、写真集「追憶の仙台」が出たので河北1面広告が木曜に掲載される。東京や札幌の書店でブックフェア―も開催されていて、その動向も気になる。先月に続けて地元紙に全3広告を連続で打つ予定だし、中旬には東京出張も。山は「鳥海山」を無事クリアー、今月は「神室山」「焼石岳」の2つの大きな山行が待っている。暑さが苦手なデブ系としてはつらい季節に突入してしまったが、汗だくでやるしかない。アッそうだ、今月は母親の1周忌もある。 この母の死からいろんな変化が起き始めたんだよな。

6月3日 馬、シカ、犬。この3つの動物に関する本や資料を読んでいる。秋田という地域や江戸という時代に限定したこれらの「動物」に関する記録が中心だ。仕事のためというわけではなく、個人的興味だ。いまも暮らしのなかに息づく動物たちが江戸期の秋田ではどのように「存在」していたのか、知りたい。昨日読んだ本『犬と、走る』(本多有香著・集英社)はそうしたテーマとは関係はないが、犬ぞりレースに出るために北極に移住してしまった岩手大卒(新潟出身)の女性の物語だ。久しぶりに破天荒というかメチャクチャな若い女性の生き方に、うれしくなった。電気もお店もない厳寒の地に自力でキャビンを建て26匹の犬たちと暮らす、半端ではない個性が魅力的。

6月4日 ダスティ・ホフマン監督の映画「カルテット」。第一線を引退した音楽家たちの入る老人ホームでのコンサートをめぐるコメディだが、あまり笑えなかった。こちらの感性の問題もあるのだろうが、ディテールがわかりにくい。イギリスの高齢者(それも芸術家)の心理のひだまで理解するのは、日本の田舎のオヤジには無理がある。ところで昨夜、生まれて初めて「ナマズのかば焼き」を食べた。Sシェフの手料理だが、思った以上に美味だった。京都の料亭主人から頂いた、とっておきスペイン・ワインを空けたのだが、赤ワインとナマズは予想以上にあった。それにしても長生きをすると、まだまだ未知なものとの遭遇がある。連日の好天で気分はいいが暑い。体重は落ちても、暑さに弱い体質までは改善されない。

6月5日 暑い日が続きますねえ。よりによってこんな時に繁忙真っただ中とは、皮肉です。夏DMの注文が入りだしました。今日は河北新報一面に全三段の広告を打ちました。ですから今週いっぱいは電話の前を離れらません。昨夜、散歩中にひらめきました。新聞広告というのは零細版元にとって経営の根幹をなす大事な「要素」だ、と。40年この商売をやってきて、実は初めて「閃いた」のです。遅いよッ、とか、なにをいまさら、といわれそうですが、現実(ネット社会・本ばなれ・広告効果)と向き合えば案外、新聞広告は「1点突破」的な、未来につながる販促戦略のような気がしています。零細版元と新聞広告、真剣に取り組んでいく意味のある課題のような気がしています。

6月6日 努力の甲斐あって体重がまた下がりはじめた。下がりはじめると「オイオイ、もういいよ」というまで勝手に下がり続ける。過去の経験からそのへんはわかっているので、チョーうれしい。のだが今日は突然、飲み会が入ってしまった。まったく予期しない不意打ちだ。暑くなってから酒はもっぱら泡盛の水割り。これもダイエット的には正解だったようだ。今日の居酒屋に泡盛は置いてあるだろうか。仕事は忙しいが、新入社員と学生アルバイトで、どうにか大きなミスなく前に進んでいる。時間に余裕のできたシャチョーの一番の関心事は「体重を下げること」、というのだから情けない。時間やお金の余裕があっても飲み食いはダメよ、という意味でもある。人生はうまくいかない。
(あ)

No699

イベリコ豚を買いに
(小学館)
野地秩嘉

 書名を見ただけで、おもしろそうと食指が動いた。著者は食のノンフィクションでは定評がある。それに、この書名で「はずれ」はないだろう。シンプルだが、プロっぽいうまい書名だと思う。本書のはじまりで秋田の田舎のスナックが登場する。そこでイベリコ豚のメンチカツを供されるシーンだ。「こんな田舎にもイベリコ豚がある……」。この疑問というか不可解が取材のきっかけだ。ちなみに秋田のスナックのメンチは近くのスーパーで買ったお惣菜だそうだ。ここから著者のスペインへの旅がはじまる。イベリコ豚オンリーの食物語ではない。生産者の激動のライフ・ヒストリーあり、スペインの奥深い食文化、世界の最新の輸入食品事情などまでがイベリコ豚を軸に、その周縁を行きつ戻りつ、物語はふくらんでいき、読者の興味を広げていく。二頭のイベリコ豚を買うことに著者は成功する。が実はそのあとのほうが物語としてはおもしろい。買った豚を日本で加工し販売する。これが最もハードルの高い行為だったことに気が付く。ここが物語の真骨頂。ときとしてライター稼業の内情までが嘆きとともに吐露される。主人公はイベリア豚ではなく著者本人なのだ。その脇役として登場する、精肉輸入業者や加工製品監修のプロ料理人、流通業者の葛藤や食品販売の難しさが、本書に彩りを添える。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.702 5月10日号  ●vol.703 5月17日号  ●vol.704 5月24日号  ●vol.705 5月31日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ