Vol.299 06年6月3日 週刊あんばい一本勝負 No.295


DM発送を終え、小休止です。

 DM送付の騒動も先週でほぼ打ち切り。忙しさのピークは抜けた。毎日2名のアルバイトが朝から発送作業をして夕方終わるパターンが約1週間続き、1回のDMで約500通の返信注文。冊数にすれば1500冊ほどだが、直接DMを見て書店注文する方も多いので2000冊ぐらいは確実に本が動いている計算だ。いまや小舎にとってはDMを出す「愛読者」の方々が、もっとも大切なお客様。新刊が出るたびにほとんど全部を買ってくださる奇特な方までいらっしゃるのだから頭が下がる。
 今週からはいつものロートルだけがボソボソと机の周りを徘徊する日常業務に戻るわけだが、これはこれで、なじんだ洋服のようなものでリラックスした雰囲気の中にも静かな闘志と穏やかな緊張感が、それなりに心地よい。35年近く、こんな喜怒哀楽の仕事を繰り返し続けているんだもんなあ。ちく自分自身飽きないもんだと感心する。この次のDM出しは8月末か9月初旬。それまでには7冊ほどの新刊ができ目玉商品も2点ほどある。まあまあの新刊ペースだが、やはり話題作(売りたい本)があるのとないのとでは売れ行きはまったく違う。DMではないが今週は、あの『家の光』最新号に歩青至著『少年』が著者インタビューで記事6ページにわたって紹介されている。何十万部と出ている雑誌に一人の著者が「特集」で登場するというのもすごいが、果たしてどの程度の反響(注文)があるのか。なにせ売れない代名詞のような田舎出版社の書籍で、それも小説というのだから、電話がなり続けるなんてことはありえない。が、せめて100冊ぐらいは、と祈るような気持ちで、実は電話の前に座っている。
(あ)

No.295

団塊ひとりぼっち(文春新書)
山口文憲

 それにしても「団塊もの」出版が盛んだ、とブツブツいいながら、けっこう気にして何冊も読んでいる。そんなジブンに少々不快感も覚えているのだが、同世代の人間が書くぶんには寛容。山口文憲なら許せる。これもたぶん「団塊世代の共通な気分」といわれそうな気もするが、まじめぶったげんなりする団塊論ではなく、ほとんど山口節全開の団塊漫談、自伝要素の強い記述に好感が持てる。2007年問題といっても、しょせんこちらはもともと田舎暮らしフリーランス、定年も田舎暮らしも、ない。だからひとくくりにされて論じられるよりも、同じような立場の山口に、徹底的にボヤかれ、おちゃらけにされ、シングルライフの希望を語ってもらうほうが、リアリティーや親近感がある。『空腹の王子』はおもしろかった。たった1冊の本ですっかり山口のファンになったのだが、寡作なので文章は雑誌などで読むしかなかった。ベ平連出身者というと色眼鏡で見られるのが常だが、吉岡忍もそうだが実際は骨太で、持続性があり、まじめで、硬派な人たちが多い。その山口が「団塊論」を隠れ蓑にぼやき連発で自画像を描き出した本、という観点で本書を読むとおもしろい。

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