まるで半狂乱の嵐が、すさまじいばかりの怒鳴り声をまき散らしながら暗い真夜中の小屋をゆさぶっていく。突然の別れは、後悔や恨みのいりまじった孤独の深い谷間へ、まるで風に舞う木の葉のように私を吹きとばしていた。たわいのない冗談だったはずなのに、それが取返しのつかない結果になってしまうとは思ってもみないことであった。だがお互いに我慢しあってつくりあげてきたものだけに、いつか無理がたたって壊れてしまうのではないか、そしてそれはいずれやって来るに違いないという恐れが、いつも心の奥底にあったような気がする。それは、あたかも道とヤブとの区別がつかないような場所で、いつ踏み付けられるかわからない恐れに怯えながらひっそりと咲いているエゾイチゲの生き方に似ていた。(本文より一部抜粋) |