Vol.432 08年12月27日 週刊あんばい一本勝負 No.428


酒の飲み方

今年のお正月休みは27日から来年4日まで。小舎としては異例の長い休みですが、事務所には誰かがかならずいます。ですから27日に入った注文本が年を越して6日とか7日に届く、というようなことはありません。お正月中の注文も大丈夫、というわけですので、どうぞご利用ください。

さて、このコーナーも今年最後の更新。今週は「酒の飲み方」について書きますが、実は小舎、忘年会はありません。昔は盛大にやっていたのですが、いまは舎員のうち酒を飲むのは小生一人だけ、これでは忘年会が成り立ちません。その小生にしたところで舎以外の忘年会はせいぜい1,2回。とにかくめっきり酒を飲む機会は減りつづけています。

個人的には月に1,2度、外に飲みに出るのですが、そのほとんどが一人です。大勢で飲む酒も好きですが(といっても5人が限度)、酔って調子がよくなると説教臭いオヤジに変貌する悪いクセがあります。特に若い人をみるとその傾向に拍車がかかり、後日かなりの自己嫌悪にさいなまれます。説教というより自説を披瀝、相手の無知を攻撃し、ようするに自己顕示欲の塊になって、とうとうとまくし立てる、といういやみなタイプです。つらつら反省するに、これは日頃、ほとんど人と会話をすることなく机の前に垂れ込めているため、その反動……としか考えられません。困ったものです。こうした欠陥を抱えているために自然と酒は一人で飲むようになった、のかな。

何冊も本を出してもらっているWさんという著者がいます。Wさんは大の酒好きで、どんな店に連れて行っても酒の肴は漬物か少量の珍味類のみ、ひたすら燗した安酒を飲み続ける人です。美味しいものを食べるために酒を飲んでいる私とは正反対なのですが、このごろ自分の酒の飲み方がWさんにドンドン近づいていることに思い当たりました。ぬるめの燗で、肴は漬物か珍味類、魚の一品もあれば十分、という飲み方です。Wさんの飲み方に卑しさはなく、逆に優雅なほど自然体で、とてもそこまではまねできないのですが、なるほど酒も肴もほどほどがいいんですね。酒飲みは自宅でひっそり手酌、という世界です。 

それではよいお年を。
(あ)

No.428

アイスクリン強し
(講談社)
畠中恵

 最近よく時代小説を読む。阿部牧郎さんの時代小説もそうだったが、これは「KENZAN!」という講談社発行の時代物専門小説雑誌に連載されたものが続々と単行本化されているためのようだ。そうした事情とこちらの嗜好がうまくリンクしたのだ。著者は「しゃばけシリーズ」などでベストセラー街道を走る人、名前の読みは「はたけなか めぐみ」というのだそうだ。時代小説というのは、いうまでもなく時代考証が命である。その正確な歴史認識のインフラの上に、自由な創作の花を咲かせる。が、多くの小説はその面倒な時代考証を巧妙に迂回、どこが「時代小説」なのかよくわからない凡庸な物語も少なくない。物語の展開ももちろん大事だが、江戸時代や明治の普通の人たちの生活はどのようなものだったか、そのあたりのベーシックなハードルをまずはきっちりと乗り越えて欲しい。本書の舞台は明治時代、珍しい西洋菓子の若主人と元幕臣(旗本)の警官たちが繰り広げるドタバタ劇。ビスケットやチョコ、シュウクリームやスイートポテトが連作短編のキーワードになっているのだが、正直なところよく意味がわからなかった。

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