Vol.98 02年7月13日号 週刊あんばい一本勝負 No.95


出版パーティの連続です

 5月に海外に出たので6月は秋田にこもってバリバリ仕事をしようと思ったのですが、下旬になって3週連続の出版パーティがあり、飛行機でひっきりなしに東京や大阪を往復。蛇足ですがマイレージのポイントは上がるばかりで、もうパリ往復のアップグレイド(ビジネス)ができるほど溜まってしまいました。6月22日は「箕輪成男氏の出版研究をたたえる会」(日本出版クラブ会館)で、これは発起人の一人である弓立社の宮下さんに誘われて出席、出版会の重鎮たち勢ぞろいで小生などひよっこ扱いもされない会でしたが、箕輪先生のスピーチがものすごく面白く楽しませてもらいました。刊行されたばかりの『パピルスが伝えた文明』(出版ニュース社)もわかりやすくておもしろくためになる本で、お勧めです。28日には大阪に飛び、川口正さんの『本と人を糧に』(編集工房ノア)の出版パーティ。この席で前からお会いしたかった関西の版元さんとようやくお会いすることができました。せっかく関西にきたのだからと京都の梁山泊に寄り、調子に乗って泥酔、橋本さんご夫婦に深夜大阪の宿まで車で送ってもらうという失態を演じてしまいました。7月にはいって5日は『神保町「書肆アクセス」半畳日記』の出版パーティが岩波アネックスホールでありました。これはまあ自分のところの本なので、複雑な心境なのですが大盛会、雰囲気のいいパーティでほっとしました。
(あ)

出版パーティの3冊の本

落ち着きのない日々

 ここ数週間、忙しいというのではないのですが「落ち着かない日々」を過ごしています。上記の出版パーティ出張もその一つですが、6月から秋田経法大の非常勤講師の授業が始まったこと、テニスの個人レッスンをエアロビクスの合間に受けたこと、サンパウロから友人の姪っ子が研修生として来秋したこと、予備校生の息子が帰省したこと、7月に入ってからは三日連続でネクタイを締めて講演(けっこう準備で大変なのです)するという得がたい経験もしました。自分とは直接関係ないのですが親戚の建設会社が倒産し、好きだった湯沢の蕎麦屋さんが店を閉め、両方とも精神的にかなりのダメージを受けました。「忙しくない」というのは新刊がこの1ヶ月で1冊しか出ていないからです。これも珍しいことですが、それ以外のことであまりにもいろんなことが身の回りに起き、仕事にまで頭が回らなかったというのが実情です。ゆっくりそれらの心の整理をしたいのですが、自分の部屋が息子に占拠されて、すっかり調子が狂ってしまいました。早くいつも通りの生活に戻りたい!
(あ)

レポート提出のときは満杯

WCの日本戦ではこのとおり

舎主がNHK・FM「日曜喫茶室」に出演します

 舎主の安倍がこの7月28日(日)、お昼からオンエアのNHK・FM「日曜喫茶室」に出演します。はかま満緒さんがパーソナリティを務める人気長寿番組ですので、ご存知の方も多いと思います。安倍個人もこの番組のファンで毎週聴いていたそうで、出演のオファ―があったとき、椅子から転がりそうなほど驚いたそうです。番組のもう一人のゲストは、あの歌番組の司会者として一世を風靡した玉置宏さんだそうです。玉置さんは現在横浜で大衆芸能館「にぎわい座」の館長を勤め、横浜の地域おこしに一役買っています。番組のテーマは「地域から文化を発信する」。日曜日お昼の放送ですのでお暇な方はどうぞ。
(富)

読書は船が一番

 先週読んだ森まゆみの『谷根千の冒険』は、いろいろ教えられることが多い本でした。この本は1991年に晶文社から『小さな雑誌で町作り』として出版されたものが、ちくま文庫として今年の5月に出たものです。森さんは大好きな作家で今まで出た本はたいがい読んでいますが、原点ともいえるこの本を読んでいませんでした。54頁500円、発行部数8000部という典型的な地域雑誌をどのように立ち上げ、18年間も地域の人たちとかかわりをもちながら継続してきたか。あえて全国のタウン誌によくある賛助会員店方式を取らず、販売と広告だけで維持する悲喜こもごもの裏話をオープンに書いたものです。一冊の雑誌をつくり販売する出版の原点がここにあります。これは無明舎も同じ事です。しかも多忙ななか、建物保存や地域研究などにも奔走する大変なエネルギーに刺激を受けました。
 こんなことを思いながらこの本を読んだのは飛島に行く連絡船の中でした。制作中のオールカラー版『北前船』と『飛島ゆらゆら一人旅』の最終取材と撮影のために、河北新報の古関君と行って来たものです。まだ夏休前なので船内はガラ空きで、5人分の席に横になりカメラバッグを枕にしての読書は最高でした。2週間前に函館取材のフェリーでの充実した読書三昧と合わせて考えるに、乗り物移動中の読書は飛行機よりも列車よりも船が一番ということになりそうです。
(鐙)

飛島港に入るニューとびしま丸

No.95

文芸春秋 短編小説館(文芸春秋)
 純文学の作家の本を地方の本屋さんでお目にかかることはほとんどなくなった。このごろは駅裏にある香文堂という古本屋さんで昔の本は買っている。ここは装丁のきれいな箱入りの文学本が比較的揃っている。お目当ての作家がいるわけではないが装丁の良いものを見繕って買ってくる。表題作もその1冊なのだが、当代一流の作家たちの短編であるということもさることながら、2色刷の本文印刷のきれいさにみせられてしまった。かなり難 解な作品も入っているが印字が美しいので、すんなりと目に飛び込んでくる。こうしたアンソロジーは退屈でツンドクが相場だが、普段あまり文学など読まない人には格好の入門書である。印象に残った作品は、知的障害のあるイーヨの「性」を扱った大江健三郎の「静かな生活」、永井龍男との交流を描いた瀬戸内寂聴の「木枯」、丸谷才一の「墨いろの月」、村上春樹の「トニー滝谷」……といった作品。安岡章太郎や河野多恵子、田久保英夫、日野啓三といった人たちの作品もこの本で初めて読んだ。2300円の定価の本が1200円。お買い得な1冊である。

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