Vol.100 02年7月27日号 週刊あんばい一本勝負 No.97


「日本酒博士」篠田次郎さんの本を出します

 先日、神田小川町の「兆治」という居酒屋で「ボロシャの会」というよく意味の分からない飲み会があり出席してきました。主催者は25年にわたって「幻の日本酒を飲む会」の篠田次郎さんで、この会を解散したあとのOB会のようなものらしい(よくわからない)。篠田さんといえば日本に吟醸酒ブームを作った張本人で何冊もお酒に関する著作があるのですが、本業は酒蔵などの設計屋さん。近年ほぼ失明状態で、それでも意気軒昂に飲んだくれている素敵な大人(たいじん)で、小生は数年前から懇意にさせてもらっている。その篠田さんが「幻の日本酒を飲む会」の25年の軌跡をまとめた本を出したいという。こちらに異存のあるはずもない。2つ返事でお引き受けした。篠田さんには中公文庫など数点の吟醸酒の本を出しているが、この無明舎版がまとまればほぼ吟醸酒の100年については書き尽くしたそうで、酒の本は最後になるかも……とのことです。刊行は9月中を予定して編集中です。300ページ、1800円ぐらいの本になる予定です。ご期待ください。
(あ)
会で挨拶する篠田さんと著書

安野光雅さんとむのたけじさん

 先日、NHK・FMの収録のため東京に行ったのですが、収録後、思いもかけずゲスト(ラジオでは常連客という設定)の安野画伯から「一緒にご飯食べよう」と誘われ渋谷のスペイン料理屋にご一緒しました。とにかく気さくで明るくて天真爛漫な方で、いっぺんで好きになってしまいました。12時過ぎまで先生はつきあってくれたのですが、うれしくて残ったメンバーで4時まで深酒、お店の方にはご迷惑をおかけしてしまいました。アシスタントの小泉さんも清楚で想像通りのきれいな人でした。翌日、二日酔いのまま朝日新聞で羽後町の高橋良蔵さんと待ち合わせ、S記者と3人で順天堂大学病院にむのたけじさんをお見舞いに行きました。もう88歳ですが、先日、急に横手で容体が悪くなり東京で手術をしたとの情報があり心配して駆けつけたのですが、鼻からチューブをつけ寝たきりでしたが元気に大きな声で逆に励まされて帰ってきました。安野先生は70代、むのさんは80代後半、とにかく元気です。
(あ)

沖縄からマンゴーのお中元

 沖縄の出版社「ボーダーインク」からマンゴーが送られてきました。箱を開けたとたん、あの特有の南国の甘い香りが事務所に広がりました。誰も見ていなかったの我慢できずにその場でまるまる1個を食べてしまいました。すぐに冷蔵庫に入れましたが、こんな高価で珍しいものを舎員だけで食べてしまうのも申し訳ないとおもい、近所や行きつけのお店にお裾分けをしました。そんため、このHPに載せる写真を撮ってないことに気づいたときは遅く、この写真が舎員のために残されていた最後の一切れです。すみません。とにかく甘くて濃密な太陽の恵みにあふれたフルーツでした。南西諸島の宮古島からさらに南にある「来間島」の無農薬栽培のマンゴー園で育ったもののようです。ごちそうさまでした。
(あ)

この一切れの写真しか
ないというのが情けない

No.97

嘘つきアーニャの真っ赤な真実(角川書店)
米原万里

 ずっとこの本を読みたかったのだがアマゾンでは「品切れ」表示が出て買えなかった。書評は出るし、いろんなところで評判は聞くし、早く読みたいという思いは募るばかりだったが、アマゾンは何ヶ月たっても(いまだに)「品切れ」表示である。先日、東京に行ったとき神保町の東京堂で平積みになっていたのを見つけ夢中で読んでしまった。予想にたがわずめっぽう面白い。旧ソビエトの「晩年」の庶民や特権階級の暮らしを「等身大」で描いた私ノンフィクションで、幼年時代、チェコで暮らした著者と3人の同級生たちの物語である。思い出とその後の三人の変遷を追う構成なのだが、ノンフィクションというよりは私小説といったほうがいい物語の完成度を感じる。ギリシャ人のリッツア、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ、激動する東欧で(この東欧という言い方は現地の人にとって差別語で中欧といわなければならないそうだ)音信の絶えた3人と著者が再会する「物語の構成」はそう目新しいものではないが、その驚愕の現実と事実の迫力には本当に圧倒される。いい本だ。

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