No.93
ナマハゲの棲む雪山から
[男鹿真山(567m・男鹿市――2015年1月11日)]
 これも年初め恒例の登山だ。ナマハゲのいる男鹿真山は、よく分からないがおめでたい山なのだ。
 登山前、真山神社境内で巫女さんに新年の御挨拶。そこからスノーシュ―を履き本格的に登り始める。真山、本山、毛無山の男鹿3山をめぐる「お山かけ」も今年は企画されている。これは雪が消えてから、ゆっくりと。
 観光地なので駐車場には県外ナンバーの車もチラホラ。去年よりも雪は少ない。不思議なことに、この山ではめったに動物の足跡を見ることがない。一説によるとナマハゲがいるので動物が怖がって出てこれない、とも噂されている。今日はカモシカと山鳥らしき足跡があった。やっぱり動物はいるのである。
 我々の前には登山者の踏み跡もあった。雪山では先行者がいるかいないかは、重大な問題だ。先行者の跡をたどる山登りは楽なのだが、どこの山も我々以外に登っている人がいない、というのが現状で雪のラッセルは、ひたすらしんどい。
 2カ所の急登を登り切り頂上へ。登りは予定通り2時間。雪山の2時間はけっこうハードだ。山頂からは日本海が独特のカーブを作る男鹿半島の海岸線を眺望できる。絶景だ。
 ランチは山頂神社の下で、いつものカップめん。バーナーでお湯を沸かしていたら途中でガス欠に。けっきょく予備のおにぎり1個のみの昼食になった。他の人たちはお湯持参で、誰もバーナーを持ってきていない。雪山はバーナーが必需品、というのは私だけの思い込みだった。

山頂で

スノーシュ―の下山は楽しい
 下山は1時間。登りの苦労がうそのようにスルスルと転げ落ちてきた。スノーシュ―の醍醐味は下山にこそある。
 真山神社の駐車場にあるお土産品売り場で自舎本を買った。表紙が日に焼け、もう誰も買わなくなってしまった「在庫品」だ。買い切り商品で精算は終わっている本なので、そのままにしていると永遠にこの棚におさまりつづける可能性がある。だから来るたびに数冊づつ買い、在庫を減らしているのだ。
 本を買い車に戻りかけると、お土産屋の主人らしき人に話しかけられた。穏やかな中高年の方だったが話の内容はけっこう激烈だった。
 「地域おこしの名のもとに、男鹿では凄まじい自然破壊が進行している」というのだ。こちらも知っている人物の名前を多数列挙して、執拗に批判や抗議の言葉が機関銃のように発射された。10分以上をお話を拝聴したが、非力な私にどうにかできる問題ではない。「実情は分かりました」と頭を下げて、仲間のところに戻った。
 温泉は「温浴ランド男鹿」。ここのお風呂は、すごい確率で脱衣場の客が金のネックレスをつけている。と去年も書いたような気がするが、今回もナント、着替え中7人のうち3人がキンキラキンのネックレス着用だった。もはや男鹿と金のネックレスは切っても切り離せない関係があるのは間違いない。
 彼らの会話を注意深く盗み聞きすると、「時化でよぅ」「この荒れだば、どうにもならねな」といった言葉が何回か混じった。そうか、ネックレス男は男鹿の漁師だったのだ。山間部の日帰り温泉で中高年のオヤジがネックレスをしている、というのは見たことがない。でも、なぜ漁師はネックレスをするのだろうか。海の安全祈願のお祈り?

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