Vol.223 04年12月11日 週刊あんばい一本勝負 No.219


そろそろ忘年会の季節、ですかね

 毎年、忘年会は2つか3つしかない。少ないのがけっこう自慢である。ひとつは無明舎の忘年会で、これは毎年正月休みの前日に「和食みなみ」でこじんまりとやる。今年も変わりはない。去年からは、ある新聞社の支局長やデスクとの合同「忘年会」をやるのも定番になりつつある。それと毎年欠かさず小生だけだが出席している忘年会が東京の取次店「地方・小出版流通センター」。これはもう10年以上(出席)続いているのではないだろうか。初期のころは神楽坂の「モー吉」が主会場だったが、最近はどうしたことか毎年のように会場が変わる。去年は牛込の小さな中華料理屋さんだったし、その前は久々にモー吉、その前は神保町の高級中華料理「新世界」というのもあったなあ。今年は神保町で系列店「アクセス」の目の前の中華料理「三光園」。けっこう中華料理屋さんが多いのが特徴といえば言えるかも。これは中国好きの幹事のKさんのせいかも。センターの忘年会が好きな理由は、アルバイト学生が多く正社員が少ないことも関係あるのかもしれない。
 宴会はただひたすら食べ、会話なく、腹いっぱいになると、みんな勝手に帰ってしまう。歌を歌ったりしないし、絡んだりもなし、酔っ払いもいないし、2次会もない。珍しい忘年会のようだが無明舎の忘年会も似たようなものである。今年のセンターの忘年会(10日)は珍しくK社長とゲストの小学館O氏の3人で銀座までふらふら流れてしまった(帰りは神楽坂まで歩いたが)。直前まで2次会を拒否(ダイエットのため)していたのだが、最後は誘惑にまけてしまった自分が情けない。
(あ)

これが今年の地方・小の忘年会風景

万年筆って、いいですよ

 ふとしたきっかけで中太(中字)の万年筆を使ったら、そのあまりの使いよさに毎日のように手紙を書いたり、手放せなくなったバカな私です。ほとんど筆圧なしにペンが勝手に動いて字を書いているような書き心地というのは病みつきになる。パソコンをやめて手書きで長い文章を書きたくなるほどですから、魔法のようなものです。高価なブランドだというだけの見栄で買ったM社の細字万年筆を使っていたのですが、これがまったく手になじまず、引っかかる感じや、インクが固まって文字がかすれたり、腹が立ってほとんど使かっていませんでした。それが万年筆の魅力に目覚め、神保町にある創業1920年という万年筆専門店の「金ペン堂」を訪ねてきました。M社の細字をペン先加工して中字用にできないか相談に行ったのですが、結論を先に言うと「できる」のだそうです。ただし万年筆修理の仕事が忙しく、自分のところで買ったものしか修理はしない方針とのこと。修理代も高く、そのうえ1,2年待ちはざらな、というからあきらめたほうがよさそうです。ご主人いわく、M社の万年筆を使う際はできるだけ「ブルーブラック」のインクを使わないこと(このインクのみ凝固しやすい)。万年筆は本来ペン先を微妙に日本人や日本文字用に微調整してから使わないと高価な割りにあまり意味はない……といった舞台裏の話をいっぱい教わりました。さっそく家に帰って机のいたるところに眠ったままの未使用万年筆を出して徹底的に水洗い、ロイヤルブルーのインクに入れ替えたら、あら不思議、本当に滑らかな書き心地になりました。
(あ)
神保町金ペン堂と、水洗いしてよみがえった万年筆たち

蟹で一杯

 先週のことですが、私のパソコンに「おめでとうございます。ズワイガニセットに当選しました。配達希望日をお知らせください」という内容のメールが届きました。初め何のことか分からず困惑しましたが、よくメールを読んで理解できました。2ヶ月ほど前、知り合いに関係するHPのサイトでアンケートやっていて、その返答者に抽選で当たる賞品でした。代行して送ってくれるのは新潟県能生町にある「道の駅・マリンドーム能生」にある魚屋さんで、2年半前、北前船の取材で訪れた所です。付属する博物館「海洋」には35艘もの和船模型が展示されていて、ろくな予備知識もなく訪れた我々を喜ばしてくれたのを思い出しました。

ズワイガニやベニズワイガ
ニは寒くなるこれからが本番
 今回送ってくれたズワイガニは冬の日本海で獲れるカニで、北陸では「エチゼンガニ」山陰では「マツバガニ」と地方名を付け、特産品として販売したり、水揚げされる港に「カニツァー」の観光客を呼んだりする人気者です。太平洋などでも獲れる同じクモガニ科のベニズワイガニに比べ、味が良くその分値段も高いカニです。秋田沖でも獲れますが、かなりの量が金沢に送られ「エチゼンガニ」に化けて高く売られているようです。同じように秋田沖で獲られ下関に送られる「トラフグ」や、富山湾の氷見に送られて「氷見ブリ」になる男鹿のブリと同じですね。これは産地詐称にならないのか前から不思議に思っていますが、知り合いの漁師に言わせると「海は繋がっているからいいんだ」とのこと。ちょっと変な理屈だと思いますが、今日のところは難しいことを言わないでカニを楽しむことにしましょう。休日出勤していたほかの社員にも分け、それぞれの家で楽しむことにしました。今夜はカニで一杯やります。
(鐙)

No.219

熱情(講談社)
辻和子

 「田中角栄をとりこにした芸者」というサブタイトルのついたベストセラー本である。田中角栄にも愛人生活にもほとんど興味はないのだが、ある書評で「神楽坂の歴史ガイドブックとしても読める」という一文で、がぜん興味が湧き読む気になった。本扉の裏には「神楽坂周辺地図」が載っていて、読み進めるうちになぜわざわざ神楽坂だけの地図を掲載しているのかが納得できる。ほとんど神楽坂で起きた町内会の出来事を長期にわたって記した男と女の物語だからである。神楽坂に小さな事務所があり、毎月幾日かはそこで過ごす身としては、いつも神楽坂に関して書かれたガイドブックに違和を感じていた。がこの本を読むと神楽坂という街の根底にあるもの、成り立ちや匂いまでが鮮やかに浮き上がってくる。芸者さんから見た街の戦後史といってもいいほどだ。田中邸といえば目白が有名だが、ここに越すまで自邸も愛人(著者)の家もその勤め先(置屋)も角栄の会社(田中土建)も、すべて神楽坂に集中していたのである。神楽坂以外で起きた出来事はまったくといっていいほど記されていない。だからガイドブックというのは誇張でもなんでもないのだ。この本扉裏の地図をコピーして「田中角栄とその愛人ゆかりの地」を散歩したくなる、けっこう下世話で有益な本でもある。

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