Vol.1061 21年5月1日 週刊あんばい一本勝負 No.1053

山城でドーベルマンに襲われる

4月26日 仕事はヒマだが落ち着かない日々。やらなければならないことや調査取材、読まなければならない本や、GW中のスケジュール調整、本来の仕事とは何の関係もないことばかりで心がざわついている。自舎本集めは一段落。いまは県内の「山城」に関する資料を集め、現地調査の準備も。50周年用の自舎年表づくりも途中で止まったまま。コロナ禍で本は売れないし、出版依頼もパタリと止まったまま。みんな半端なままで、虚しく時間だけが通り過ぎていく。

4月27日 GW中の天気は良くないようだ。期間中に県内の山城を見て歩く予定だったが、レインウェアーや傘、長くつや防寒グッズの準備が必要なようだ。ほとんど山行と同じ装備だが、事前に山城の歴史を勉強する、というところが山歩きとは違うところだ。これが山城ウォーキングの要諦だ。県内山城のリストアップはネットで公開されている「城郭放浪記―秋田県のお城一覧」がよくまとまっていて参考になる。その参考文献をみたら、うちの「奥羽永慶軍記」と「安東氏――下野国400年ものがたり」が載っていた。灯台下暗しというやつか。

4月28日 パソコンの機嫌が悪い。三日に一度は動作が極端にのろくなる。どこか体調が悪いのだろう。日常もイライラ続き。読みたい本や観たい映画がいっぱいなのに余裕がない。閑話休題。二刀流の大谷君、試合終了後のグラウンドに姿なく、そのことを訊かれると「トレーニングしていた」というではないか。昔ヤンキースの田中も同じようなことを言っていた。大リーガーは試合後も1時間ほどけっこうハードなトレーニングをする、というのは本当だったんだ。日本のプロ野球も同じなんだろうか。

4月29日 今年のGWは有効に過ごしたと切に思っている。コロナ禍だからこそ、こんな気持ちになるのだろう。GW初日の今日は、朝から一人で河辺町戸島にある中世の山城・豊島城(館)を歩いてきた。岩見川沿いにある県指定史跡だが、アプローチがけっこう複雑だ。城館のある登山口まで車で行けない。方向オンチなので迷いながらやっとのことで目的地にたどり着いた。人気のまるでない急峻な杉林の急坂を登り始めた。山頂(本丸)真下で突然、小学生ほどもあるドーベルマン風の黒茶色の犬に襲われた。本当に怖かった。すぐ近くに山菜採りの老夫婦がいた。クマ除けにリードなしで、老夫婦が連れてきた犬だった。非常識も極まりない。リードがないので飼い主も必死で「これダメッだ、こっち来い」と叫んでいるがリードなしの犬はお構いなしに私めがけて襲いかからんばかり。頭にきて、この老夫婦に強く抗議をしたのだが、何も感じていないようでポカンとしている。怒りは収まらない。本丸を見てすぐに下山したかったが、ずっと犬を放し飼いにしたまま老夫婦は山菜採りに夢中だ。また襲われる可能性が大きいのでクマスプレーを手に持ち、笛を吹きながら、恐る恐る降りてきたわけ。山城ウォーキング初日は散々な目にあった。

4月30日 山に行っても山菜は採らない。自分では見つけられないからだ。山菜ばかりに気が行くと山歩きが楽しめない。我ながら不器用極まりない。他の仲間が採ったものを下山後に「マタギ勘定」と称していただく。先日、姫神山のコシアブラは実に美味しかった。軽く洗い、片栗粉をまぶしてフライパンでソテーするだけだ。ソテーするだけでどんな酒にも合うアテに変身する。ほろ苦い滋味は毎日食べても飽きない。さらに昨日、A長老が自家製わさび漬けを届けてくれた。これも絶品で、酒のアテだけでなく朝ごはんにもぴったし。ご飯を食べすぎてしまうほどおいしかった。ぜひまたお願いしたいものだ。 
(あ)

No.1053

ガリンペイロ
(新潮社)
国分拓

 アマゾン最深部の闇の金鉱山で黄金を掘る男たちの物語だ。非合法の金鉱山は、その「掟」にさえ従えば過去を一切問わない職場でもある。キャッチコピーは「ブラジル最底辺の男たち」。著者はNHKディレクターで、あの「大アマゾン――最後の秘境」」シリーズの制作者だ。前作の『ヤノマミ』で大宅賞を取っている作家でもあり、中身は保証済みだ。カバー写真のガリンペイロの迫力に度肝を抜かれる。本文で「縮れ毛」という名前で登場する殺人2件の前科者の男だ。眼光の鋭さ、腹筋がどくろをまいてねじれているのは複数の刺し傷で、左腕は肘から骨が奇妙な形で飛び出し曲がっている。ノンフィクションなのに登場人物や地名、場所が特定できるような固有名詞は一切出てこない。それを明らかにすると「殺す」という鉱山主との約束で取材を許されたからだそうだ。「よくぞここまで」と感嘆するようなエピソードが満載だ。ノンフィクションとはいってもその構成はフィクション並みに精緻で複雑に考え抜かれている。本書では「ラップ小僧」というちょっと頭の弱い若者に主人公の役割を担わせ、物語を読む快楽から読者をそらさせない。人生の最底辺から一発逆転を夢見る男たちのエネルギーに圧倒される。

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