Vol.928 18年9月29日 週刊あんばい一本勝負 No.920


事務所で悶々とする日々です

9月22日 読書の秋が近づいてきた。取材依頼や本への問い合わせが少し増えてきた。アンケートに答えたり、書影を送ったり、TV局の取材や問い合わせもある。昔と圧倒的に違うのはネットの書評依頼が増えたことだろうか。こちらから検索しない限り、自分のところの本が書評されているのが分からないのだが、書評専門サイトもあるようで、これは事後承諾のような形で連絡が来る。逆に従来の新聞や雑誌の書評欄は影が薄い印象だ。

9月23日 朝から快晴。早朝はまだちょっと不安定な雲行きだった。駒ケ岳山行なので早起きしたのだが、昨夜遅く突然、右足が「重かゆい」感じに。まだ痛風が残っているような「しこり」感だ。早朝迎えに来たSシェフにお詫びしてキャンセル。寝床に入って2度寝。あら不思議、目覚めると「しこり」はすっかり消えていた。なんだか精神的な緊張感が産み出したストレスのようで後味が悪い。というわけですっぽり1日空いてしまった。青空が恨めしい。暇つぶしのいろんな選択肢がないというのはつらい。

9月24日 ひとりで夕食を食べることが多くなった。そんな日は朝からメニューをずっと考えていたりする。冷蔵庫にある材料と、自分の食べたいものと、買い出さなければならない食材を、頭の中でシャッフルして決める。これはこれで楽しい作業だが、悲しいかな三日も続くと引き出しは空っぽ。何も思い浮かばなくなる。昼に散歩するときの楽しみに大学生協食堂で昼食というのがある。食べるものは決まっていて「うどん」と「ミニカレー」セット。これで450円くらい。近所に定食屋さんがあれば言うことないのだが。

9月25日 火曜夜はBS11で森繁の「社長シリーズ」が放映されている。今日がそのシリーズの放映最終日で、もうガックリだ。映画の9割はレンタルビデオですでに観ているのだが、このシリーズだけは何度見ても面白い。1956年から70年までの15年間に作られた作品群(全33本)なので、当時、田舎のはなたれ小僧だった自分には想像もできない別世界(東京のおしゃれな遊び場や金持ちたちの生態が描かれている)で、地理的ハンディをさっぴいても、とても同じ日本に生きているとは思えないその「差異」にただただため息をついてしまう。シリーズで最も好きな俳優は社長夫人の久慈あさみ。脚本は全作が笠原良三だ。

9月26日 週末には山行が定番になりたい。秋の山って空気も景色も気持いいから一回でも多くあの爽快感を味わいたい。今年は山行のたびに身体にアクシデントに見舞われて思うようにならない。筋トレもストレッチも長続きしない。体力をつけるには心の平穏も必要だ。いつも何かしら心が乱れている状態が常態だから体のケアーの前に心のケアーが必要になってしまう。

9月27日 ラグビー選手を見るとネアンデルタール人を想像してしまう。偏見である。申し訳ない。逆にわれらの祖先であるホモ・サピエンスは、瘠せて小柄な競馬のジョッキーのイメージだ。ラクビー選手と競馬ジョッキーぐらいの体格差が両者にはあったことが科学的にわかっている。ラガーマンはその強靭さと破壊力ゆえ集団化を怠り、コミュニケーション能力に乏しく、それがわざわいして生き延びることはできなかった。ところがジョッキーは、その虚弱体質から集団化を選び、言葉や道具の世界に磨きをかけ、結果、生き延びて私たちの祖先になった。少年のころ学校で私たちの祖先はネアンデルタール人だと習った。それはまったくの間違いで彼らはとっくに滅びていた。それでも人類のDNAの2パーセントほどにネアンデルタール人の血が残っている。混血があったえいだ。最近の人類史の科学的成果は目覚ましいものがある。

9月28日 「働き方改革」と言われてもよく意味がわからない世代だ。30年前、無明舎は夜の11時ころまで当たり前のように仕事をしていた。よく連絡を取り合っていた長野市のG社(もう倒産したが)は夜中1時前に仕事が終わるのは年に数回しかないことを、よく自慢していた。その話を聞いて「すごい会社だなあ」と心底尊敬の念を抱いていたのも事実だ。いま無明舎は5時になると仕事終了だ。夕食のために家に帰り、6時半ころ一人「こっそり」再出社。デスクワークの続きをしたり、だらだらDVDを見て過ごす。仕事場にいると仕事をしたような気がしているだけの典型的なクソ経営者だ。
(あ)

No.920

甲子園という病
(新潮新書)
氏原英明

 甲子園の金足農の熱狂がようやく終わった。負けて言うのもなんだが、正直少しホッとしている。前日、ある大手新聞社文化部から「負けても勝っても原稿を書いてほしい」と連絡があった。戊辰戦争と東北と高校野球を絡めて書いてほしい、というニュアンスだったが適任ではないのでお断りした。県内のテレビ局からも軒並み電話をいただいたが、これは小生が第1回大会準優勝の秋田中学・キャップテン渡部さんの生前インタビューテープを所持しているからだ。そのテープの声を今回の金足農高決勝進出の歓喜の声と合わせて流したいという意向のようだが、これもお断りした。金足の快進撃で「農業」が見直されるならうれしいが、非科学的な猛練習や過激な精神論がもてはやされるようになるのは怖い。本書はまさにその金足農快進撃の最中に発売され読んだもの。驚いたのは大阪桐蔭の根尾選手に関しての記述があったこと。彼は両親が医者で学校の成績はオール5、独特の野球観や理論を持っている少年だそうだ。大阪桐蔭なんてプロの予備軍、とバカにしたい向きには肩透かしを食う。もちろん本書のスタンスは「甲子園を取り巻く環境はChild abuse(チャイルド・アビューズ)」という外国メディアと同じ目線で書かれたもの。吉田投手はヒーローであるより先に「児童虐待ではないのか」という立場もあることは知っておいて損はない。

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