Vol.1192 2023年11月4日 週刊あんばい一本勝負 No.1184

山行前夜は眠れない1

10月28日 腰の痛みも転倒によるヒザのけがもほぼ完治だが、山行はクマさんのおかげで中止が続いている。今年は荘厳で美しい紅葉を見ることなく終わりそうだ。外に出られないと身体的な欲求不満はもちろん精神的ストレスが強くなる。そうならないために、精神的に追い詰められたときは、意識的に肉体的発散を織り込んでいる。クマが冬眠に入り、山行が可能になっても、その時に自分の体調が思わしくなければ、山には行けない。このへんが難しいところだ。

10月29日 日曜の朝はFMでずっとクラッシックが流れている。電話もメールもない。仕事も面談予定もない。ボーっとして机に座っているだけで幸せな気分になる。そういえば、もう何十年も週末に頼まれもしないのに定時に仕事場にくるのを「いやだなあ」と思ったことがない。なにをしてもいいという暗黙のルールがあるからだ。何もしなくていいという自由が大事なのだ。さて、今日は仕事場で何をしようか。

10月30日 しばらく東京に行っていない。5年ほどになるのかもしれない。まったくと言っていいほど東京に魅力を感じなくなった。「近くにある外国」といった感じだ。タワーマンションが平均一億円だとか、ハローウインのバカ騒ぎとか、キャビアの入っているお茶漬けだとか、聞いただけで赤面してしまう。確かに地方に比べれば平均賃金は高いのだろうが、可処分所得から基礎支出を差し引けば、たぶん日本で一番貧しい暮らしを余儀なくされている人たちでもある。昔のように、よしッ東京に行って気分転換だ、と思えるような魅力的な場所になってほしいものだ。

10月31日 「読書の秋」ではないが、この時期は何かと予定が入っている。1年で一番忙画しい時期であるのは確かだ。今年はそれにパタパタと「山行」が入っている。11月初旬の10日間だけで3回の山行き計画が入っているのはちょっと多すぎるかも。それも初めてのコースから登る女神山や10年以上前に一回登ったきりの男甑など、新鮮でいまからドキドキするような山が目白押しだ。そういえば家の玄関の改修工事が今日から始まる。なんだか騒がしくなりそうだなあ。

11月1日 老朽化が激しい家の玄関と塀の改修工事が始まった。築45年の建物である。天候の具合もあるのだろうが工期は2週間ぐらいかかるらしい。

11月2日 日本シリーズが面白い。普段は巨人の試合しか見ていないから、そのレヴェルのあまりに違いにあんぐりしながら目が離せなかった。昨夜観た夢もちょっと不可解で面白かった。大学で授業を学生に混じって聴講した後、買ったばかりの自分のバックスキンの靴が盗まれたことに気が付く。必死に探して最後は犯人を追いこんで、捕まえる……というストーリーだ。大学は男子学生ばかりの大教室で、実に居心地の悪い場所だった。目が覚めた後もあまりに「意味不明」な夢なので、くっきりストーリーが脳裏に刻印されてしまった。

11月3日 今日は25度をこす夏日になるという。普通ならガックリだが今日は久しぶりの山行だ。横手の黒森山から御嶽山を歩いてくる。なんだか修学旅行前の中学生のような気分で、夜よく眠られなかった。小さな山なので、まさか水不足で苦しむなんて言うこともないだろうが、念のため水はたっぷり持っていくことにする。身体にも不調はない。心配は寝不足なことぐらい。朝の早起きだけは70を過ぎた今も大の苦手だ。夜ふかしジジイとして一生を終えるしかないのだろう。
(あ)

No.1184

日の名残り
(早川書房)
カズオ・イシグロ
 年に数回だけだが寝床で読みだした本が「とまらないほど面白く」て、睡眠時間が消えてしまうことがある。本書もそうした本のひとつだった。ノーベル賞作家で、その最初の話題作なのだが、読んでいない。イギリス貴族に仕える執事についての小説、というだけで何となく敷居が高い、というかほとんど興味が失せてしまった。お国柄や時代、そのテーマにも食指が動かなかったのだ。これは食わず嫌いだった。読んでみると、私の好きなロードムービーと同じえはないか。小説だから「ロード・ノベル」(私の造語?)か。主人公の執事は雇主から5泊6日の休みをもらい、短い旅にでる。その日その日の旅先で、さまざまな思い出を回想しながら、自己省察を深めていく。回想の旅なのだが、その思い出のひとつひとつが深い物語になって絡み合っていく。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、亡父の思い出、女中頭への淡い恋心、二つの世界大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々……。それにしても、貴族の屋敷はなぜあんなにも大きく、使用人が多いのか。巨大でムダな別荘というイメージを勝手に抱いていたのだが違っていた。この館で日々、政治家や実力者たちが「私的な外交拠点」として利用していたことに驚いた。政治の世界で決定される前の、事前確認の調整場のような役割を果たしているのだ。

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